8月15日(水)、第15回世界バレエフェスティバルガラ - Sasaki GALA -を観て参りました。
バレエフェスのガラ鑑賞は12年ぶり。記憶の限り鑑賞時間最長新記録達成となる5時間半の長丁場でしたが
前回鑑賞の2006年とは異なり、ファニーガラが1幕仕立ての切り貼り感がない構成で
カンパニーを超えた結束力を一層感じさせ大笑いしているうちに気づけば終演。
体力は消耗いたしましたが3年に1度のバレエ万博⁉大いに楽しみました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2018/wbf/program.html
※バレエフェスにおいての目標は常日頃から「好みは別として」発言で我が鑑賞ではお終い状態にある方々を含め
バレエフェス全出演者ダンサーの魅力発見であり、全プログラム何かしら綴って参ります。
但し作品多数のため、それぞれ短めです。
幕開け
第1部から第4部までの出演者や作品紹介かと思ったら第5部の文字も表示。すると次に映ったのは「!?」。
客席から期待を込めた笑いが起き、いよいよガラ本編です。
― 第1部 ―
「ドリーブ組曲」
振付:ジョゼ・マルティネス
音楽:レオ・ドリーブ
レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ
「本家」パリオペラ座ダンサーによる作品の披露は久々2度目の鑑賞。
2006年のバレエフェスで振付者本人のジョゼ・マルティネスと
衣装デザインを手がけたアニエス・ルテステュのペアで観て以来です。
『シルヴィア』と『コッペリア』の曲を用いたグラン・パ・ド・ドゥ形式で
大人のエレガンスをたっぷり放っていたマルティネスペア対し
ボラックペアは若さとフレッシュ感一杯な雰囲気。ルグリの仲間たちを始めフランス系のガラは殆ど観ていないため
このパ・ド・ドゥを観る機会はなかなかなく、彼らに合う作品を鑑賞できたのは嬉しきこと。
牧歌的な印象が刷り込まれている『コッペリア』仕事の踊りが女性ヴァリエーションに使われ
振付次第でこうもお洒落になるのかとこの度も驚きを覚えました
「本家」と書いたのは国内の舞台で観る機会があり、近年の作品であり振付者のマルティネスはご存命。
マルティネスから許可を得ていたならともかくいったい誰が指導したのか、動画を見て覚えたのか。
衣装もそっくりで、振付衣装それぞれを手がけた本人たちの舞台を
決して昔でない平成に入ってから観ている者からするとかなり複雑な心境になったのでした。
(発表会やそれに近い形態で上演される作品の著作権については専門家ではないため多くは語らぬようにはしているが
特に有料の舞台では無性に物申したくなるときがたまにあります)
「ライムライト」
振付:カタジェナ・コジルスカ
音楽:ニュー・タンゴ・オルケスタ
エリサ・バデネス
真っ黄色のミニスカートレオタードな衣装を纏ったバデネスの姿が眩しく、
身体能力を生かしたパワフルな振付でバデネスには合っていました。
ただバレエ団やバデネスのカラー両方が如何なく発揮され
後半突入でやや眠気混じりの人も少なからずいたであろう空気の中で観客を大笑いさせ喜ばせたBプロでの
『じゃじゃ馬馴らし』を思い起こすと、文化会館の広大さや何よりもバレエフェスに相応しい作品を
踊って欲しかったとも思えます。
「白鳥の湖」より グラン・アダージオ
振付:レフ・イワーノフ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ
ノヴィコワは飾り気や派手さはなくてもセルゲイエフが思い描いていたであろう
儚く悲劇に身を置きながらも余計な表現はせず型で魅せる正統派なオデット。
嘗てホールバーグと組んだとは聞いたことがないが
2人とも変な芝居っ気がなく表現の方向性が似ていてBプロも含めて相性は良さそうであると感じさせました。
「アリシアのために―アリシア・アロンソに捧ぐ」
振付:タニア・ヴェルガラ
音楽:フランク・フェルナンデス
ヴィエングセイ・ヴァルデス
ヴァルデスといえばバレエフェスでは超絶技巧当番な役割に徹している印象でしたが
一昨年アリシア・アロンソのドキュメンタリー映画『ホライズン』を鑑賞し
(都心部で上映のロイヤルシネマと異なり空席だらけであったが…)
アロンソから指導を受けながら黙々と『コッペリア』の練習に打ち込む姿を観て
