9月23日(月祝)、新国立劇場バレエ団こどものためのバレエ劇場『白鳥の湖』長野県岡谷市公演を観て参りました。
今回は発売日に購入した公演で、前々からの予定通り。
急なキャスト変更も無く妙な緊張もせず、肩の力を抜いて鑑賞です。
https://www.event-nagano.net/eventdata/6936.html
カノラホールさんのツイッターがとにかく一生懸命で心がこもっています。
カノラでも初台でも新国立バレエを観て欲しい、その純粋な思いが響きました。
そういえば、電話でチケット申し込みの際も大変丁寧な案内をしていただき
(長野の劇場事情に詳しい方より、インターネットではなく電話申し込みを勧めてくださり深謝)
鑑賞の特典付き岡谷駅周辺飲食店地図も同封されていました。
https://mobile.twitter.com/CANORA_HALL/status/1169503524104753152?p=v
木村さんと渡邊さんのコメント動画
https://mobile.twitter.com/CANORA_HALL/status/1175674365737758720?p=v
いよいよ明日!
https://mobile.twitter.com/CANORA_HALL/status/1175927695953129472?p=v
当日券あります!
https://mobile.twitter.com/CANORA_HALL/status/1176068126770786304?p=v
初台観劇も奨励
21日(土)の大阪に続き、主演は木村優里さんと渡邊峻郁さん。
お伽話要素強め且つ簡略な版でも感情の流れを丹念に紡ぎ、マイムが極力入らぬセルゲイエフ版踏襲な演出において
出会いの場でのオデットの怯えに不安から心を開いて行くまでや、王子の好奇心から恋へと変わっていく経緯を
お2人とも気品を宿しながらも油彩画のように濃く描いていく踊りで引き込み、お子さんたちも舞台に集中。
逃げるオデットを愛おしそうに、されど迷いなく力強く抱擁しようとするジークフリート王子の凛として高貴なことよ。
どこを切り取っても美しく収まるフォルムを保ち様式美を静かに厳格に貫きながらも
淀みなく会話が聞こえてきそうなアダージオも胸を響かせました。
何度観ても整然優美なコール・ドにもうっとり見入り、ただ揃っているだけでなく
1人1人が悲しみを湛えた姿の連なりからも目が離せませんでした。
終幕における、弱るオデットを見て悪魔への憎悪を露わにした王子が立ち向かい
羽根捥ぎ取り回転しながら跳躍して崖へと追い詰めていく終幕が勇ましく劇的。
順番は前後して、弓矢を構えていたところに湖を通過するハリボテの白鳥を目にして驚きを覚える流れも含め
渋いながらもお伽話に調和する容姿に加え(2017年の大衝撃だったアルベルト以来毎度思います。
いわゆる少女漫画系なる目の中に星印な王子様の容貌ではないはずが王道のクラシックな貴公子も不思議と絵になる)
雄弁で自然な所作や立ち振る舞いに置かれた状況を全身で語ることができる、
更には品格も持ち合わせた渡邊さんの王子なら古臭い演出と言わせぬ説得力がありました。
貝川さんの渾身なるロートバルトもいよいよ千秋楽と思うと寂しさすら募り
とうとう王子に勝利は叶わずとも毎回スケールの大きな存在感で楽しませてくださいました。
崖からの落下が今から落ちますと言わんばかりなわざとらしさが皆無で
ぎりぎりまで持ちこたえていたものの王子に追い詰められた果てに呆気なく落ちてしまった感があり。
道化の小野寺さんは王子に対する忠誠心が強そうなほのぼの系で、
大阪での攻め路線な(褒めております)速水さんとは全く異なるタイプ。
渡辺与布さんの益々板に付いた王妃も麗しく、にこやかな笑みを浮かべながら取り仕切る姿に
こちらも華やいだ心持ちになりました。
威厳と澄ました表情が印象深い関晶帆さんとはまた違った王妃で、渡辺さんならではの魅力でしょう。
ハリボテ白鳥通過(私は好みだが)や王子の提灯袖衣装、花嫁候補たちのソフトクリーム帽子や
一昔前のシャ乱Qの如きチリチリ頭のロートバルトの装いなど多少の突っ込みどころはあれど
