7月28日(土)、新国立劇場で開催されたバレエアステラス2018を観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/28_012363.html
終演後の様子
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/training/news/detail/27_012743.html
※オープニング チャイコフスキー作曲『エフゲニー・オネーギン』よりポロネーズに乗せての出演者紹介
プログラムには未掲載。昨年はなく、恐らくは今回初と思われる出演者一挙紹介です。
てっきり幕開けは新国立研修所のプログラムと思い込んでいたため
突如パーーンパカパパパーンと管楽器によるファンファーレの鳴り響きに驚愕。
実はこの曲、ルジマトフや現ボリショイ監督のワジーエフ、レジュニナ、マハリナや
チェンチコワなどが出演していた1990年代初頭のキーロフバレエ(現マリインスキーバレエ)
英国ロイヤルオペラハウスでのガラ公演オープニングで演奏された映像を20年前に観て以来すっかり魅せられ、
オペラは苦手でありコンサートにもさほど足を運ばぬためバレエのガラ公演で聴く機会を待ち侘びておりました。
華麗且つ勇壮な曲調で間違いなく場が華やぎ、各演目の前に紹介するのも良いかもしれませんが
大きな顔写真が出てくるとあたかもプロ野球のバッター紹介状態になりかねず、
オープニングしかも壮大なチャイコフスキーの曲に乗せて一挙に行うのは良い案です。今後も継続願います。
新国立劇場バレエ研修所 第14期・ 15期研修生、予科生
『ケークウォーク』
振付:牧 阿佐美
ゴットシャルクの軽快な曲に振り付けられた大人数で踊られる作品で
女性に赤いレオタード衣装がと弾ける若さが眩しく視界に入りました。プログラム最初にぴったりです。
宮田彩未 with ジョセフ・テイラー(ノーザン・バレエ)
『夏の夜の夢』第2幕より パ・ド・ドゥ
振付:D. ニクソン
テイラーさんの衣装がまるでターザンでびっくり仰天であった以外は
宮田さんの威厳と愛らしさを湛え、ふんわりと白い衣装を纏って軽やかに舞うタイターニアの優雅なこと。
設定がユニークで、イギリスのツアーバレエ団の芸術監督とプリマバレリーナが
夢の中でオベロンとタイターニアに変身して物語が進んで行く振付であるそうです。
相澤優美 (ジュネーヴ大劇場バレエ団) with ヴラディミール・イポリトフ(ジュネーヴ・ダンス・イベント)
『End of Eternity』
振付:S. リヴァ 音楽:P. グラス「ピアノと管弦楽のためのチロル協奏曲 第2楽章」
ピアノ:巨瀬励起
スモークが大量に焚かれた中から相澤さん、イポリトフさんが身体をくねり絡ませながら踊り繋いでいく作品。
グラスの曲を聴くのは2013年の新国立劇場バレエ団公演『イン・ジ・アッパールーム』以来久々で
濃霧に包まれながら次々と前面に出現する身体表現もなかなか面白く感じました。
アッパールーム鑑賞当時と同様、グラスの曲を聴くと映画『天空の城ラピュタ』で
ラピュタを目指すパズーやドーラたちが竜の巣に出くわしたときの曲に類似していると思うのだが
同意の方はご連絡ください。(通じる方は少数かと存じます。マニアック過ぎて申し訳ございません)
ただやや冗長な印象も否めず、後半においては4階席末端からは霧ばかりが目についてしまったのが正直なところ。
舞台近くの席で鑑賞していたなら、印象は大分違っていたでしょう。
水谷実喜 with ツーチャオ・チョウ(バーミンガム・ロイヤル・バレエ)
『サタネラ』のパ・ド・ドゥ
振付:M. プティパ
発表会でもお馴染みの作品ですが、1本前の『End of Eternity』が靄続きでやや長く
リラの精の魔法にかかりかけていた上階席の観客の目を一気に覚めさせる弾けた明るさ全開。
水谷さんは悪魔の娘を意味するサタネラからはイメージが大分異なりますが
くりっとした大きな目に可愛らしいお顔立ち、丁寧で輪郭のはっきりとした踊りが振付にぴたりと嵌ります。
チョウさんの絶やさぬ笑みとバネのある跳躍、そして何よりもお2人が心から楽しんで踊る姿から
いかにもバレエ音楽らしいズンチャッチャリズムも愛おしく思えました。
爆音演奏であった序盤は目覚まし時計代わりに違いありません。
アクリ瑠嘉 with マヤラ・マグリ(英国ロイヤル・バレエ)