『ドン・キホーテ』や『ディアナとアクティオン』以外の作品でも観たいと思っていたため嬉々たるプログラム。
静かな作品ではあってもアロンソを想うヴァルデスのダイナミックな踊り方が
時折映し出される映像と融合しすっと引き込まれるように見入っているうちに終了。
映画をご覧になった方は胸熱くなりながら鑑賞なさっていたことと思います。
「タイス (マ・パヴロワより)」
振付:ローラン・プティ
音楽:ジュール・マスネ
マリア・アイシュヴァルト
ロベルト・ボッレ
シンプルな作品、衣装であっても渋みと優雅さを醸すアイシュヴァルトのドラマティックな美しさを堪能。
指先脚先から感情が零れ落ちるような心のこもった踊りにうっとりです。
ボッレの好サポートもあってパートナーリングも宜しく、優しい震えが伝わってくるお2人でした。
「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール
ドロテ・ジルベール
マチアス・エイマン
当初予定されていたミリアム・ウルド=ブラームが降板し代役はジルベール。
本家パリ・オペラ座のダンサーによる披露でエレガントな踊りを期待し過ぎたのか
スパスパっと切れ味鋭く、この日の35度超えの暑さをも飛ばす元気溌剌お祭りわっしょいな威勢の良さでした。
白地に赤薔薇とラインストーンを付けた簡素な衣装でしたが、急な代役であったため衣装が間に合わず
大急ぎで準備したためかもしれません。
エイマンは優雅な跳躍を次々に披露し、浮遊感も十分。ただ最近益々管理人の従兄弟に似てきており
舞台に登場しただけで親戚気分になってしまうのは致し方ない。(野球のユニフォームを着せたら更に似る…)
― 第2部 ―
「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
サラ・ラム
マルセロ・ゴメス
ゴメスが意外にも恋する少年。見た目はゴツいが(失礼)疾走感ある踊りから甘酸っぱさが伝わり
ジュリエットを見つめる瞳はキャンプファイアー状態(間違っても星飛雄馬ではない)で
幸福の絶頂期に達している怖いもの知らずな若者そのもの。
ラムは恋することで色艶がほんのり増したと思わせるピュアな少女っぷり。
シネマで観た危険な匂い立ち込める少女マノンとは全く異なる表現で魅せ
マクミランの様々な作品で観たいダンサーです。
「デグニーノ」
振付:マルコス・モラウ
音楽:アレクサンドル・クナイフェル
マリア・コチェトコワ
小柄で身軽なコチェトコワがシースルーな黒レオタードな衣装に身を包んで出現。
暗闇の中にぽっかりと浮かび上がるように現れ身体を自在に操っていくコンテンポラリー。
文化会館は広過ぎた印象が否めず、小さめの会場なら尚良かったでしょう。
「タチヤーナ」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:レーラ・アウエルバッハ
アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ
原作は『エフゲニー・オネーギン』でクランコ版『オネーギン』初演から50年の年に作られたらしい。
チャイコフスキーの音楽の選曲や幕ごとの見せ場であるパ・ド・ドゥの振付に
帝政ロシアの栄華と歪んだ面両方を見事なまでに描写した
クランコ版の衝撃の強さが今も忘れられず、現代風な衣装にも受け入れには時間を要しそうです。
ただ窓辺で読書に耽っていたタチヤーナが追い詰められ不安な心情を曝け出して行くパ・ド・ドゥは壮絶で
ラウデールの全身からタチヤーナの戸惑いが表れていました。
「モノ・リサ」
振付:イツィク・ガリリ
音楽コンセプト・作曲:トーマス・ヘフス、イツィク・ガリリ
アリシア・アマトリアン
フリーデマン・フォーゲル
アマトリアン、フォーゲルが光が広がる空間の中で大躍動。2人とも恐ろしいまでの身体能力の持ち主であると
今更ながら思い出しました。横一列に並ぶ照明機具を一斉に上下させたりと演出も面白く
アクロバティックであってもバレエらしい美しさしなやかさは維持していてこれはもう1回観たい。
確か途中でフォーゲルが上着を脱いでいたと記憶しているが、色気は感じなかったものの(失礼)
作品は2人によく合っていて特別好みでなくても引き寄せられるプログラムでした。
そういえば、2006年のバレエフェスで今回と同じく作品が気に入った
