8月25日(土)26日(日)、JAPON dance project 2018 × 新国立劇場バレエ団「Summer/Night/Dream」を観て参りました。ジャポンダンスプロジェクトの鑑賞は2014年以来4年ぶりです。
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/33_011661.html
スパイスイープラスの記事
https://spice.eplus.jp/articles/204134
ダンサーズサポート 小池ミモザさんへのインタビュー
http://dancerssupport.com/interview/2087/
ジャポンダンスプロジェクトフェイスブック
https://m.facebook.com/japondanceproject/
フェイスブックにはリハーサル写真を豊富に掲載。一部衣装を着けた写真や初期の頃の写真もあり。
どうぞご覧ください。
オベロン:遠藤康行(元フランス国立マルセイユバレエ)
タイターニア:小池ミモザ(モナコ公国モンテカルロ・バレエ)
パック:柳本雅寛(+81主宰)
デミトリアス:服部有吉(元ハンブルグバレエ・カナダ・アルバータバレエ・H/Wバレエ学校芸術監督)
ヘレナ:津川友利江(元バレエ・プレルジョカージュ)
ハーミア:米沢唯(新国立劇場バレエ団)
ライサンダー:渡邊峻郁(新国立劇場バレエ団)
池田理沙子 柴山紗帆 渡辺与布 飯野萌子 川口藍 益田裕子 原田舞子
(新国立劇場バレエ団)
小池さんのタイターニアは現れるだけでも威容な存在感を示し
四肢をほんの少し動かすだけでも大迫力で妖精界を支配する威厳ある女王。
高い身長を生かした踊りは全てにおいてスケール大きくダイナミック、
オベロンは完全に尻に敷かれている状態でした。
遠藤さんのオベロンは心優しくタイターニアに頭が上がらない王。現代にも通じる夫婦像にも思え
これまでに観たアシュトン版やウィールドン版とも二味以上に違う捉え方で面白く鑑賞いたしました。
パックは驚きの配役で柳本さん。世界各国見渡してもかなり上背のあるパックでしょう、
小柄で剽軽なイメージを覆されました。開演前から舞台に登場し、
観客に繰り返し深呼吸させながら引き込む巧みな演出で(2日目は変更)作品の世界へと連れて行ってくださいました。
お茶目で可愛らしいのではなく、恋人達の運命を堂々と司る、ときには皮肉るような重厚な妖精。
登場する度に次は何をするのだろうかと想像力を掻き立てられました。
野生的で鋼の如き強さで魅せたのはヘレナの津川さん。
匂いを嗅ぎながら這うようにしての登場姿だけでも強烈な印象を焼き付けました。
際立って強靭な肉体の持ち主で、一見肉食獣のような恐ろしさ。
しかしデミトリアスを引き寄せてニコッと客席に笑いかけたりと掴みどころのないギャップが楽しく
デミトリアスもこの部分に惚れてしまったのかもしれません。
デミトリアスの服部さんを観るのは記憶が確かであれば11年ぶり。
自由自在に操り動く身体に驚愕し、とても小柄には思えず舞台面積が狭く感じたほどです。
津川さんと服部さんが組むと肉体同士が凄まじい呼応を起こすのか
身体がどう反応しているのか混乱するようなめまぐるしい絡み方からも目を離せませんでした。
映画『クレイマークレイマー』の曲に乗せての登場や
終始ヘレナに喰われた感のある押しの弱い様子もお茶目に映ります。
米沢さんは清楚な淑やかさとパワー両方を持つハーミア。涼しげなワンピース姿で登場し
微風を吹き込みながらもどこまでも伸びていくような気持ち良い踊りっぷりに爽快感を覚えました。
ライサンダーを一途に想う可愛らしい輝きに、眺めているだけで胸がときめいてしまいます。
念願叶ってのコンテンポラリー鑑賞となったライサンダーの渡邊さんは
厚手のズボンやスカートを合わせた重たそうな衣装ながらも重量感を感じさせず
長い手脚を持て余すこともなくしなやかに力強く、古典のとき以上に男性らしい魅力に溢れていて惚れ惚れ。
多くの振付家作品を幅広く踊ってこられたトゥールーズ時代の記事や映像を読む度見る度に
