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Channel: アンデオール バレエ日和
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香織先生の遺志を継ぐ結束の舞台 KチェンバーカンパニーKバレエスタジオ公演 クラシックバレエとコンテンポラリーダンスの夕べ in 島根 vol.4『クララの夢ークルミ割り人形よりー』『Toi Toi』7月3日(日) <出雲市>

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7月3日(日)出雲市民会館にて、Kチェンバーカンパニー&Kバレエスタジオの公演
クラシックバレエとコンテンポラリーダンスの夕べ in 島根 vol.4を観て参りました。
『クララの夢ークルミ割り人形よりー』、コンテンポラリーダンス『Toi Toi』の2本立ての構成です。
http://www.k-ballet-studio.com/

クララの夢は夜12時を告げる場面から始まる演出でしたが、
スピーディー且つクララとドロッセルマイヤーの見せ場を増やして見応えのある振付でした。
くるみといえばクリスマス。しかし以前にも何度か観ておりますが、
じめじめと湿気の多い日本の夏に嬉しい涼しげな気分となりました。

クララは平井美季さん。2013年の夏の舞台でも同じ役を務められていましたが
そのときよりも感情がぐっと細やかにはっきりと伝わり、物語を頼もしく引っ張っていらっしゃいました。
軽やかな踊りが素敵だったのは勿論のこと、小さな子供たちに向ける表情には一際笑みに溢れ、何度和んだことか。
優しいお人柄が滲み出ていて、慕われている方なのであろうと思います。

ドロッセルマイヤーの山本隆之さんはあたたかみと洗練された美しさを備え、鬘はなしで若々しい印象。
マントを広げながら登場する序盤から謎めく姿に吸い込まれそうになり
出雲の神様以上に手を合わせて深く拝みました
歓迎の踊りが始まる前にはどんな踊りがこれから披露されるのかをクララに示しながらエスコート。
クララと共に心を浮き立たせてくださいました。

金平糖の女王は井後麻友美さん。端正でふわっとした可憐さがあり会場を優しく包み込んでくださいました。
クララも一層胸がときめいたに違いありません。
昨年『ドン・キホーテ』でのドルシネア姫に大変魅了され、
クラシックのお姫様系の役柄をもっと拝見したいと思っていたところでしたので抜擢に心底感激いたしました。

王子は福岡雄大さん。踊り慣れている役柄ではあると思いますが金平糖の女王にもクララにも礼を尽くす品格に加え
ネズミたちの奇襲を受けたところをクララに救われた経緯を表現するときの
ひとりで何役をも演じながらの表現が空気を切り裂くかのように勇ましく客席がどよめきました。
バレエを初めて観に来たであろう近くに座っていた幼いお子さんまでもが「す、すごい」と感嘆していたほどです。

花のワルツで主軸を務めたのは国際コンクール入賞歴のある工藤雅女さんと福田圭吾さん。
このお2人といえば『エスメラルダ』や黒鳥のパ・ド・ドゥといった
テクニックの強さが光る演目の印象の強くありましたが滑らかで優雅な踊りでまとめ上げ、
大輪の花を咲かせていらっしゃいました。

ケイスタ版の魅力の1つは雪の王国に男性が投入されていること。
例えば他のバレエ団でよく目にする女性のみのたおやかな群舞も美しいのですが、
雪の王様、王子、そして4名の男性が加わると音楽の勢いと相俟って迫力が倍増しに。
中でも雪の王子を踊られた福田圭吾さんのバネの効いた跳躍は場を浚い、吹雪を思わせました。
女王の石川真理子さんの毅然とした艶やかさも忘れられません。
また今回は小雪の精や雪の小人といった子供の生徒さんたちが務める役が増えて要所要所で登場。
先述のように男性も加わっての力強さもあれば女性のみの軽やかさもあり
そして小雪、小人の場面へと移る切り替わりの面白さがありました。
雪は雪でも大雪もあれば吹雪も、粉雪もあり実に種類が多数あるもので
1曲の中でめくるめく変化していく様々な雪を堪能。
大雨が降ったかと思えば突然止み、気づけば再び小雨、夕方は晴天と非常に変則的であった
この日の出雲の天候にも重なりました。

また1幕が大幅カットされている点も気にさせません。
幕開けから謎めいて怪しげなドロッセルマイヤー、そして両腕に抱くくるみ割り人形を見つめながら
不穏な夜を過ごすクララが視界に入った瞬間からタイトル通りクララの夢の世界に迷い込み、
唐突な印象が皆無なのです。
一気に観客を引き寄せてしまう山本さん、平井さんの表現力に感動を覚えたのは言うまでもありません。
魔法の国で、次の踊りを紹介する場面で使用されているのは本来1幕のハーレキン人形が踊る曲。
自然に溶け込んでいるだけでなく1幕を思い起こす効用もありました。

それから支部の生徒さんも多数出演していながらも公演らしさを失わず、
見応えのある演出であった点も挙げておきたいと思います。
くるみといえば、子供の役柄が多いためどうしても発表会のイメージが強く持たれがちな演目です。
音楽も携帯電話の宣伝広告でお馴染みであるなど特別バレエ好きでなくても聴き覚えのある曲が揃い、
上演時間も『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』に比べればずっと短い。確かに発表会に最適な演目でしょう。
しかしケイスタ版では先述の雪の王国を始めカンパニーの精鋭部隊が務めて引き締めるべきところは引き締める一方
支部の生徒さんが活躍する場面もしっかりと設け、流れもテンポ良くバランスが絶妙でした。

