11月17日(土)、神奈川県民ホールにて東京バレエ団プリンシパル上野水香さんプロデュースのガラ
ジュエルズ フロム ミズカⅡを観て参りました。
http://www.kanagawa-kenminhall.com/detail?id=35562
上野さんの公式ブログに出演者の集合写真がたくさん載っています。
バレエ団の垣根を越えた出演者の皆さんが心から楽しんで舞台に臨んでいらしたことが窺えます。
https://lineblog.me/uenomizuka/archives/1062443560.html
オープニングの振付、映像、演出を手掛けたのは出演者の1人である高橋竜太さん。
ラプソディー・イン・ブルーの曲に乗せて上空から横浜へとひとっ飛び、
3Dに近い躍動感ある映像で会場が横浜に位置する神奈川県民ホールであることを意識させてくださる展開でした。
そして紗幕越しにスタイリッシュな格好をした出演者が続々登場。
出演者が乗るステージ下部分にはきらりと名前も表示し
色々なカンパニー、ダンサーのファンが集結していたであろう構成に配慮もなされて
高橋さんのお洒落なセンスが光り、公演により期待を抱かせる演出です。
トップバッターは上野さんとマルセロ・ゴメスによるアロンソ版『カルメン』。
魔物の糸が身体を細く伝って迫るような鋭さのあるカルメンで
ゴメスは若き伍長というよりも酸いも甘いも経験済みであろう大人のホセ。
何よりもお2人とも華があり、ガラのオープニングに相応しいプログラムでした。
続いては『白鳥の湖』よりアダージョ。以前東京バレエ団に所属していた
渡辺理恵さんのすらりと伸びた脚の美しさは健在で嫋やかな風情がオデットにぴったり。
京當侑一籠さんとの共演は初見ですが見栄えのするペアでした。
新国立劇場の小野絢子さん、福岡雄大さんは新国立劇場からNBAバレエ団に移籍した
宝満直也さんの新作『夜明け前の狂気』を披露。序盤から指先を小刻みに震わせながら緊迫感を走らせ
暗闇にぽっかりと浮かぶ灯りのように輝き物哀しさを放つ2人は
つい数日前まで『不思議の国のアリス』を4日間主演を務め
1週間後には『白鳥の湖』札幌公演主演を控えているとは思えず身体の切り替えぶりに驚愕。
そして宝満さんの作品をもっと観てみたいと思わせます。
しっとり静けさに包まれたソロ『マヌーラ・ムー』を踊られたのは吉岡美佳さん。
ベジャールによる振付で、醸される柔らかな母性に癒され描き出される白の世界は清らか。
年齢を重ねたからこそ滲み出る魅力に触れた思いです。
ガラの定番『海賊』よりパ・ド・トロワには上野さん、柄本弾さん、秋元康臣さんの東京バレエ団トリオが出演。
メドーラの衣装が膝丈スカート型で、色は濃いめの紫で綺麗ではあるものの
無背景なガラの舞台ではやや寂しさがあった印象も拭えず。
アリが妙にノーブルであるなど突っ込みどころはあったとはいえ
ガラらしく大迫力なテクニックも冴え渡り、喝采が起こりました。
来年のバレエ団初演アンナ=マリー・ホームズ版『海賊』、楽しみです。
ウラジーミル・マラーホフと田頭綾女さん(針山愛美さんが怪我で降板)が
第1部最後を飾る島﨑徹さん振付によるAbsense of Storyは
流れるようでいて強さと儚さが交互に訪れる面白い振付でグレーがかった濃緑の衣装も鮮やかに映える作品。
パワフルで鋭敏な踊りの連鎖に度肝を抜かれたのは第2部幕開けに披露された高橋竜太さん振付の新作
Shelter Skelter。舞台を目一杯使用して黒い大きな台を設け、
釣り糸に見立てた赤い糸を上から垂らすと糸を用いながら舞台は進行。
出演は高橋さんご自身、長瀬直義さん、梅澤紘貴さん、岡崎隼也さん、松野乃知さん、西村真由美さん、伝田陽美さん、上田実歩さん、秋山瑛さん、と現役の東京バレエ団団員、OBOGも集結しキャリアは様々ながら
全員切れ味のある身のこなしで作品の中では今回最も惹かれました。
沖香菜子さんと秋元さんはブルノンヴィル版『ラ・シルフィード』を軽やかに舞い、
沖さんのまさの空気の如く体重を感じさせないふんわりとした妖精に釘付け。
1点だけ気になったのは、私の認識違いかもしれませんが東京バレエ団で採用しているラコット版と異なり
ブルノンヴィル版は髪型はセミクラシックスタイル(耳を隠す形)ではなく、
また腕や首にも真珠を装着せずに踊る印象があり
ラコット版と同様の髪型と装飾品付きであったため少し違和感を持ちました。
そうは言っても沖さんの妖精ぶりは絶品で悪戯っぽい笑みにも蕩けそうになり
