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今年も疑問不満が噴出 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』 12月19日(土) 小野さん福岡さん五月女さん、22日(火) 米沢さんムンタギロフ奥田さん

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本日はクリスマス。良い子はサンタクロースからプレゼントをもらえたことと思います。
皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか。

さて、昨日に続いて本日もくるみ日和。本日は新国立の感想です。
ただバレエ団のファンですが、このプロダクションだけは何度観ても首を傾けずにいられず。
元来カレーや麻婆豆腐とは違い言葉の辛口は好まない性格であっても不満の噴出が止まりません。

注:ダンサーが原因ではありません。

これから初めてご覧になる方はお読みにならない方が良いかもしれません。

金平糖の小野さんは柔らかくふんわりとした輝きがあり、米沢さんはパワーを秘めた鮮やかな光を放ち、それぞれ好演。
王子の福岡さんは頼もしくて凛々しく、ムンタギロフさん(以下ムンタさん)は爽やかで優しげ。
クララの五月女さんは以前よりも踊りが滑らかになった印象、初挑戦の奥田さんは少し恥ずかしがり屋な少女。
温もりを感じさせるチャーミングなヒロインでした。
フリッツの髙橋さんは悪戯っ子ながらもほんわかのんびり系。
今シーズン入団の渡部さんは表現豊かで鮮烈。今後要注目ダンサーです。

コール・ドの秀逸さは健在。新国立の場合雪が細かく、遠くから見ると粉雪状。
またマリインスキーなどと異なり手には何も持たないため
時折指先をひらひらとさせる仕草もあり、大変繊細な印象を残します。
花のワルツも心地良い優雅さが漂い、春の訪れを思わせるパステルカラーもなかなか快し。

さて問題は演出。衝撃の初演から6年、今もなお疑問は沸き出るばかりです。
まず幕開け。現代の東京からの始まりはいかがなものかと思えてなりません。
例えば東京は東京でも、クリスマスマーケットで買い物する人々、
ツリーに飾り付けをする家族、といった品のある趣ならまだしも
男女関係の縺れやらラジカセを用いたブレイクダンス、携帯電話の使用は何度観ても寒々しい。
加えてこの作品は初演の2009年を残しておきたいのでしょうか。
2009年といえば鳩山政権が誕生した年で、以来世相も大きく変化しています。
今回こそ携帯電話がスマートフォンに変わるかと思いきや、初演と変わらずガラケーでした。
ガラケーを貫きたいのなら、「現代の東京」ではなく「2009年の東京」とでも設定するべきです。
また背景の都庁が目に入るとなかなか現実から離れず、前回2013年は猪瀬知事辞任ニュースでしたが
今回は2015年を大混乱させた東京オリンピック問題。
新国立競技場と新国立劇場、確かに響きは似ていますがそういう問題ではなく
幕が開いてもくるみの世界に入り込めません。中途半端な要素がとにかく多く、理解に苦しみます。

各国の踊りでは贅沢にも全て背景を変えていますが衣装も含めて殆んどが空回り。
スペインは薄暗い夕暮れで衣装も地味過ぎ、
古代エジプト史が好きな方は嬉しいかもしれないアラビアは興だけは豪華。
極め付けは葦の精で、何を意味して詰め込んだのかようわからんテクニック合戦には辟易。
感情の高ぶりをそのままステップにしたわけでもなく、背景は遠くから見ると葦というより冬虫夏草のようです。

またキャストについて。確かにムンタさんは今年の世界バレエフェスティバルに出演するなど
勢いに乗っている若いダンサーです。
しかしこのくるみのために呼ぶ意味はあったのか。
例えば2013年2月公演『ジゼル』のようなドラマ性のある作品で
ダリア・クリメントヴァとの極上のパートナーシップを魅せたならともかく、
演出はさておきさほど宣伝しなくても完売日が出るクリスマスの鉄板作品なのですから
バレエ団から誰かを抜擢、或いは1日だけの登板の奥村さん、井澤さん日を増やすなどして
場数を踏ませ、モチベーションアップを図った方が良かったのではと感じます。

以上、クリスマス当日には申し訳ないほど夢のない感想ですがこれらが正直な思いです。
来年はシンデレラまたは他版のくるみでありますように。


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チケットもぎり手前にはクリスマスマーケットやゲームなどお子様も大賑わい。大道芸人さんが迎えてくれました。