お伽話の要素を大事にし、そして最後は王子がロートバルトの羽根を
豪快に捥ぎ取る結末が明確なセルゲイエフ版の良さを再確認。
王子の1幕の紺色衣装やワルツであれナポリであれ、ベルベットを多用したクラシカルなデザインは
より軽くよりすっきり洗練が優先となりがちな昨今においては貴重な衣装かもしれません。
カノラホールは開館から30年を迎え、多少年季は感じられても重厚な赤いカーテンが付いた舞台。
また舞台と客席が非常に近く、3列目ぐらいまでは照明もよく当たり出演者からも観客が丸見えと思われ
舞台に近過ぎる事情による前方部分の客席潰しもなく、1列目なんぞ冗談抜きに至近距離に出演者が現る迫力でした。
周囲のお子さん達がとても集中しながら観ていた姿も嬉しく、ロートバルトは男の子に大人気。
幕間にはバサバサと羽ばたく真似をしたり、ある子は終盤で崖から落下するロートバルトの場面にて
「死んじゃった」と思わず寂しそうな小声を発していたほどで
それだけ感情移入して観ていた証でしょう。白と黒のキャラクター両方が存在するからこそ互いが引き立つ
当たり前ではありますが物語の醍醐味を貝川さんとその男の子に再度教えられた気がいたします。
終演後にはアンケートを一生懸命書くお子さんが目立ち子供ならではの正直で鋭い視点からの感想が気になるところですが
楽しそうな表情でペンを動かしていた姿が新国立バレエが岡谷に来てくれた喜びを表していました。
客層は家族連れ中心ながらいかにもバレエ習っているお子さんだけでなく
会話に耳を傾けた限りオーケストラであれ演劇であれカノラで開催の子供向けのイベントがあれば
いつも来場している常連一家のお声も聞こえ、地元に愛されているホールであると窺えます。
バレエを習っている方のみならず、幅広い層にご覧いただきバレエ鑑賞にも興味を持ってもらうきっかけとなれば
これほど嬉しいことはありません。
2019年のこどもバレエはこれにて終了。東京では7月下旬、全国公演は9月の連休開催で変則的な日程となり
『ロメオとジュリエット』、札幌公演『くるみ割り人形』、『ベートーヴェン・ソナタ』との同時進行もあって
ダンサーの方々にとっては心身共に過酷であったかと察します。
しかしこどもバレエの最後の最後でもチャイコフスキー三大バレエの代表作『白鳥の湖』を
初鑑賞者にも子供にも大人にも満足感を与える上質な舞台を見せてくださったことに
一新国立常連として謝意が今も溢れております。私にとっては初めてのこどもバレエ白鳥鑑賞及び
こどもバレエ全国行脚の幸せな締め括りとなりました。
※上の写真、映像付き看板で主演ペアの顔写真が大きく映し出されていました。
映像は小野絢子さん福岡雄大さん主演時の舞台です。
ほっとなさった木村さん渡邊さん。これまでに経験したバレエ公演撮影タイムにて
我ながらよく撮れた気がしております。被写体が素敵であるのは言うまでもないが。
初台でお待ちしています!(とのお気持ちで手を振っていらしたかと想像)
道化の小野寺さんはほのぼのと、王妃の渡辺与布さんは王室スマイルと所作を崩さず手を振り
ロートバルトの貝川さんもバサバサと羽根を振って声援に応えてくださっていました。
新宿駅にて朝、あずさ5号に乗車。戦隊系な面立ちをした先頭車両。
8時ちょうどの〜 あずさ2号で〜
これを夢見ており、本当に8時発のあずさで向かいました。但し5号です。
長野や山梨辺りのバレエなら何でも良いかと聞かれたらそうではなく、ようやく心底行きたい舞台と合わせて実現。
そういえば、ジークフリート王子も白鳥狩に行くのですから狩人には重なるわけです。
記憶が正しければ、2016年の入団後初めてバレエ団のFacebookに登場されたときの渡邊さんは
ハンガーを弓に見立て白鳥を討とうとしているポーズを大原監督指導の下でなさっているこども白鳥リハーサル写真でした。
直前までベジャール版『火の鳥』を踊っていらしたと数ヶ月後に知り、また
コンテンポラリーも多くこなしてこられていたためかトゥールーズ時代のムキムキな体型の名残りがあったお姿が懐かしい。
まさか半年も経たぬうちに虜になるとは、記事を目にした際には男性ダンサーの層が厚い新国立バレエにて