セミオノワとフォーゲルが踊る『太陽に降り注ぐ雪のように』がどこか似ている作風であったと記憶。
「ワールウィンド・パ・ド・ドゥ」 世界初演
振付:ティアゴ・ボァディン
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ
バレエフェスで世界初演との文字に期待を抱き過ぎたか、せっかく華のあるお2人にも関わらず
地味に終えてしまった印象。コンテンポラリーの類に属すると思われるが
紺系のレオタードも2人を生かしきれず。小さめの会場で観たら見栄えするのかもしれません。
「ローレンシア」
振付:ワフタング・チャブキアーニ
音楽:アレクサンドル・クレイン
マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ
ボリショイコンビ、華々しく粋に魅せました。クラシック作品で2人が登場すると照明が倍増したかと錯覚。
近年では全幕上演が滅多にされない作品ですがグラン・パ・ド・ドゥ形式で披露されるこの場面は
ガラにも打って付けでしょう。スペイン色濃厚な作品で
女性は第1幕のキトリのような襞状の段々チュチュ、男性は黒系。
2人の魅力が噴水の如く湧き出て、特にアレクサンドロワの鮮やかに決まるポーズの数々、
豪快ながらもクラシックの規範を保ちつつチャーミングな踊りは目と心の保養です。
3日後大阪フェスティバルホールで上演の全幕プロ『ドン・キホーテ』を鑑賞できぬためしっかりと焼き付けました。
さあ目も冴え渡ったところで1964年の東京五輪マラソンでいえば調布市の折り返し地点をまもなく通過です。
― 第3部 佐々木忠次へのオマージュ ―
アレッサンドラ・フェリによる佐々木忠次さんへの感謝の意を伝える挨拶と
オッフェンバック作曲『パリの歓び』終曲とあと何かの曲(分からず申し訳ない)に乗せた
佐々木さんの人生を辿る映像が披露されました。
「月に寄せる七つの俳句」より パ・ド・トロワ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ
エドウィン・レヴァツォフ
2009年の東京バレエ団公演以来の鑑賞。作品自体を知ったのは初演の頃、
現在東京バレエ団監督を務める斎藤友佳理さんが草刈民代さん、高部尚子さんと共に
新鋭ダンサーとして紹介されていたバレエ書籍で閲覧し
なぜヨーロッパの人が俳句をテーマに制作したのか不思議でしたが
優しい光が注ぐ月夜の海で舟を漕いでいた(確か)高岸さんの写真は覚えております。
日本、俳句をテーマにしながらも和装束だらけ状態にせず
あくまでも俳句の型や静けさといった日本のエッセンスを凝縮するにとどめたからこそ
成功に繋がったのかもしれません。アッツォーニ、リアブコ、レヴァツォフが静かに淡々と紡ぎ上げていく流れが
ヨーロッパから見る日本のゆかしい精神を投映していると見受けました。
「リーフ(葉)」 世界初演
振付:大石裕香
音楽:アルヴォ・ペルト
ジル・ロマン
黒っぽいラフな格好でロマン登場。悲哀だったり背負っている重みであったり
どちらかといえば後ろ向きな感情を放出しつつも希望を見出そうと奔走しているであろうと想像させる作品で
佐々木さんの逝去を悼み感謝を捧げる心がそのまま表れていたと思われます。
「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル
上野水香
東京バレエ団
東京バレエ団の登場には色々ご意見が飛び交っていましたが佐々木さんが創設したバレエ団ですので
ごく自然な流れで決定したのでしょう。上野さんは古典の場合は
濃すぎるヒロインと感じさせてしまう時が度々ありますが、ボレロでは削ぎ落とした潔さがあって
観ている回数が多いことも影響していますが好みのメロディです。
11月末から始まる20世紀の傑作バレエ2の公演しかも新国立劇場で観る東京バレエ団公演は
『ザ・カブキ』を見逃しているため初。楽しみです。
― 第4部 ―
「ウルフ・ワークス」
振付:ウェイン・マクレガー
音楽:マックス・リヒター
アレッサンドラ・フェリ
フェデリコ・ボネッリ
吹き荒ぶ風に煽られる中でフェリとボネッリが絡みながら踊るパ・ド・ドゥで
年齢からは考えられぬフェリのしなやかさには驚愕するしかありません。
黒っぽい透け生地のシンプルな衣装も鋭い冷たさを帯びた世界観を際立たせました。
それにしてもシースルー衣装の現代作品は今回の流行りか?
