※以下、私個人の考えでございます。反論をされたい方も大勢いらっしゃることと存じますが
考えの1つとして捉えていただけたら幸いです。
私にとってテレビ以上に疎遠な分野の1つがゲームですが、
世間で爆発的な流行を見せているポケモンGOについて名前だけは一応存じ上げております。
官房長官までもが声明を発表する事態に至りましたが、
幼い頃から自宅にテレビゲームがなく(妹も私も興味を示さなかったらしい)
携帯電話のゲームも操作した経験がないため内容やルール、遊び方などは全く分からず知ろうとせず。
日曜日、東京某所を歩いておりましたら後ろから携帯電話を手にしたカップルが1歩2歩と背後に近づき
何事か、背中に何か付着しているのかと思いきやポケモンのキャラクターが近くに現れていたとのこと。
人同士の接触ならまだしも地域によっては交通事故にも発展しているようで
最近逝去された永六輔さんにしてみれば、「前を向いて歩こう」を作詞したい心持ちになられたかもしれません。
それはさておき遊ぶ方はどうぞ安全第一でお願いいたします。
さて本題。先日びわ湖ホールにて下田春美バレエ教室『コッペリア』を鑑賞いたしました。
新井崇さんによる演出でポーランドののどかな村の雰囲気を出しつつも全体が華と品のある舞台で
しかもオーケストラ演奏付き。演出も工夫が凝らされ大変充実した発表会でした。
詳細な感想はまた後日書いて参りますが、フランツを踊られたのが教室のご出身で
現在イングリッシュ・ナショナル・バレエで活躍中の猿橋賢さん。
背が高くオーラもあり、颯爽とした舞台姿が印象深く残っております。
今回初見でしたがそういえば昨年夏に渋谷の舞台に出演の旨がチラシに掲載されていたはずと
思い出しながら調べてみると、熊川哲也さんが手掛けられたオーチャードホールでのガラに出演されていました。
ご覧になった方によれば、ガラの中盤では熊川さんのお話があったそうでなかなかの熱弁だったとのこと。
熊川さんの舞台には何度も足を運んでいるわけではなく
個人の趣味ではございますが、特にテレビなどでも見られるやや横柄な語り口が苦手でございます。
(芸能人たちがバレエに再挑戦したときの衣裳が泣くよ!にはびっくり笑)
しかしそのガラでの話に思わず唸ってしまう内容があったようです。
それはバレエを習っている子達が生の舞台を年1回ぐらいしか観に行っていないこと。これは確かに寂しい状況です。
勿論、劇場に足を運ぶのが難しい理由はいくつもあるでしょう。
プロを目指している生徒さんほどレッスン回数が多いのは当然です。
またコンクール出場ともなればその分レッスン、そして出費は増える。
開催場所が海外となれば資産家のご家庭を除けば家計は火の車状態でしょう。
近年はコンクールが乱立し、プロを目指すわけではない生徒でも挑戦できる機会がぐっと増加。
しかしコンクールの規模を問わず出場するからには練習をたくさん積む必要があるわけで
休日返上で練習に明け暮れ、劇場へ出かける時間の確保は困難となるに違いありません。
またバレエは上手くなればなるほど金銭がかかるもの。
先述の通りコンクール出場や、発表会で主役に選ばれ男性ゲストとパートナーを組むともなれば
パートナー費用もかかってきます。(未経験のため額の相場は分かりかねますが)
幕物の場合は例えば民族舞踊でペアを組む、といったこともるでしょう。
チケット代の捻出は厳しくなり、所属の教室の先生関連の舞台以外は
観に行けずじまいになってしまうことも多々あるようです。
また住まいが地方の場合はバレエに限らずエンターテイメント全体が少ないため、
鑑賞したくても公演を観る機会に恵まれにくいのもあるかと思います。東京一極集中の現状を見直すべきとも感じますが。
ただ、東京近郊お住まいの方でしたらバレエを習っている生徒さんには、特にプロを目指している生徒さんや
その親御さん(お子さんが小さい場合)には生の舞台をしっかりと、せめて年に5回くらいはご覧いただきたいと願います。