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サンタクロースへお手紙を出せます。

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羊さんがプレゼントを告知中。

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大きなクリスマスツリーに窓ガラス、そして東京都庁。どこかのくるみで目にした風景です。
クララの気分になれるか。我が家のラッコと小さなくるみ割り人形で実験。
ちなみにこのくるみ割り人形、中学時代の美術教諭にそっくり。


バレエから闘牛士の道へ転向した日本人 ドンキ当たり年だった2015年を振り返る

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クリスマスも過ぎ、周りを見渡すとお正月の準備が忙しなく進んでいます。
今年も残りわずか。この1年を振り返る記事やテレビ番組も多々目にする時期となりました。
月曜日には仕事納めを迎える方も大勢いらっしゃることでしょう。

総括はまた例年通り大晦日に行いますが、今年のバレエをざっと振り返ると『ドン・キホーテ』の当たり年だったように感じます。
世界バレエフェスティバル全幕プログラム、東京バレエ団、NBAバレエ団、Angel R、大分での首藤康之さん版、
田中千賀子バレエ団、清水洋子バレエスクール、ケイバレエスタジオ、板東ゆう子ジュニアバレエなど、とにかくドンキ年。
下半期だけで5回鑑賞いたしました。友人の中には、シルバーウィークに3日連続ドンキ全幕という強者も。
来年はゴールデンウィークに新国立劇場バレエ団が上演します。

ところで、バレエにおけるドンキの男性主人公は床屋の青年バジルですが、
バジルに匹敵するもう一人の魅力ある男性が主要な役として登場します。花形闘牛士エスパーダです。
登場した瞬間に舞台上、そして会場中の人々を魅了しなければならない重要な役どころ。
今年は福岡雄大さんのキレキレエスパーダ、福田紘也さんの笑いを誘った昭和の演歌歌手系流し目エスパーダ、
髪を撫でる仕草もさまになる山本隆之さんのスターオーラと男の色気全開エスパーダ、と
同じ役でありながらまるで個性が異なる3人のエスパーダを鑑賞する機会に恵まれました。

それぞれの素敵なエスパーダを観たことがきっかけで闘牛士についてあれこれ調べておりましたら、
スペインで活躍する日本人闘牛士の存在を知りました。
2009年に日本人初のノビジェロ・コン・ピカドール(満3歳牛の仕留め士)に昇格した濃野平(のうの たいら)さんです。
2012年に出版された濃野さんの著書『情熱の階段』が大変面白く、ご自身が闘牛士になるまでの道のりや
闘牛の歴史と現状など、詳しく綴られています。



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濃野さんは20代前半の頃にテレビで偶然見た闘牛に心を奪われ、1997年28歳にして
現地到着後もどこへ行くのか決めず、スペインに足を踏み入れなければ何も始まらないと奮い立てて出発。
並々ならぬ勇気の持ち主です。
若い頃から芸術分野に関心を持ち、10代の後半の数年間はクラシック・バレエに夢中でしたが
資質が足りないと悟り、何か打ち込めるものを探し求め悶々と過ごしていたとき闘牛に出会ってしまったそうです。
<芸術としての美があり、スポーツや格闘技的な興奮までもが味わえる、世にも類まれな舞台>と思ったとのこと。
バレエにも通じるものがあると感じ取ったのでしょう。
確かに、マントを手にした身のこなしはバレエにおいても舞台映えする動きです。

ただ、闘牛の問題点や現状、見世物として観客の前で牛の命を奪う批判を受けていることに対しても
濃野さんは真摯に向き合っています。
<スペイン闘牛は、現代人が顔をそむけたがるものを目の当たりにさせ、
突き詰めて考えたがらないことを強引に思い起こさせてしまう性質を持った見世物でもある>
<あらゆる生命の犠牲の上に生きていかねばならない人類の宿命というものを、
闘牛は真正面から私に突きつけてくる>と記しています。