「マルグリットとアルマン」より
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フランツ・リスト
アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー
デヴィッド・ホールバーグ
コジョカルは椿姫がお好きらしい。今年のハンブルク・バレエ来日時は全幕ではラウデールで鑑賞していたため
(ノイマイヤーの世界でコジョカルはパ・ド・ドゥのみ鑑賞)
今回は果たしてどんな姿か不安大半(失礼)で臨んだところ意外や意外、
悲しみを湛えたマルグリットがさまになっていて白い衣装もお似合い。
アルマンの父親コボーはマルグリットを息子と一緒にさせたくない不穏な表情といい
堅苦しく貫禄ある容姿といいBプロ『マノン』デ・グリューより遥かに良し。
後先考えず純情に突っ走る詩人にホールバーグも嵌っていて不安度に反して見応えがありました。
お三方のファンの方、申し訳ございません。
「プルースト―失われた時を求めて」より"モレルとサン・ルー"
振付:ローラン・プティ
音楽:ガブリエル・フォーレ
ロベルト・ボッレ
マチュー・ガニオ
本プログラムの中では最たるバレエフェスならではの醍醐味といえた作品。
逞しい美丈夫なボッレのモレル、線の細い美男子ガニオのサン=ルー侯爵が見事なまでにぴたりと絵になり
2人が描く関係性に胸がときめいたかは横に置いても、見栄えやシルエットともに申し分ないキャスティングです。
「アー・ユー・アズ・ビッグ・アズ・ミー?」
振付:ロマン・ノヴィツキー
音楽:ハズマット・モディーン
レオニード・サラファーノフ
ダニール・シムキン
ダニエル・カマルゴ
国内では『バレエの王子様』で(相変わらず書くだけでも恥ずかしい公演名だ)披露され話題になったそうで今回初見。
3人の男性ダンサーが賑やかに走ったり縦横無尽に駆け回るかと思えば
身体を張っての掛け合いもあり陽気で明るい作品でした。王子様だけではいられず
暴れたい願望を常時募らせていそうな3人に相応しい振付で緩急のある展開もまた楽し。
テクニック盤石な点も存分に生かされ、ハメを外しかけていてもバレエからは外れていない匙加減も好印象でした。
可能ならばもう1回観たい。
「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス
ガラの大トリで緊張も襲っていたでしょうがそうとは微塵も感じさせず
手堅くも女王然とした風格でロホが引っ張りエルナンデスを支えていました。
長いバランスもバレエフェスのガラなら盛り上がり、古典らしくきっちり魅せながらもドリルフェッテは健在。
ヴァリエーションでは黒い日本の扇子を使用していたようでサービス精神たっぷり。
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「マルグリットとアルマン」より)
第5部 ーファニー・ガラー
※ひとまずざっくり書いて参ります。思い出した内容があれば随時足していくかもしれません。
前回ガラを観た2006年は『眠れる森の美女』アポテオーズ演奏途中に指揮者のケヴァルさんが演奏を中断し
振り向きざまに「ササキサーン What's up?」と叫ぶと佐々木さんが客席から登場し講話が始まる流れで
今回はいかにして始まるかと眺めていると演奏途中に高橋理事長が舞台幕から現れ、
ストップと訴えてこれ以後は録音演奏となるため東フィルの皆さんに次回も宜しくと語りかけつつ
お礼を伝え客席からも大拍手。全幕プロも入れたら連日の長時間
しかも作曲者もバラバラな曲の数々を演奏していたのですから賛辞に値です。
そして高橋さん曰く時間稼ぎのお話開始。幕の背後からわさわさと声が聞こえいよいよ第5部開幕です。
テーマは『眠れる森の美女』第3幕に珍客たちがやって来る世紀のどんちゃん騒ぎとのこと。
2006年はバレエコンサート形式で単発作品を次々に披露して行く演出であったため
出演者同士の繋がりが見えてくる幕仕立ての演出は嬉しく、期待が膨らみました。
3幕冒頭のポロネーズが流れると、珍客がぞろぞろ揃って足並みは貴族らしく登場です。
妙な格好をした方が大半しかも登場は皆歩き方は真面目に貴族調。舞台の両袖側に設置された椅子に皆腰掛け
役になりきったまた中央でのパフォーマンスを観客と同様に鑑賞態勢に入り、一体感が生まれて良い演出です。
この時点で客席笑いが絶え間なく続いていたのでした。
国王はアッツォーニだったか、扇の代わりにTOKYOと書かれた光沢団扇を手に美貌の王妃ガニオと登場。
伝令はオブジャニコフさん。超特急で変身なさったのか指揮者まで参加とは驚きです。
1組だけ本編で披露しても違和感ないペアがいて、アレクサンドロワとラントラートフ。
アレクサンドロワは黄色い膝丈のチュチュ、ラントラートフは黒い衣装で
バレエフェス期間中に金曜ロードショーでも放送されていた
宮崎駿さん監督で久石譲さん作曲の映画『ハウルの動く城』のテーマ曲。
ワルツ音楽でしんみりとした哀愁感がロシア民謡と似通っており、
アレクサンドロワたちの故郷の風土と合うのか実に気持ち良さそうに心をこめて踊っていて胸にじんと響きました。
作品名は「佐々木さんのために」だそうです。
続いては簡易ドアが出現。『ジゼル』登場音楽が流れる中、誰が出てくるのかと思ったらサラファーノフ。
なりきり度は勿論、アルブレヒトに会いたい気持ちが逸ってやや前のめりになりながら軽やかに登場する姿は職人芸。
古式ゆかしいジゼルそのもので、何処か遠い目をしながら幸せに浸る薄幸な少女らしい表現も上手すぎる。
(ノヴィコワがコーチをした?)