婚約放棄はいけませんがエフィー放ってでもシルフィードに走ってしまうジェームズには同情したくはなります。
東京バレエ団ダンサーが座長の公演でデヴィッド・ビントレー作品を鑑賞する不思議な珍しさを募らせつつ
小野さん福岡さんの2本目は『アラジン』より結婚式のパ・ド・ドゥ。
抜粋及び録音音源では初鑑賞ですが、衣装はゴールドを基調としていてゴージャスなデザインで
アラジンとプリンセスの若さと愛で何でも乗り越えてしまいそうな幸福感に溢れるダイナミックな振付は
ガラ公演でも華やいで見えました。このパ・ド・ドゥに引き込まれた
或いはプログラムに記された<二人にはこの後、じつは試練が待っている>の解説が気になった方は
来年6月、新国立劇場バレエ団『アラジン』全幕公演へ是非足をお運びください。
主演キャストは近日発表と思われます。
初めて観るローラン・プティ版『ボレロ』は男女2人によって踊られ、シンプルな黒い衣装を纏った
上野さんと柄本さんが登場。黒い短パンの柄本さんは一昔前の陸上選手に見えなくもなかったが(失礼)
セクシーに色気振り撒く上野さんと身体を寄せ付けては離しながら熱を上げていく振付には徐々に惹きつけられ
眺めていると瞬く間に時間は経過。思えば上野さんを初めて観たのは
2001年の牧阿佐美バレヱ団デューク・エリントン・バレエ初演で
シャブリエ・ダンスでのしなる脚線に驚愕したのは今も記憶に残っております
下村由理恵さんと今井智也さんは『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥを
怖いもの知らずな若いカップルらしく高らかに歌い上げる恋心と時折ふと互いの感情をじっくり確かめ合う表現
両方に魅せられ、下村さんの見るからに可憐で意志の強い少女は年齢を重ねた現在もジュリエットそのもの。
東京での全幕2006年、東京と高松でのガラ公演の2008年、大阪での佐々木美智子バレエ団での全幕2016年と
度々鑑賞しておりますが役に魂を吹き込み役を生きることの喜びが毎回伝わり渾身の舞台に心を掴まれるばかりです。
トリは高岸直樹さん振付の『リベルタンゴ』。スピード感のあるタンゴの曲調に乗せて
上野さんとゴメスが大胆に色気を放出し、『ボレロ』以上に上野さんの美脚が映えて
ゴメスの情熱もみるみると帯びていきこの日一番の喝采です。
上野さんの身体のラインがよく見える白いドレス、黒で整えたゴメスの衣装が作品の雰囲気によく合い
締めに相応しい盛り上がりでした。
そして興奮冷めやまぬ間にフィナーレへ。アイガットリズムの曲が流れ始め続々と出演者が再び登場。
暗転した舞台のあちこちに光を当ててそれぞれの見せ場を短く披露していくテンポ良い演出です。
最後は一斉に1列に並んでポーズ、所属が異なりながら主役級ダンサーも集結した光景は壮観でした。
東京バレエ団と所縁深いダンサーだけでなく下村さんや今井さんに京當さん、更には新国立から小野さん福岡さんが
宝満さんとビントレー作品を持ってくるといった驚きのキャストや演目も揃い
ガラ定番の古典から観ていて面白い(これ大事)コンテンポラリーまでバラエティに富んだ構成も良し。
上野さんの素敵なセンスを備えたプロデュース力が開花した頼もしい座長ぶりに触れることができました。
パートⅢの実現も願っております。
かもめが写り込んだ横浜の港にて、かもめが翔んだ〜。
お若い方はご存じでないと思いますが、渡辺真知子さんの代表曲「かもめが翔んだ」の歌詞でございます。
港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ〜。ダウンタウン・ブギブギバンドの代表曲です。
帰りは横浜に来ると行きたくなる横浜中華街へ。
鎌倉市ご出身の上野さんは神奈川観光親善大使も務めていらっしゃいます。
まずは紹興酒で乾杯。
この日は関内で上演のDAIFUKUと掛け持ちの方もいらっしゃり、
敬意を表してまたDAIFUKU成功と盛会を祈願して、歩きながら偶然見つけた福盛楼へ。
内装はモダンチャイニーズな雰囲気。寛げる空間です。
中華街は3月のDAIFUKU mixture鑑賞以来。少し奥まった細道に入ると
夜でも手頃で美味しいメニューを揃えたお店が多い印象。
紹興酒と選べる定食セットをいただき、1500円程度でした。
写真には写っておりませんが、大ぶりな海鮮焼売とザーサイ、
ココナッツケーキ(これらも選択制)も付き、お得感がございます。