バレエファン、特にドンキがお好きな方はがっかりなさるかもしれませんが
スペインでも闘牛愛好熱が極端に低い地域はバルセロナが位置するカタルーニャ州だそうです。
バルセロナといえば、言わずと知れたバレエ版ドンキの舞台となっている都市。
また先日まで開催されていたFIFAクラブワールドカップジャパン2015で圧倒的な強さを見せて優勝した
メッシ、ネイマール、スアレスを擁するサッカーチームもあり
未だ建設中のサグラダファミリア教会、海に面した食べ物もおいしい土地、と何かと華やかなイメージのある都市でしょう。
しかし2010年7月、カタルーニャ州自治体が2012年以降州内での闘牛廃止条例を賛成多数で可決。
名目は動物愛護ですがスペイン伝統文化である闘牛の否定を州の独自性主張に繋げるためとされています。
元々19世紀の頃よりスペインからの独立を目指し、
今年日本のバレエドンキが際立って集中していたシルバーウィークが終わり
NBAバレエ団がゆうぽうとホールの最後を締め括くるドンキが上演された9月下旬の同時期に行われた
カタルーニャ州議会選挙でも独立を掲げるグループが過半数を獲得。今後の動向に注目が集まっています。

関連記事
http://www.asahi.com/articles/ASH9X04DZH9WUHBI029.html

http://thepage.jp/detail/20151021-00000005-wordleaf


ドンキはプティパがスペイン旅行の際に現地の風土や陽気な雰囲気に魅せられて振り付けたと読みましたが
当時はまだまだ情報を得にくい時代。
スペインで触れた、様々な魅力ある要素をバレエに詰め込んでしまったのでしょう。
思えばドンキにはたくさんの民族舞踊が入っていますが、詳細を調べていないので定かではありませんが
バルセロナには馴染みの薄い舞踊も含まれているに違いありません。
仮にプティパが日本を旅行して文化の虜になり、『水戸黄門』を制作したとしましょう。(ありえませんが)
するときっと、舞台を築地あたりに設定して(江戸の当時は海に面した街だったはず。
市場に屋台や宿屋、物売り、今でいうカフェなどが軒を連ねる賑やかな街で、
プティパが思い描いたバルセロナに似通っている気もします)
黄門様と助さん格さんは脇役にして、主人公は道中に訪れた築地で出会った恋仲の若き男女。
悪代官や印籠が出てくるか否かはさておき、恐らくは花笠音頭からよさこい、阿波踊りなど
流れに沿っていれば問題なしとばかりに日本各地の舞踊をバレエに取り入れたてんこ盛りな演出になったことでしょう。
それはそれで面白そうあり、観てみたいものです。

話がだいぶ逸れてしまいましたが、濃野さんの著書は多角的な視点で綴られていて非常に読み応えがあります。
バレエ『ドン・キホーテ』がお好きな方、ご自身で舞台に立たれた方、闘牛に興味をお持ちの方、
夢があっても踏み出せずにいらっしゃる方、是非お読みください。





夢と恋に溺れたベルリオーズの危うい人生 バレエ団ピッコロ 松崎すみ子バレエ公演『幻覚のメリーゴーランド』 12月23日(水)

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12月23日(水)、池袋の東京芸術劇場にてバレエ団ピッコロ松崎すみ子さん振付『幻覚のメリーゴーランド』を観て参りました。
http://www.piccolo-1961.com/

フェイスブックブログにリハーサル写真が多数掲載されています。


メリーゴーランドを眺めながら頭を抱えてわなわな震えているのであろうか、とっつきいにくい神妙なあらすじなど
強烈なタイトルを目にしたときからどんな作品であろうかとあれこれ思い浮かべておりましたが
ベルリオーズの半生を下敷きに描いた、山本隆之さんほぼ1人舞台な公演。予想に反して興奮と感激を覚えた作品でした。

主人公の作曲家を志す青年は山本隆之さん。いつも以上にお若く見え、夢を追い求める青年そのものでした。
楽譜を手に軽やかな足取りで作曲に勤しんだり、雑踏の中で通行人にぶつかりながらも熱心に女優を探している姿は
夢見がちでありながらも女優への偽りのない恋心が覗き見えて見守りたくなります。
幻覚に苛まれて負のスパイラルに陥り悲痛な叫びが聞こえてきそうなほどの絶望に瀕していく過程は
凄まじい狂気や鬼気迫る表情に震えが止まらず。
ジェットコースターの如く感情の起伏が激しい人物像を見事までに体現され、胸にずしりと響くものがありました。
ほぼ全ての場面で登場していらっしゃいましたが、迫りくるような重たい場面も多々あり。
ただやみくもに頭を抱えたり倒れるだけでは何も伝わらず、相当な演技力が必要とされる難しい役柄ですが
作品を引っ張る力をお持ちであると再確認。また虚ろな目で倒れこんでも美しさを失わないのは流石です。