キャンディキャンディを彷彿させる金色の鬘と両脇のリボンも無理矢理感皆無でした。
アルブレヒトはまさかのアイシュヴァルト。本気のおふざけ企画も受け入れてやる気満々、
エレガントな立ち振る舞いに引き込まれ、立派な帽子を取るとカタラビュート用であろうハゲヅラが笑。
ジゼルに避けられても優雅に迫るちょっと悲しきアルブレヒトさんでした。
順序逆かもしれませんが、歌謡ショーや演歌のコンサートの如く客席から登場したのはエイマンの貴族?と
セーラームーンに扮したシムキンとホールバーグ。
シムキンは想定内でしたがホールバーグも日本のアニメ文化お好きなのだろうか。かなり楽しんでいる様子でした。
簡易テントから脚だけ覗かせ現れたのはバデネスのスパルタクスと
長い髪を気にするカマルゴのフリーギア。アダージオをしっとり!?踊って沸かせ
長靴を履いた猫のボーラックはそのままの可愛らしさ。
白い猫は大きな平たいキティちゃんの被り物をしたフォーゲル。
ボーラックとフォーゲルが組むのは恐らく初?妙に息は合っていて面白いペアでした。
コチェトコワの青い鳥と幕開け登場時には世界一巨大なレヴォツォフのフロリナ。(チュチュがパンパンだったが笑)
コチェトコワは黒子にサポートされながら青い鳥ヴァリエーションを浮遊感たっぷりに披露です。
セーラームーンたちはきちんとバレエも披露し、巨大なタンバリン?を手にするロホのバジルと共に
イチ、二、サンと掛け声を上げてドン・キホーテ1幕のパ・ド・トロワ。
セーラームーン世代としては笑い転げました。(ホールバーグにはヴィーナスの格好して欲しかったとも願望あり)
『白鳥の湖』より大きな白鳥の曲が聴こえるとラントラートフ、ボッレ、ボネッリがポワントで登場。
3人とも柔らかそしてデカ白鳥。(特にボッレ)羽ばたきも見事でした。
女性顔負けの美しさと色気で圧倒していたのはルーヴェのカルメン。
エルナンデスカルメンとの競演でしたが脚を180度上げての爪先立ちポーズも鮮やかさはルーヴェに軍配。
エルナンデスの奮闘も拍手喝采でした。デカルメンに寄りながら健気に頑張っていたのはヴァルテスのホセ。
大トリはジルベール王子とゴメスの黒鳥。噂には聞いていたがゴメスの熱のこもったパフォーマンスは
宴会部長と呼ぶべきかお祭り番長か。ゴツイながらも妖しさも備えフェッテもお手の物。勿論ポワントです。
開演から5時間半、気づけば時計は22時30分。大長丁場でしたがファニーガラが2006年よりも遥かに面白く
工夫を凝らした構成で笑いに笑って締め括りました。
さて、3年に1度のバレエフェスも大阪ドンキをもって終了。連日熱い舞台が繰り広げられていましたが
気になった点が1つ。ガラや全幕プログラムを除いて、AプロBプロ共に例年にないほど空席が目立っていた点です。
今年は天候不順で台風到来もありましたがそれを差し引いても多かったのは否めません。
私が鑑賞したBプロは土曜日祝日でしたが3階4階のサイドは物寂しく、全席種残席有り状態。
平日に至っては台風でない日であっても階数によってはサイド席がガラガラだったようです。
以前よりも上演日程が増え、チケット代は値上がりしたかどうかは分かりかねますが
客は入ると見込んだのかNBSも随分強気に組んだかと思っていたところ、
初日から空席の多さに友人はびっくりしたとのこと。嘗てのフェスではまず考えられない光景です。
バレエフェスは継続して開催するガラの先駆けで、実現に漕ぎ着けた佐々木さんの功績は
讃えても讃えきれないものでしょう。プリセツカヤやアロンソ、フォンティーンが同じ舞台しかも東京に集結するとは
夢のまた夢であったに違いありません。しかし昨今はガラ形式の公演は増える一方で
バレエフェスが確かにバレエ界における大きなお祭り行事に君臨はしていますが