『ロメオとジュリエット』より バルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:K.マクミラン
知人のロイヤル博士からマグリさんの表情の豊かさについて教えていただき、実際に観て納得。
ロミオへの一途な愛が、バルコニーに現れたときから4階末端席にまで届き
ややガタイの良い体型ではあっても純情可憐なひたむきジュリエットに見えました。
アクリさんはもう少し起伏に富んだ感情表現があればとも思いましたが踊り込んでいけば、
また全幕で観ればまた印象は変わってくるに違いありません。
英国ロイヤルらしい演目を持ってきて披露してくださったのは嬉しく
特別好評な振付演出ならばともかく、なぜ来年の来日公演で『ドン・キホーテ』を上演するのかやはり謎だ。
新国立劇場バレエ研修所 第14期・ 15期研修生、予科生
『シンフォニエッタ』
振付:牧 阿佐美
毎年恒例、新国バレエ研修所の看板作品。研修生たちの爽やかで折り目正しい持ち味を生かした作品で
水色のシフォンの衣装も涼しき色彩。男性の衣装が濃い目の青に変わり、以前は白かったと記憶しております。
ミラノ・スカラ座バレエ・アカデミー生
『ジムノペディ』
振付:R. プティ ピアノ演奏:マルコ・パデルニ
『エスメラルダ』より ヴァリエーション
原振付:M. プティパ
『ジムノペディ』は初見。サティのピアノ曲に乗せ、緊張感ある静けさの中で続いて行く
風変わりなポーズじっくり観察。男性が前かがみになって女性の片脚を上体に絡ませながら
背中に女性が乗っかり両腕を横に掲げるポーズのシルエットが目を惹きました。
男性の1人の髪型がぴっちり七三分け。学生服と白鞄が似合いそうです。
コンクールでもお馴染み『エスメラルダ』は勢いと力強さが前面に出た雰囲気。
発表会でも観る機会が非常に多く求めるレベルが高いのか
もう気持ちジプシーとして生きる女性が持つ孤独感や脆さを湛えている方が
好みではありますが、自信に溢れた姿はお見事。
米沢 唯 & 奥村康祐 (新国立劇場バレエ団)
『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』
振付:G. バランシン
今年の新国立ニューイヤー・バレエ以上にスピーディーに駆け抜けていき
テクニシャンでありながらも器械体操にならず、心を込めて要所要所で優しげな目で見つめ合う
お2人から生まれる幸福感もまた良し。可能ならばもう1回観たいと唸らせました。
米沢さんの回転からは力任せな様子や無理矢理感は皆無で、
観ているこちらまでが一緒に楽しんでしまうほど余裕たっぷりです。
千野円句 with スタニスラヴァ・ポストノーヴァ(ボリショイ劇場バレエ)
『ジゼル』第2幕より パ・ド・ドゥ
振付:J. コラーリ/J. ペロー/M. プティパ
千野さんは長身でスタイル宜しく、ポストノーヴァは無機質過ぎて(失礼)精霊には見えなかったものの
小さな頭に小柄で華奢な体型に衣装が似合っていました。
両手を前に掲げた、占い師のようなプロフィール写真はインパクト強し。
このパ・ド・ドゥは抜粋での上演において全幕の世界を観ているかのような気持ちにさせるのはただでさえ難しく
十字架の装置があるだけでも雰囲気は随分と高まったのではと思います。
伊勢田由香 (ペンシルベニア・バレエ) with エドガー・チャン(フリー/元バレエカルメン・ロッチェ)
『海賊』より 寝室のパ・ド・ドゥ
振付:A. コレーラ
今回かなり心に迫った作品の1本。伊勢田さんは小柄でありながら身体を大きく見せる術に長けていて
体幹も強く、リフトされたときを含めポーズ1つ1つが非常に伸びやか。
壮大な音楽にも負けぬ、生命力溢れて高揚感のある且つコントロールの効いた踊りは
観ていて爽快な気分になりました。チャンさんに安心して身を委ねていた姿から、信頼関係も強固と見受けます。
小笠原由紀 with ルスラン・サブデノフ (トゥールーズ・キャピトル・バレエ団)
『ノクターン』
振付:A. ミロシニシェンコ
今回の作品で唯一録音音源で衣装は女性はレオタード、男性は下着1枚で至ってシンプル。
その分、絡み合う身体の線や動きの面白さ、可動域の深まりがよく見え
しっとりとした音楽と溶け合っていてもう少し長く観てみたいと思わせました。
小笠原さんは2013年のアステラスにも登場し『海賊』を披露。
当時はドレスデン・ゼンパーオーパー・バレエ団在籍で今年2018年よりトゥールーズに移籍されたそうです。