例えばおもちゃの兵隊とネズミたちの戦いでは兵隊は子供たちで、ネズミたちはカンパニーの方々。
クララを助けようと奮闘する姿が微笑ましく映りつつも踊れるネズミたちの身のこなしの軽やかさには脱帽。
そして極め付けは兵隊がバン!と鉄砲を撃つと大胆に倒れ込むネズミさん。
本部のある大阪ならではの地域性が見て取れて大いに笑ってしまいました。

歓迎の踊りのときにはそれぞれのお国の格好をした子供が登場してクララに寄り添い、
クララそしてドロッセルマイヤーと一緒に鑑賞。
袖へ捌ける際は踊ったダンサーに手を引かれていくため心優しいクララも安心です。
クララの隣には常時ドロッセルマイヤーが付いていますからたいそう心強いはず。
孤独感もディヴェルティスマンにありがちな切り貼り感もなく
物語の流れに沿って全てが繋がっていると感じさせます。
右側にはそれぞれのお国の子供、左側にはドロッセルマイヤー。
数ある演出の中でも最も幸福感に満ち足りたクララでしょう。

コンテンポラリーの『Toi Toi』(ドイツ語で幸運を祈るときのおまじない)は3つのパートからの構成。
小学校低学年くらいの年頃の生徒さんも果敢に挑戦し、大人の生徒さんも何人かご出演。
ハードな振付について行くチャレンジ精神を見習いたいばかりです。
磁力で引っ張られるているかのように見えたかと思えば微塵切りのリズムをダンス化したかの如く
急速なテンポでしなやかに舞う石川さんと福岡さんのデュエットに興奮。
そしてカンパニーのダンサーも総出演でボルテージがみるみると上がる3つ目のパートは
凄まじい振付の連続に身震いすると同時にたくさんのパワーをいただきました。
途中で舞台後方の複数の壁からダンサーが飛び出したり引っ込んだりと変化に富んだ振付も実にユニーク。
全員が中央に集まって両手を天に掲げ、煌めく紙吹雪が舞い降りながら幕が下りる光景には
バレエ界を含め多発する何かと物騒な事件や混迷真っ只中な政局など
将来への心配を募らせる報道が目立つ昨今においても明日への希望が見えた気がいたしました。
厚かましくも、せっかく出雲まで来たのだからと最前列で鑑賞。
特に間近で観るコンテンポラリーは圧巻で、ダンサーの息遣いまでもが響く空間で鑑賞でき胸が躍る幸せな時間でした。

この舞台の成功を一番喜んでいらっしゃるのは、1月に急逝された香織先生であると思います。
客席で、いや、面倒見の良い先生ですから教え子が気になって舞台裏を走りながら
見守っていてくださっていたに違いありません。
プログラムの挨拶によれば出雲公演の中止も検討されていたそうですが
上演の決断は心から嬉しく、香織先生が大切になさっていた結束力そして
山本さんの紫綬褒章受賞の快挙もスタジオに希望を与えたのでしょう。
出雲の観客に溢れんばかりのパワーを届けてくださいました。

5年前の7月に父が急死し(死因は香織先生と同じ、くも膜下出血でした)
その後最初に鑑賞した大きな舞台がケイスタの夏のコンサートだった私も
ケイスタに助けられ元気付けられてきた者のひとりです。
先日の出雲の会場にも、悲しみや辛さを抱えたまま足を運んだ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし舞台を観て、とにかく歩み出てみよう、明るく生きてみようときっと勇気を貰えたことでしょう。
クラシックバレエとコンテンポラリーダンスの両方からたくさんのエネルギーをいただき、
また山本さんの紫綬褒章受賞記念に相応しい充実した内容の公演でした。
次回の舞台は11月27日(日)に大阪の吹田メイシアターで開催される31thコンサート。今から楽しみです。

 

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行きはバスで朝到着し、「らんぷ」の湯でのんびり。
6月に新国立劇場で『アラジン』を4回鑑賞したせいか露天風呂では何度も背後を確認。
しかし残念ながら!?アラジンには覗かれませんでした。
ただ管理人、過去には覗かれた経験あり。
忘れもしない高校2年の修学旅行先の広島で入浴は展望大浴場にて2クラスずつの合同のはずが
女子生徒の大多数が集団での入浴を拒否し、結局ある時間帯は私1人で貸切状態に。
高校生が大夜景を眺めながらたったひとりで大風呂に浸かるというまさかの事態に驚いた女性教諭が
確かめに来たのでした。これがきっかけで行く先々で銭湯、温泉巡りの楽しみが増えたわけでございます。



Photo_3
終演後は駅近くのつばめにて出雲のお酒と地元漁港から直送の鮮魚で乾杯。

Photo_4
帰りはサンライズ出雲で移動。夢にまで見た、西村京太郎の世界です。
しかし時刻表トリックの謎は解けそうにありあせん。

Photo_5
寝台特急とはいえども最安値の共同部屋を利用、2段ベッドで就寝。
最初のうちはこまごまと停車するためなかなか寝付けず。
枕やクッション、簡易マットレスのようなものがあると寝心地は大分違う予感がいたします。個室は夢のまた夢です。






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