今や日本のダンサー中心のガラも年に何度も開催されるようになりガラ自体珍しいものではなくなりました。
またスターが誕生しにくい情勢になったのも一因かもしれません。
以前、ソ連崩壊前や冷戦期は国をあげてスターを育て誕生させる気運が高かったでしょうし
ダンサーの移動もまだまだ困難な時代。手段が亡命しかない国もありました。
しかし現代では1つのバレエ団にこだわらず踊りたい作品があれば移籍を決断しやすくなり、
引き抜きもしばしば行われています。佐々木さん亡き後のNBSの力どうこうではなく
世界を席巻する圧倒的なスターが不在状態にあり、バレエフェスの格の維持が困難を極めているともいえます。
それから、バレエがメディアに取り上げられても鑑賞人口は決して増えているとは思えませんが
(時々突如コンクール入賞やらで騒いでいますが劇場に足を運ぶ観客増加には繋がっていないでしょう)
ただバレエ鑑賞愛好者の好みはより細かくなってきていると見受けます。
例えばバレエは基本幕物で観たい派で世界中からダンサーが集まっていようがガラは苦手で避けたがる方もいれば
日本のバレエを観ている方が面白いからそちらを優先し何もフェスまで観ようとは思わない方もいます。
また例えば英国系が好きだからバレエフェスよりも好みのダンサーや作品が凝縮している
ロイヤルエレガンスの夕べのような絞られた公演のほうが足を運びたくなるとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
バブル経済とはご無沙汰状態にある景気の中ではチケット代も高く感じられ
(29歳以下対象とした限定のコーセーシート企画は良かったと思うが)
世界中のダンサーを一挙に鑑賞できることが珍しかった時代を経て
好景気に湧いていた当時の写真を見ると記者会見含めて華やか。
当たり前のようにと言ったらかなり語弊がありますが次々とスターを呼んでは興行を成功を収めていたのも今は昔。
人々のお金の使い方、特に若年層は一層堅実になっている傾向があり娯楽の種類も増え続け
インターネットやスマートフォンも大普及。
世界で活躍するダンサーを呼べば観客が当然のように集まるかと言ったら現代は全くそうではありません。
バブル経済を歴史の教科書で学んだ者からすれば金銭が派手に飛び交う時代が日本にあった事実が
未だ信じ難い思いでおりますが、もう嘗てのような好景気は巡ってこないでしょうし
2年後東京五輪が開催されますが高度経済成長は前回の東京五輪で終えていますから五輪特需など恐らくはなく
むしろ開催後の心配事のほうが膨張しそうな気がしております。(加えて期間中の暑さもだが…)
あれやこれや書いて参りましたが道のり困難になる一方であってもバレエフェスは継続していただきたいと願っており
ダンサー、そして作品選び(これ重要)は以前にも増して慎重且つ観客の心の掴みが大事になってくると思われます。
出演者人数の調整力も問われ、プティパの古典全幕作品初演と思うほどの長時間上演も見直す必要もありそうです。
ファニーガラを含む5時間半を楽しみながらもフェス開催の意義を考えさせられた
第15回世界バレエフェスティバルでした。
開演は17時で終演は非常に遅く夕食を摂る時間もないであろうと予想し、
当ブログお馴染みムンタ先輩と平日ながらバレエフェスらしく、15時より上野駅近くの多国籍料理店で乾杯。
かなりの量にお感じになるかもしれませんが、開演すると食事する時間もなく
これぐらいの量でむしろ丁度良かったほど。
終演は22時半。そのまま新宿へ向かい夜行バスで大阪へ。
翌日は八尾プリズムホールにて佐々木美智子バレエ団『バフチサライの泉』を鑑賞です。
濃密でとことん熱いドラマを堪能し詳細は後日。東京大阪2日連続でササキバレエな2018年お盆でした。