青年の友人は佐々木大さん。作曲家を志す青年とは正反対な、要領が良く少々ずる賢さをも備えた人物です。
ようやく青年が憧れの女優を見つけて目が合い、近づこうとするとすかさず先回りしてちゃっかり女優と戯れてしまうなど
本当に友人かどうかも怪しいほど。なかなか憎たらしい役どころでした。

下村由理恵さん演じる憧れの女優はスターらしい華麗さと
ファンの青年にも少女のような柔らかな笑みで接する優しさの両方を持ち、青年が首ったけになるのも納得。

音楽の精の西田佑子さんは慈しみや気品に溢れ、指揮棒のような棒を手にアラベスクをするポーズは溜息が毀れます。
優美な雰囲気を醸し、体重を感じさせない浮遊感を出しつつも妖精たちを統率する風格をも持ち合わせ
自然と心が洗われました。
中でも母性を感じさせる清らかな笑みを湛えて棒を持った右手を上に掲げ、
片脚つま先立ちでポーズを取った西田さんの左手を山本さんが片手で力強く握り締め
立膝の状態で仰け反りながら支えるフォルムは音楽の精の導きによって青年の夢見る心が昇華したかのような極限の美しさ。
いつまでも観続けていたい光景でした。

驚いたのは篠原聖一さんのあざ笑う死神。全身白銀の衣裳に身を包み、髪の毛も白っぽく整えて
ゴージャスな歌手であるかのような格好で突然踊り出します。
(当時幼かったため記憶にありませんが、歴史の教科書やテレビの懐かしの歌謡曲集などの映像で見る
バブル時代といったイメージです)
かなり唐突な展開で一瞬呆気にとられますが、それは青年も同様。
口を半開きにして事態を飲み込めず、ぽかんとした顔で死神を見つめることで精一杯な様子は
観客の気持ちをも示していると見て取れます。

音楽はベルリオーズの代表作品『幻想交響曲』を中心にシューベルトやその他現代の曲も絡み、
ゆったり心地良く儚げな旋律が流れているかと思えば突如衝撃音のようなずしんと響く音楽も入って
青年の不安定な性格をそのまま表しているような選曲でした。

尚、この交響曲の成り立ちにベルリオーズ自身の恋愛体験があるとのこと。
1827年パリのオデオン座で上演された当時知識人の間で人気が高まっていたシェイクスピア劇に出演していた
アイルランド出身の女優ハリエット・スミッソンに恋い焦がれ近づこうとしますが失敗。
その後の恋愛も上手くいかず、ときには他殺と自殺を考え苦悩続きな危うい人生を歩んでいたようです。
(ただ、のちにスミッソンとは結婚までに至ったそうですが
結婚生活は順風満帆だったかどうかはまだ読み進めていないため分からず)

『幻想交響曲』といえば新国立劇場バレエ団で上演された牧阿佐美さん振付『椿姫』の曲としてもお馴染みで
冒頭から流れる点も、詩人アルマンと作曲家を志す青年の性格が優しく繊細である点も共通。
しばらくは2作品が脳内同時再生されていたのは致し方ないながらも不思議な幸福感を覚えました。

松崎さんの幕物の作品は『マッチ売りの少女』に続いて2回目の鑑賞ですが
今回もクラシカルな音楽、振付を基盤にしつつも現代の音楽をすっと溶け込ませ、その加減が絶妙。
元々は父の意向で医学を志し豊かな教養を身につけていたベルリオーズが作曲家への夢を諦めきれず
音楽に邁進するものの強すぎる感受性が原因で度々問題を引き起こしては茫然自失になっていく人生が
色濃く描き出されていました。
再演時も同じキャストで鑑賞できることを願います。




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12月中に出かけた先で遭遇したメリーゴーランド。その1東京ドームシティ。水に浮かび上がっているように見えて幻想的。

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その2。汐留駅にて。レトロで可愛らしいデザイン。

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終演後は会場1階のベルギービールを多数取り揃えたカフェにて「幻覚」ビール。

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メニューに詳しい説明書き。幻覚には溺れませんでしたがその日、『くるみ割り人形』のクララに負けぬ
素敵な夢を見たため満足。(それは違うか)