王子以外の役も観たい、コンテンポラリーも観たいと呟き続けて早1年半。ようやく鑑賞でき、感無量です。
スピーディーに飛び込んでくる米沢さんをいかなる体勢でも易々と受け止め
ヘレナ組とは対をなす爽やかなカップルな雰囲気も良く、特に手を繋いで駆け抜けて行く場面を観ていると
『不思議の国のアリス』が一層楽しみになりました。
さて、コンテンポラリーでもやります髪型考察の時間です。今回も即座に丸印。
リハーサル写真とほぼ変わらず自然なまとめ方で、こども『シンデレラ』よりも短くなった印象です。
古典ではないからと言って油断はできず、遡ること1年半前。
我が心臓を射抜きその後の人生を左右する決定打となったベジャール版『火の鳥』リハーサル映像ですが
本番の映像や写真を見ると一昔前の香港映画のスターな髪型で
なかなかの衝撃が走った経緯もあり、今回は心底安堵したのでした。
新国立の女性ダンサーたちも日頃の舞台ではお目にかかれぬ姿で魅了し斬り込むように鋭く迫力のある踊りの連続。
要所要所で登場しては赤く妖しい世界を描き出していました。
音楽はメンデルスゾーンだけではなく、先述の通り映画『クレイマー、クレイマー』や
ヴィヴァルディなど。他にもバロック音楽が挿入されていました。
もう少しメンデルスゾーンを聴きたいとも思ったものの新しい『夏の夜の夢』として受け入れるべきなのでしょう。
振付で目を見張ったのは、パックの仕業によって2カップルの関係が崩れていくところ。
薬でも蜜でもなく仮面を被せ、しっとり静かにパ・ド・ドゥ形式で踊って行く流れでドタバタ展開なし。
程よい緊迫感と仮面を付けられて立ち尽くすユーモアもあって見入ってしまう振付でした。
衣装はセンス良し。タイターニアはシックな透ける素材のスカートでヘレナは濃いめの色、
ハーミアは柔らかな素材でそれぞれの性格を表しているのは明らかです。
デミトリアスとライサンダーはリハーサル写真を見た限りでは下の袴のような形をした部分だけ装着し
上部分のデザインが気にかかっておりましたが同じオレンジ色の長袖のジャケット形状でカッチリとしたライン。
服部さん渡邊さんお2方ともお似合いでした。
実のところ、写真を見た当初は中途半端な袴もどき(失礼)デザインは転けるのではと危惧。
いかんせん本物の袴がバレエ界一似合うであろう男性ダンサーが着用なさるのですから尚更不安視しておりましたが
幕が開き、上着と上手く組み合わせた装いで胸を撫で下ろしたのでした。
ただ色がどうしても消防士或いは映画『アルマゲドン』の1場面を思わせてエアロスミスの曲が脳裏をよぎり、
背中に「東京消防庁」の文字が見えたのは1度や2度ではございません。
賛否両論沸き起こったのは第2幕。踊り満載な1幕とは打って変わり、あたかも別の作品のような展開でした。
とにかく踊る場面が少なく、中盤まで音楽は無しでダンサーの呼吸やブハッ‼の掛け声のみで進行。
動の1幕と対比があって秀逸との声もあれば、踊る箇所が少な過ぎで無音楽状態が続くため息が詰まるとの声もあり
会話に耳を傾ける限り意見は真っ二つな様子でした。
舞踊公演たるもの音楽は常時鳴り響いていて欲しいと願う私からすると初日は後者の意見。
ダンス公演で最たる苦手要素が無音で続く展開で、曲は何であれ何か流して欲しいと思ってしまい
勝手な固定観念と言われたらそれまでではありますが
ダンス公演に殆んど通っていないのも無音展開の受け入れ難さが理由の1つです。
2日目は心の準備もできていたためか、また衣装が女性は地肌に近いレオタード
男性は公共の場への登場ぎりぎり可能な必要最小限な装いで
新国立のバレエ公演では最近目にしない衣装に注目するなど楽しみもより増えましたが
正直もう少し踊る場面は入れて欲しかったと感じております。
それから同じく2幕では初日のみ女性ダンサーたちが『君が代』を歌う場面あり(2日目はシャボン玉)。
こちらも賛否両論あったでしょう。何も新国立劇場のダンス公演で君が代を聞かなくてもと私も首を傾げた1人ですが
