一昨日、大阪のリーガロイヤルホテルにて開催された
新国立劇場バレエ団登録プリンシパル山本隆之さんの紫綬褒章受章を祝う会に出席いたしました。
※Kバレエスタジオ・K★CHAMBER COMPANY、そして
山本さんが東大阪で主宰されているガレージアートスペースのフェイスブックに
写真が掲載されています。
祝う会での山本さんは当たり役の1つであるまさに『こうもり』のヨハン。タキシード姿に骨抜きになりそうです。
褒章伝達式での格調高い凛としたお姿にも惚れ惚れ。
関西を中心にバレエ界の錚々たる方々が集まりながらも山本さんご夫妻のお人柄が滲み出た温かく和やかな会でした。
山本さんの優しさに溢れ、ときには会場が大きな笑いに包まれるユーモアに富んだご挨拶は
リンカーン大統領やキング牧師に並ぶであろう名スピーチとしてバレエ史に刻まれるでしょう。
「声に出して読みたい日本語」等に掲載されても何らおかしくない、
聴者の胸を打ち心に深く響くスピーチでした。
主役はご自身であっても会の発起人である師匠の矢上久留美先生たちを引き立て、
出席者には楽しい時間を過ごして欲しいと気遣い、
また1月に急逝された師匠矢上香織先生にも触れてきっとこの会場で大好きなビールを飲みながら喜んでいるであろう察し
そして妻規子さんへの感謝を堂々とお伝えになるお姿にも感動いたしました。
山本さんの舞台を最も多くご覧になっている方として紹介を受け、挨拶されたのは舞踊評論家の桜井多佳子さん。
数ある舞台の中でも印象に残る役柄やインタビューでのご様子など、山本さんのお人柄が益々見えてくるような
笑いが尽きぬ素敵なお話でした。
最後には師匠で発起人のお1人矢上久留美先生が挨拶され、
スポーツ刈りの少年だった山本さんを誘ってジャズダンスから始めてもらったものの
ダンスの基本はバレエであると誘惑して連れ込んだらまんまと罠に嵌ってしまったと
落ち着いた語り口でしたが内容が面白く、会場はまたもや楽しい笑いの坩堝に。
また久留美先生がお召しになっていたのは香織先生が気に入っていらしたという品のある紫色のお着物。
香織先生と一緒に立っていらっしゃるように感じ、久留美先生の思いが心に染みました。
ぶれていてすみません、サプライズで規子さんへの花束贈呈。これまた心がじんわりとあたたかくなりました。
発起人のおひとりで毎年スクール公演に山本さんがゲスト出演されている
徳島の清水洋子バレエスクール主宰の清水先生(写真左からお2人目)は冒頭の挨拶で、
山本さんの謙虚過ぎる性格ゆえに生じてしまったこの祝う会開催までの苦難!?の道のりを
朗らかにお話しくださいました。
順番が前後いたしますが、関西バレエ界のパーティー名物アフリカマンの皆様をも拝見でき興奮。
ウェストサイド物語、剣の舞、そしてプリンスのパープルレインからなるメドレーで場内大喝采でした。
(笑い過ぎて記憶がやや曖昧ではございますが恐らくこの3曲だったはず)
プリンスのパープルレインはあくまで想像ですが、
山本さんが米国のジョフリー・バレエ団時代にプリンスの曲で踊られたご経験があること、
そして紫綬褒章の紫色に因んで選曲されたのかもしれません。
曲の後半ではケイバレエスタジオの後輩たちからのお花の贈呈があり、
そのときは山本さんも少しだけ一緒に踊りに加わって一段と楽しい光景でした。
アフリカマン15年ほど前のダンスマガジンで知って以来一度は見たい、
しかし私にはバレエ界の受賞記念会に出席する機会はないと思っていただけに喜びもひとしおです。
インタビューゲストとして酒井はなさん、ビントレーさん、大原監督、ミストレス板橋さんが登場して
牧阿佐美先生のメッセージも収録され、幼い頃やお若い頃の貴重な写真で山本さんの軌跡を辿る
福田紘也さん制作の映像にも見入りました。
バレエだけでなく映像編集業もお好きなのでしょう。
ちらりと映し出されたパソコンに向かって作業に打ち込む紘也さんは誰がどう見ても新鋭の映像クリエイターです。
特に山本さんの第一印象を生き生きと語りまた一緒に踊れることを心から楽しみにしていると両手を大きく振りながら
愛くるしい表情で挨拶なさる酒井さんの映像には山本さんとの黄金のパートナーシップが次々と思い起こされずにいられず。
ビントレーさんは喜び一杯に君ほど受賞に相応しいダンサーはいないと祝福され「シジュホウショウ」と綺麗に発音。
最初に新国立劇場バレエ団で上演したご自身の振付作品『カルミナ・ブラーナ』神学生3の場面が流れ
公開可能ぎりぎりな必要最小限に抑えた衣裳姿、そして醸す色気と神学生の身を捨て
フォルトナへ突っ走る狂気に悩殺でございました。
(2010年再演時、山本さんが神学生3を務められた2日間は両日1階最前列で鑑賞していた管理人でございます・・・)
大原監督や板橋さんは山本さんの自然で淡々としながらもいつの間にか観る者を引き込んでしまう稀有なダンサーと称賛。
普段クールな印象のある板橋さんが乙女と化して目をきらきらとさせながら饒舌になってしまう一幕もあり
指導陣をも熱狂させてしまう魅力の大きさに、この時代に生まれた幸運に深謝した次第です。
登録移行時に撮影されたと思われる新国立のリハーサル室での集合写真もあり、
ダンサーの誰もが厚い信頼を寄せていると写真からも伝わります。
メッセージカードの似顔絵の担当はバレエ団の画伯・細田千晶さんでしょうか。
特徴を捉えつつ美青年風に描かれていてよく似ていました。
受付を始め裏から会を支えてくださっていたのはケイバレエスタジオの皆様。
山本さんを皆で祝おうと心のこもった歓迎に会場に入る前から気分が華やぎました。
ところで、私はこの年になっても結婚式などのパーティー参加経験は殆どなく、
またバレエ関係の祝賀会などは週間オンステージ新聞やダンスマガジンで毎回読む側専門で生涯無縁と思っておりました。
バレエ界で名を馳せているわけでもなくバレエ関係者でもない、舞台で山本さんと共演したわけでもなく
11年前から公演、発表会など舞台に足を運び続け初級以前のレベルながら
時々初級クラスのレッスンを受講させていただいている
無名の一般会社員である私がまさか出席できるとは夢にも思わず緊張してばかり。
入口でカチコチになりながら山本さんに挨拶すると思わず笑いが止まらぬ言葉をかけてくださり、
瞬時に和らいだのは言うまでもありません。
私のような下々の者の心に寄り添う優しさに頭が下がり、尊敬の念を一層強く抱きました。ダンサーを超え、人間の鑑です。
帰りは余韻に浸りながらバーへ。紫色を帯びたカクテル、ブルームーンで乾杯。