それにはバレエの先生こそが教室関係者の舞台だけでなくもっと全体の公演の状況を把握し、
生徒さんたちに近日公演を行うバレエ団、演目、あらすじ概要、出演者、場所などを
こまめに告知していく必要性もあると考えられます。
幸か不幸か、私はバレエが全く上手くはなかったためコンクールも出ず
(同じ教室の友人は誰も出ず、むしろ私が子供の頃はコンクールは
プロを目指す生徒だけが出るものと考えられていましたが)
発表会で主役を踊ることもなく、母は内心ほっとしていたとか。
容姿端麗でもなければ手脚も短く、9年習っても90度以上の開脚もできず
バレエも上手いとは程遠い悲惨な生徒だったのは親にしてみれば良かったようです。
しかし先生がとにかく舞台をたくさん観るようしきりに紹介してくださる方であったのは幸いでした。
あとから知った話、先生は子供の頃東京文化会館の近くにお住まいで小学生の頃から1人で劇場へ行き、
フォンティーン、マクシモワ、コルパコワ、といったバレエ史に刻まれている
錚々たるスターダンサーたちをご覧になったとのこと。
またバレエが面白く観られなくたって良い、衣裳や舞台美術、装置、音楽、何でも良いから1つでも感動してくれたら。
会場が暗転し、拍手が湧く中を指揮者が登場して序奏が始まり鳥肌が立つ興奮など
生の醍醐味を味わってくれたらそれで良いと仰っていました。
そんな先生が特に強く勧めてくださったのが1992年英国ロイヤル・バレエ団『ラ・バヤデール』。
話は複雑で子供向きとはいえないがとにかく美術や衣裳、装置が豪華、
音楽は『ドン・キホーテ』と同じミンクスで耳に馴染みやすく、是非家族で鑑賞しに出かけて欲しいと
一押しされていたのはよく覚えております。
実際観に行き、確かにバレエは余り記憶にない笑。しかし舞台美術の壮麗さに圧倒されたことは確かで
妹は双眼鏡でダンサーではなく葉っぱの装飾ばかり覗いていたほどです。
のちに東京の多摩センターにあるサンリオピューロランドへ行ったとき、
内装が豪華でどこかで観た舞台に似ていると思い、そうだ、ロイヤルバレエだ!と親子で思い出してしまいました。
妹はこの公演がきっかけで舞台スタッフの仕事に興味を持ち、
学生の頃から時々演劇の音響や照明の手伝いに行くまでになりました。
東京バレエ団の現芸術監督で、子供の頃ご自身やお兄さんもよく
バレエを観に劇場へ出かけていらした斎藤友佳理さんは著書『ユカリューシャ』で、
お兄さんが青年期に少々やんちゃな時期があったようでしたが
朝帰宅して聴いていたのは『白鳥の湖』だったときもあったと綴っていらっしゃいます。
子供のときに観た生の舞台は、年月を経ても何かしら記憶の片隅に残っているものなのでしょう。
現代は動画サイトが著しい発展を遂げ、DVDも豊富。
画質も良くなり舞台に立つ上での参考になるのは十分に分かります。
しかし立つのは生の舞台。劇場という大きな空間の中で踊り観客を引き込むダンサーの魅力に触れ、
また会場でプログラムを読んだり展示を見ることで作品の知識を増やす機会にもなり
周りの観客の会話にも気付かされることもあるでしょう。
新国立劇場でも、生徒さんを率いてバレエ鑑賞へいらっしゃる先生をよくお見かけしますが
ホワイエの中を皆でゆっくりと散策しながらパネルの展示に見入ったり、ときには
ビュッフェのメニューや次回以降の公演チラシのラックにも注目なさって
生徒さんたちがとても楽しんでいる姿が目に留まり
バレエそのものだけでなく劇場という空間に魅せられている様子に心から嬉しくなりました。
プロを目指す方は勿論のこと、そうでなくても財産となり先の人生で何かしら役に立つはずです。
ポケモンGOも面白いかもしれません。しかしまずは鑑賞へGO!
特にお子さんにバレエを習わせているご家族の皆様、お子さんを劇場へ導いてあげてください。
昨年横浜でピカチュウがバレエを披露したようです。詳細はこちら。
動画もあり、こちらをどうぞ。『パキータ』よりリュシアン、或いは『海賊』より女性のヴァリエーションの
1つとしても知られる曲に乗せて踊っています。