ならばスポーツ大会で流れるのはさほど気にせず日本人選手入賞めでたしめでたしと祝福するにも関わらず
(淡々とした曲調のため、例えばオペラの序曲並みに華々しいウルグアイ国歌と違って
めでたさが募る歌でもない気もするが)
新国立で歌われるのを受け入れ難いのはなぜかと聞かれたら返答にも困る、
そんな矛盾を突かれているのかもしれません。
とはいえ、ちょうど国旗国歌法が制定されたとき公立学校での義務教育真っ只中で
式典における掲揚と起立斉唱に対する監視がより厳しくなり、校長が独唱、録音テープを流したなど
あちこちの学校が対応に追われていたのは報道で見聞きしてよく覚えております。
後に進学した都立高校が処分対象となった教職員が都内でも特に多かった経緯もあり再度考えさせられた場面でした。
またプログラムに記載された作品によせての挨拶文に<現代に通ずる多くの不条理や葛藤、
不和から成る均衡などを見出すことができます>と記され
方向性を見失いかけている現代日本を風刺した演出ともいえるのかもしれません。
渡邊さんの裸体を拝めて嬉しかったかと聞かれたらそれは勿論首を縦に振りますが
機材故障を懸念するほどDVDを繰り返し見ているためか、同じ下着1枚でも
トゥールーズ時代に踊られた『美女と野獣』のような欲望や凶暴さ、
狂おしいまでに歪んだ感情が抉り出されている作品における下着1枚姿をいつか拝見できたらと願っております。
2月の『ホフマン物語』においての上半身裸体な妖しきセクシー坊さんも忘れられない役柄でしたが
これ以上語り出しますと深夜番組になりかねず。
当ブログは高校生以下の読者様もいらっしゃいますのでそろそろお開きに。
新国立ダンサーが外部の方々と一緒に作り上げ、しかも新国立劇場で上演する機会は貴重ですし、
今後も継続して欲しい企画です。遠藤さんや小池さんと共に
新国立ダンサーが踊るコンテンポラリーを鑑賞できた喜びと
我が固定観念の取り払いの難しさを考えさせられた4年ぶりのジャポンダンスプロジェクト鑑賞でした。
※ダンサーズウェブマガジン最新号に渡邊さんへのインタビューが掲載されました。
バレエを始めるきっかけから留学やトゥールーズでの苦労、心に残る作品についてなど
とても丁寧に分かりやすく語ってくださっていて真面目なお人柄が伝わってきます。是非ご覧ください。
http://dancerssupport.com/interview/2111/
※サイトのトップページ写真のポーズも素敵です。渋い魅力が引き出され、横顔がまた美しや。
(2018年9月4日現在。後日新しいインタビュー掲載次第更新されます)
http://dancerssupport.com/
※『真夏の夜の夢』がもっと観たいとお思いになった方はこちらもお勧めです。
9月16日(日)なかのZEROホールにて開催の沖田美延バレエスタジオ第11回発表会にて上演され、
新国立劇場からは山本隆之さん、奥村康祐さんも出演されます。どうぞ足をお運びください。
http://mie-ballet.jp/
セーヌ100号にトゥールーズ時代の渡邊さんへのインタビューが掲載されています。
衝撃を受けたコンテンポラリー作品や、ダンサーズウェブマガジンでのインタビューでも触れていらした
トゥールーズの先輩マリア・グティエレスさんと組んだ『ジゼル』の写真もあります。
チャコット渋谷店では売っているかもしれず(2017年3月時点では販売していました)
もし見つけましたらお手に取ってご覧ください。
初日は終演後家族合流し、妹の誕生祝いを本人の希望で中華料理店にて。妹を祝いつつ舞台の余韻にも浸る管理人。
この日は気温35度超え、まずは青島ビールで乾杯。
2日目は毎度のカウンセラー友人と。延々と続くライサンダーさんの話にお付き合いくださいました。
前週に引き続き、深謝。
せっかくですので、サマーの付く名称のカクテルにて乾杯。普段飲まない種類のお酒です。
2杯目はジャポン版夏ノ夜ノ夢で重要な小道具であったマスクの名称のカクテルで乾杯。
ただ甘い2杯では足りず、結局締めにビールで喉を潤した管理人でした。