11月18日(月)、六本木のスタジオトロンにてバレエカレッジ主催の指揮者井田勝大さんによる講座
バレエ音楽の魅力と秘密《第11回》「マノン」〜愛と欲望のドラマを音楽はどう物語るのか?を
聴講して参りました。
https://balletcollege.amebaownd.com/posts/7267743
元々とても好きなバレエ作品であるため音楽の観点から捉える魅力にも触れたいと思い、
加えて来年2月3月には新国立劇場バレエ団が8年ぶりに再演するため興味津々に足を運びましたが
音楽の構造から編曲の秘密、振付家と作曲家の共通項に至るまで
鑑賞がより楽しみになる知識の宝庫に飛び込んだ心持ちになりました。
中でも印象深かったお話の1つは、編曲者レイトン・ルーカスの存在。
バレエ『マノン』の音楽はオペラ『マノン・レスコー』の曲は一切使用されておらず
マスネのあらゆる曲を選りすぐった構成は以前から頭に入ってはおりましたが
管弦楽曲もあれば声楽曲やピアノ曲もあり、形態は様々。
バレエ版では当たり前のように奏でられている甘美で蕩けるような、
時には醜さを前面に押し出したドラマ性に富んだ管弦楽の曲ばかりを集めていたのではなかったのです。
つまり鍵となったのは編曲力だったわけですが、力を発揮したのが
映画音楽も数多く手掛けていたレイトン・ルーカスであったのこと。
実際、3幕の沼地で使用されている元の歌曲を聴いてみると澄み切った空気に包まれたような調べでいたく清らか、
しかしルーカスの手にかかると、大地までもを突き動かすかの如き劇的な迫力を備えた曲に変化。
これまでバレエ版『マノン』の魅力として、あたかもバレエのために書き下ろされたと思わせる音楽を
1つとして挙げておりましたが、音楽もさることながら編曲こそが重要な鍵であったのは初めて知る事柄でした。
思えば、バレエ音楽ではない曲を用いて構成した全幕バレエはいくつもあり
例えば『マノン』と同じくマクミラン振付『アナスタシア』はチャイコフスキーの音楽を取り入れていますが
2幕は交響曲第3番ポーランドを丸ごと使用。そのためバランシン振付『ジュエルズ』ダイヤモンドと
脳内同時再生状態に陥ることもありましたがそれはさておき、今夏来日公演にて上演された
エイフマン版『アンナ・カレーニナ』はチャイコフスキーの様々な曲で彩られ
どの場面にも嵌る選曲ですが編曲はしていないと思われます。
対する『マノン』は井田さんが作成された使用曲リストに目を通すと、1つの幕の中だけでも
管弦楽の曲から歌曲、ピアノ曲までバラバラな構成であるのは明らかで
バレエの舞台がより生き、マノンの生き様や重厚濃密な物語が伝わるよう
ルーカスの編曲とまとめ上げの見事な仕事ぶりは天晴れとしか言いようがありません。
今回は時間の関係でパ・ド・ドゥ場面中心に取り上げての講座でしたが私としてはレスコーの音楽も大きく注目。
幕開けから舞台に佇み、デ・グリュー脅迫や酔っ払いソロを経て最後は血塗れになって
身体の奥底から何かを訴えながら息絶える、妹マノンに負けぬ物語のキーパーソンでしょう。
井田さんのリストを参考に、元の曲も聴きつつ公演を楽しみに待ちたいと思っております。
新国立劇場御中、レスコー役と日程の早期発表を望む!!
燻製料理店にて、このときは消えてしまっておりますが運ばれてきて
蓋を開けた瞬間はスモークが焚かれた状態でした。
来年初台にて久々に目にする沼地場面でのスモークにも注目いたします。