高田 茜 &平野亮一(英国ロイヤル・バレエ)
『ジュビリー・パ・ド・ドゥ』
振付:L. スカーレット
作品としてはこの日の白眉。エリザベス女王の即位60周年を記念して振付けられた作品で
音楽はグラズノフ『ライモンダ』よりマズルカ。『眠れる森の美女』は別としてマズルカといえば
『ライモンダ』であれ『白鳥の湖』であれ裾の長い衣装で踊る民族舞踊の印象が強く
どんな趣きある作品かと楽しみでしたが
マズルカの緩急ある曲調にぴたりと嵌った実に格調高い男女のパ・ド・ドゥで
スカーレットはよくぞ作ってくださった、そして高田さん平野さんの日本での披露決意に感激。
衣装がまたセンス良く男女とも紺色で、女性のチュチュと頭のシニヨンの上側に散りばめられた
ラインストーンがお洒落。シック且つ豪華なデザインです。
お2人ともお顔を認識しながら舞台で鑑賞するのは初。高田さんは個性が強いお顔で役を選ぶかもしれませんが
盤石な技術の持ち主で、テクニックが凝縮したクラシカルなパ・ド・ドゥはいたく似合うと見受けます。
存在感やオーラも他の出演者より頭1つ抜けていて、自身が座っている席が4階から3階に移動したかと錯覚したほど。
大トリに相応しい、大変華やかで高貴さのあるパ・ド・ドゥでした。大満足。
『ドン・キホーテ』、『海賊』、『エスメラルダ』、『ディアナとアクティオン』といった
超絶技巧系の古典演目が多過ぎていた前回に比べ古典と現代物のバランスも良く
クラシカルな作品であってもバレエ団独自の作品の披露が目立ったのは嬉しいこと。
上演順も工夫がなされ、やや長めのコンテンポラリーの後にぱっと明るくなる賑やかな古典のパ・ド・ドゥを入れての
メリハリのある構成や、明らかに他の演目を選ぶべきであったと感じるプログラムは無く
どのダンサーも自信を持って披露できる作品を選び抜いていた点も好印象。
更に、長年バレエのガラでのオープニングで聴けることを願っていた
チャイコフスキーのオペラ『エフゲニー・オネーギン』ポロネーズによる予期せぬ開幕に胸が高鳴り
予備知識無しで臨んだ『ジュビリー・パ・ド・ドゥ』は『ライモンダ』のマズルカ
そしてフィナーレは予定変更して昨年と同じく『バレエの情景』よりポロネーズで2曲続けてグラズノフ、と
好みで凝縮された公演でこれまでの2012年、2013年、2017年のアステラス鑑賞以上に堪能できました。
世界各地で活躍している日本のダンサーにお目にかかれる貴重な機会であり、次回の開催も楽しみです。
『テーマとヴァリエーション』の曲は煌びやかで高揚興奮する好きな曲ではあるが
グラズノフの『バレエの情景』ポロネーズの壮大且つ渋みが効いた曲調も毎回心にずしっと響き、
生では滅多に聴けない曲。アステラスのフィナーレ恒例曲として今後も継続して演奏していただきたいと願います。
2017年のフィナーレ映像。何度聴いても心を掴まれる曲だ。
当日は上野で世界バレエフェスティバル全幕プログラム『ドン・キホーテ』を鑑賞された
当ブログお馴染みムンタ先輩と行く予定であったものの台風到来で延期した恵比寿のカタルーニャ料理店を後日訪問。
バルセロナが位置し、トゥールーズにも近い州です。カタルーニャ独立問題の行方が気になります。
まずはコクのあるスペインビールで乾杯。オリーブ入りポテトのサラダと。
松の実入りの甘めのパテ。濃厚で渋い味わいのワインに合います。
鱈とトマトのガーリック煮込み、だったか正式名称は覚えていないが魚の旨味がじわり。ワインが止まりません。
パスタで作られたパエリア、フィデウア。魚介が盛りだくさんで海鮮焼きそばの趣き、ワインが進みます。
サングリアもスパイシー。
時には甘い物を、デザートはカタラーナ。熱々カスタードとキャラメルアイスクリームの組み合わせです。
トゥールーズと日本といえば、、、最も申し上げたい話題は今回は横に置き
熊本の象徴であろうキャラクターくまモンが先月フランスの都市を数カ所訪れ
そのうちの1カ所がトゥールーズだったそうです。
フランス1人旅を計画していた母が新聞のウェブ版か何かを登録しており配信されてきた翌日の7月26日、
「トゥールーズが良さそうな街であるの滞在がおすすめどうのこうの言っていなかったか?」と
母にとっては理由不明な私の謎ぼやきが頭の片隅にあったようで、教えてくれました。
トゥールーズのバレエ団公演DVD冒頭に映るキャピトル広場をくまモンが自転車走行、市場巡りもしています。
どうぞご覧ください。