入団後すぐに王子踊るに相応しい容姿であろうか云々と
首を傾げていた当時は知る由も無く、人生どこでスイッチが入るか分からぬものです。

岡谷の手前、上諏訪で下車。ホームに足湯がありびっくり!しかもお湯だけでなく駄洒落も沸いていたのはご愛嬌。
山梨から長野にかけては天候がめまぐるしく変わり、途中には大雨の地域も。
しかし幸い上諏訪付近では雨はなく晴れ間も見えて散策日和。
上諏訪での下車の目的、この並びを撮影したかった!スワン丸と竜宮丸の競演。
今年のこども白鳥はこの日9月23日で終了ですが、来年2020年のこどもバレエは
浦島太郎を基盤にした竜宮でございます。諏訪湖の竜宮丸は今年で引退だそうで、
恐らくは上京して来年のこどもバレエの監修に当たるのでしょう。(そんなわけはない笑)
浦島太郎、誰がやるのだろうか…?着物に髷ありだろうか、気になるところです。
それはさておき、湖に巨大な白鳥の構図はこどもバレエの透明感のある水色を模した紗幕のデザインにそっくり。
色々繋がりを見つけ、朝からあずさで諏訪湖で1人興奮の管理人でございました。
上諏訪には飲食店や土産物店、ホテルも豊富に揃い、せっかくですので90年の歴史を誇る信州蕎麦のお店八洲へ。
鹿さんと向き合いながらざる蕎麦をいただき、噛み締めるほどに香ばしさを感じる味に大満足。
お通しの野沢菜の塩加減もちょうど良く、蕎麦に合う日本酒として地元諏訪市で製造された蕎(きょう)が進みます。
ちなみに製造元の会社名は「株式会社舞姫」とのこと。
またもやバレエにぴったりではないか、昼前からのアルコール摂取は間違ってはいなかった。(そういう結論ではないか)
ハ洲をあとにし、カノラホールすぐそばの岡谷市役所方面へ向かう湖畔のバス停へと歩いている道中、
ベニヤホテル前にてポワント立ちの女の子たちの彫刻を発見。
この周辺は日帰り入浴可能な温泉やお洒落なカフェ、パン屋さんも立ち並び時間が許せば利用してみたかった。
諏訪湖循環バスが到着、その名もスワンバス。
諏訪湖近くへ行ってまで白鳥の湖を観るのですから、これにも乗りたかったのだ。
スワンバスに乗車すれば、『白鳥の湖』岡谷公演会場カノラホール近くの岡谷市役所前に停車するため便利。
岡谷市役所前に到着。煉瓦造りの建物かと思いきや、カノラホールはもう少し道を入ったところに位置。
帰り、ゲリラ豪雨に見舞われながら長野県周辺の地域密着ファミリーレストランのサンレークへ。
サンレーク、サンレイク、スワンレイク、唱えているうちに
白鳥の湖に聞こえてきたかどうかはさておきマークはコアラさんです。
グラスワインが見当たらなかったためハーフボトルのワインはあるか尋ねると大きめしかないとのこと。
新国立常連の皆様より、大丈夫飲める飲めるとおだてられ笑、すぐさま注文。
結果、余韻に浸りながら難なくいただけました。
前々日には大阪、この日は岡谷。湖にもワイン始めアルコールにもどっぷり浸かった管理人…。
往路は上諏訪で下車したため岡谷駅は帰りに初めて利用。可愛らしい駅舎です。
ただ、周辺の店舗の閉店時間は早し。
キオスクで購入した、諏訪湖と白鳥が描かれたくろゆりビールで一緒に帰京した新国立の常連の方と乾杯。
ビールも白黒両種類あり、並べて撮影。
また黒ビールの名称がインパクト大。木村さんの艶やかで悪女っぷりが気持ち宜しい黒鳥も好みでございます。
以上、予定外の鑑賞が追加された秋分の日連休でした。
めまぐるしい移動だったかと聞かれたら決してそうでもなく、観客である身ですから疲労感なんぞ無く心から満喫。
21日は大阪、22日は東京に戻って東京シティバレエスタジオカンパニー、そして23日は岡谷へ。
東海道新幹線に夜行バス、そしてあずさやスワンバスと乗り物多数駆使の時刻表トリックを秘めた
浪速江戸信州バレエ鑑賞線なる小説を、痛ましい事件事故は入れずどなたか西村京太郎さんの如く執筆いただけないかと
無謀な願いを綴っているのは横に置き、急な代打にも拘らず重圧の中での大阪にて主演を務めて成功を収め
翌々日には予定通り岡谷でも踊られた木村さんと渡邊さんには頭が下がりました。
こどもバレエで2公演とも全国行脚するとは数年前までは思いもしなかったこと。我ながらオタクだ。