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ベルリオーズ関連の書籍を図書館で借り、まだ全部は読んでいないもののかなりの夢見がちな男性だった様子。
今回のピッコロの舞台鑑賞後、そして本を読んだ後に牧さん版『椿姫』を思い出すと、
幻想交響曲が流れる1幕冒頭はマルグリットではなくどちらかといえばアルマンの心情を奏でていたように今は感じます。



クリスマスの大阪を彩る深川さんの美的感覚とガチョーク 川上恵子バレエスクール発表会 12月25日(金) 《大阪府吹田市》

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12月25日(金)、大阪の吹田メイシアターにて川上恵子バレエスクール発表会を観て参りました。
2年連続、クリスマス当日は大阪での鑑賞です。

第一部と第二部は小品・バレエコンサート集。子供の生徒さんも大活躍です。
こういった発表会ならではのプログラムも実は楽しみの1つ。以前にも書きましたが
子供向けの小品は昔も今もさほど変わっておらず、子供の頃に通っていた教室の発表会や勉強会で自身や友人が踊った曲が複数曲出てきて懐かしさが込み上げてくるためです。
カバレフスキーの組曲『道化師』よりガヴォット、ボルディーニの『踊る人形』、アンダーソンの『シンコペーティッドクロック』など
今回もお馴染みの曲が勢揃い。
親しみのある音楽に乗って私よりも何万何億倍も可愛らしい生徒さんたちの踊りを観るとほっこり幸せに包まれます。
また踊る生徒さんたちをイメージして先生が独自に考えられた原曲とは異なるタイトルであることも多く、
思わずなるほどと納得してしまうときもあり。
例えば『踊る人形』が『小さなバレリーナ』、『シンコペーティッドクロック』が『おもちゃの時計』となっていて
より微笑ましい印象が刻まれました。

第一部の最後は『ライモンダ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ。平林万里さん、アンドレイ・クードリャさんを中心に
ソリストも加わってグラン・パ・クラシックが繰り広げられます。
スレンダーな平林さんはクラシックチュチュ姿が舞台映えし、登場されると会場に華やぎを与えていらっしゃいました。

そしてトリプルビルや発表会などで『ライモンダ』のグラン・パ・クラシックを上演する際の楽しみがヴァリエーションの選曲。
今年1月の青山バレエフェスティバルで西田佑子さんと横関雄一郎さんが主演した西島数博さん版、
8月の小林紀子バレエシアターでのミックスプログラムのように通常の3幕以外からの抜粋も珍しくありませんが
違和感がなく、むしろ毎回新鮮。この曲で来たか!としばしば唸っております。
川上バレエ版は第1幕夢の場の第2、第2幕クレメンス、ヘンリエット、第3幕女性ソロ(カエル跳びが印象深い振付)、
パ・ド・トロワ(三角形のフォーメーション)。順不同且つ抜けがあるかもしれませんが悪しからず。
中でも夢の場第2ヴァリエーションのところを踊られた方が
ポーズの1つ1つがクリアでどの部分を切り取っても美しく、気品もあって惚れ惚れいたしました。

最たる目玉は板東ゆう子さんと山本隆之さんの『ガチョーク讃歌』より詩人。
11月の愛媛に引き続いての作品ですが、何度観ても滑らかでしっとりとした美しさ、漂う大人の色気にうっとり。
またただ綺麗なだけでなく、お2人から滲み出る優しさ、あたたかみに包まれて心が浄化されていきました。
何度でも観たい作品で、これからも踊り続けていただきたいと願うばかりです。

第三部は深川秀夫さん振付『眠れる森の美女』よりオーロラ姫の結婚。1幕と3幕の見せ場を結婚式に凝縮した豪華な場面です。
深川さんの古典改訂には毎回驚かされますが、昨年のくるみと同様洗練された美意識に感動を覚えました。
特に面白かったのは通常1幕で16歳になったオーロラ姫が登場する前に村人たちによって踊られる花のワルツを
姫と王子のグラン・パ・ド・ドゥの前座に持ってきて、リラの精を筆頭にした6人の妖精やパ・ド・サンク(宝石)、
そして宮廷の人々が一緒に踊る構成になっていた点です。
村人たちが花を手に踊るためどこか牧歌的な要素が含まれる印象の強い場面ですが
主軸をリラの精が踊り、周りを妖精たちと宮廷の人々が固めるといたく煌びやかで絢爛。
曲も違和感がなく結婚式の祝福感を更に高める効果をもたらしていました。

