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Channel: アンデオール バレエ日和
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来年生誕250年を迎える楽聖の生きざま 中村恩恵×新国立劇場バレエ団『ベートーヴェン・ソナタ』11月30日(土)12月1日(日)

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11月30日(土)12月1日(日)、中村恩恵×新国立劇場バレエ団『ベートーヴェン・ソナタ』を2日間観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/beethovensonata/



ベートーヴェン:福岡雄大
ジュリエッタ:米沢 唯
アントニエ:小野絢子
パスカル/カール:井澤 駿
ヨハンナ:本島美和
ゲーテ/シラー:渡邊峻郁
ルートヴィヒ:首藤康之
ヨーゼフ・ハイドン:福田圭吾
ガレンベルク伯爵:木下嘉人
テレーゼ:奥田花純
ジョセフィーネ:池田理沙子
ヨハン:中島瑞生
父:貝川鐵夫
母:中田実里
兄弟:井澤諒
妹:木村優里


※3年前の初演から1週間後、人間関係を整理しようと数冊の書籍に目を通したものの再演を迎えた今回既に忘却の彼方。
例えばジョセフィーネとは誰であったかと思い出そうとするも気づけば終演、
頓珍漢発言があるかと存じますが悪しからず。

人物を実在ともう1人の自身として福岡さんと首藤さんが分けて務める演出は
時にくっついたり時に離れて俯瞰的に見つめたりと繰り返し変化する距離感を初演時より面白く鑑賞。
今一つ馴染めないまま終わってしまった首藤さんの語りの絡みも再演においては十二分に効果を発揮し
ベートーヴェンの身体表現をより掘り下げて伝えていた印象です。
福岡さんベートーヴェンの表現も更に深まり、ただ暗く悩み苦しむの一辺倒ではなく
一瞬一瞬を踏み締めて回想するように音楽、当時関わった人々と鋭く呼応し
ありとあらゆる引き出しからベートーヴェンを造形。

主要な役が前回と殆ど同じである中にて嬉しい新生な配役であったのは渡邊さんのゲーテ/シラーで
すっきりした衣装や美術で整えられた何処か陰鬱な作風においても空間を目一杯用い心に斬り込む踊りに陶酔。
どちらの役においても福岡さんと対峙した空間でしたが、
身体を自在に操る渡邊さんの摩訶不思議なオーラの圧の押し寄せに
全身がひっくり返ってもおかしくないほどの衝撃を覚えました。
特にベートーヴェンを触発するゲーテでの、ギラリと光る怪しい視線や
化け物の如く攻め寄る姿と言い突き刺すようなインパクトを与える姿が今の脳裏に刻まれております。
ちなみにこの役は初演時八幡顕光さんが務めていたそうですが、これまた記憶の彼方。(失礼)
お2人とも個性が全く異なるため、ゼロから作った新たな役柄として映った故でしょう。

米沢さんのふわふわ色っぽく危ういジュリエッタはベートーヴェンと戯れるように舞う姿が天使と見違えるだけあって
呆気なく終わってしまう2人の関係に戸惑い、寂しさが募ります。彼女に捧げる『月光』の旋律が痛切に響きました。
小野さんのアントニエの優美さ、零れ伝う涙を想起させる静謐な踊りにも惚れ惚れし
1幕の最後をしっとりと締め括る場面を描画。

そして初演に続き強烈な存在感であった本島さんのヨハンナも忘れられぬ熱演。
黒と赤からなる長めの上着をさらりと着こなした美しい女性ながら
ぶっきらぼうに井澤さんのカールを追い詰めていき、
崖っぷちに立たされ遂には銃口を自らに向けてしまうカールの苦難が一際引き立っていました。
ベートーヴェンの決して温かではなかった家庭を回想する食卓を囲む、顔を白塗りした家族も
貝川さん以外の中田さん、井澤諒さん、木村さんは初役陣。
前回の貝川さん、丸尾孝子さん、堀口純さん、宝満直也さんが
触れると凍傷を患いそうな無機質な冷たさを帯びていた家族に対し
今回はもう少し気持ちを込め感情が駆け巡っていた印象でしたが
態とらしく鳴り響かせる食器やフォーク類の音がかえって不気味さを今回も演出。
開演後すぐに静まり返った客席からの登場は前回はテレーゼら女性でしたが今回はこの4人でした。

2年前の初演時から中村恩恵さん作品の中では1番好きですが決して明るくなく陰鬱な場面も多々あり。
しかしベートーヴェンの数ある、中には滅多に演奏会でも披露されない曲も含んでのベートーヴェンの人生を辿る構成は
選曲の妙と言うほかなく再演で一段と聴き惚れた次第です。黒と白を基調にしたシンプルでシックな衣装も
よく見ると役付きの1人1人少しずつ違ったデザインで凝っていて、じっくり観察。
最後は全人物が再度舞台に揃いつつ流れを振り返り、ベートーヴェンを取り巻く人々や環境に触れながら幕。
波乱な人生の辛苦が凝縮した静か且つ哀切を湛えた旋律は後を引く響きでした。
新国立オリジナル発信作品として、これからも上演を重ねて欲しいと願います。

余談ですが、初演時最大の喜びであったのは私が最も聴き入ってしまうベートーヴェンの曲である
交響曲第7番2楽章への渡邊さんのご出演。黒地に骨が描かれた衣装なる
レントゲン部隊の一員として活躍されていました。プログラムを開いてひっそり万歳し
その他の場面においても暗めの照明や衣装中心な舞台から
どうにか見つけ出そうと目に跡が付くほどに双眼鏡を押し付けて鑑賞。
その1ヶ月前の2017年2月公演ローラン・プティ版『コッペリア』衛兵さんたちに続き
人生2作品目でまだ不慣れであった、集団の中からお目当ての男性ダンサーを探す作業に
四苦八苦しながらも発見できたときの喜びたるや、今も忘れられぬ感覚です。
多くの媒体に掲載された、福岡さんベートーヴェンの斜め後ろで眩しそうにしているお姿の写真は
カレンダーにも採用。年末でもない時期でも歓喜の歌が度々脳内を旋回していたものです。
掲載月翌月以降も2週間は粘って捲らずにおりましたが、事情を知らぬ家族から指摘を受けて泣く泣く一捲り笑。


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初演時、公演1週間後に図書館で借りた書籍とCD。子供向け伝記が大変分かりやすくまとめられコラムも充実し
兄弟や女性関係も詳しく紹介され、ようやくカールやヨハン、ジョセフィーネ、テレーゼが
どういった存在であったのかが分かったのであったが、再演を迎えると既に忘却の彼方…。
年末年始に再度勉強し直そうと検討中です。

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ホワイエにて、嬉しい配役を眺めながら白ワイン。
ベートーヴェンの母親の実家はワイン醸造所だったらしい。


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しかしビールも飲みとうございます。

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締めは赤ワイン。因みにベートーヴェンはワインの飲み過ぎが原因で晩年肝硬変を発症したらしい。
時既に遅いだろうが、私も気をつけねば。
流行語大賞も発表され、そろそろ1年の総括を行う季節。
今年のバレエ鑑賞における我がアルコール摂取量はいかに。振り返りが恐ろしうございます。
またアルコールの注意点は病気だけではない。ベートーヴェン初演時の終演後
一緒に飲んだ方々お2人に問い詰められつい口を滑らし、同年1月に始まったものの
周囲には殆ど内密にしていた明らかなる心境の変化をポロリ。
口の緊張を解き柔らかくするアルコールの作用を侮るなかれ。


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