そして衣裳のセンスがとても良く、6人の妖精たちは膝丈のふんわりとしたチュチュで
色合いが微妙に異なる布を重ね合わせたデザイン。動くたびにふわっと舞い、妖精の軽やかさを引き立てていました。
パ・ド・サンクは締まりのある濃い色に金色の装飾が重ねられ、シックでありながらもきらりとした輝きがあり
花のワルツで全員が並ぶと壮観。とにかくお洒落で洗練されたセンスに感激した次第です。
板東さんの猫も可愛らしく、一瞬音楽が止んで静かになったときに
頭をぶるぶると振る仕草があまりに色っぽく、会場が沸きました。

フィナーレはクリスマスらしくサービス精神と楽しさ一杯。
子供の生徒さんたちが一斉に客席に下りてお菓子を配布。本当に可愛らしい光景です。
その後舞台の上からは花束投げがあり、私の右隣りにいらした方々も受け取ろうと猛アピール。
この姿勢、見習いたいと思います。

今年はこの日でバレエ鑑賞おさめ。2年前と同じくクリスマス当日を大阪でバレエとともに迎え、幸せな締め括りとなりました。
2015年も素晴らしい舞台の数々に感謝。総括は大晦日に行います。



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フクロウクッキーと刻み生姜たっぷりのジンジャエール。
生姜といえばバレエに絡んで少々恥ずかしいエピソードがあり。詳しくは次回。




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鑑賞前には梅田のフクロウコーヒーへ。野間バレエのくるみ割りの時計を始め、バレエでも何かと馴染みのある生き物です。
日本では福を呼ぶなど縁起の良さで知られていますが欧州では恐怖の象徴であるなど
国によって異なる捉え方についてあれこれ店員さんと語り、楽しいひとときでした。フクちゃんはお昼寝中。




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大阪港駅近くのたこやき店にて。ラッコは海遊館のお土産屋さんだけに行き、
自身へのクリスマスプレゼントとして購入。また増えてしまった。
教えていただいたネパール料理店に行こうとしたが、残念ながらランチ終了。次回こそは訪問。




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終演後は昨年と同じく梅田スカイビルのクリスマスマーケットへ。足を踏み入れると幸運にもまたもやメリーゴーランドに遭遇。




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ドイツのグリューワイン(ホットワイン)で乾杯。ノンアルコールもあり、
お酒が飲めなくても雰囲気を味わいたい方に好評だったようです。
夜は急激に冷え込んだために温かな飲み物は嬉しく、ついついお茶感覚で飲み干しそうに。
カップはプラスチック製で持ち帰りも安心。
この日は平日のため近隣勤務者のグループも多く見かけ、なかなか和やか。
ビールやソーセージでドイツ酒場のように乾杯している方々も。ダンケシェーン!




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バレエの会場では思いがけずお菓子のプレゼントをたくさんいただき、感激。




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マトリョーシカマーケットと巨大なツリー。
この近くにシュークリームかドーナッツのようなお菓子を売るお店があり、
中の厨房がガラス張りで外から見える構造でしたが現地から来日した男性の菓子職人さんが
女性たちから尋常でない人気ぶり。私は素通り、、、。




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2日前に鑑賞した『幻覚のメリーゴーランド』を思い出しながらの白馬。
ところでメリーゴーランドを眺めていると幻覚作用は生じるのか。
回転するメリーゴーランドを眼前にホットワインを飲みつつ(カップを片手に少しずつ飲みながら散策していた)実験。
結果、幻覚とまではいかずともアルコール成分によるほろ酔い気分に
響き渡る心地良いワルツに乗って程よい速度での回転、夜に映える煌びやかな電光装飾や
あちこちに描かれた植物模様、寓話風の絵画が視界が加わって、不思議なスパイラルに陥っていきます。
気持ち良くふわっと浮遊感が募り、あたかも馬に乗ったかのような気分に。
『幻覚のメリーゴーランド』は大いに有り得る状態であることが分かりました。ガッテン!

このあと、夜行バスで一度も起きず熟睡。『眠れる森の美女』とは異なり王子様の口づけではなく
運転手さんの東京到着の声で目覚めたのでした。




酒とバレエと言葉と品格

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年末のため、奇妙なタイトル及び支離滅裂な展開をお許しください。

本日はレコード大賞授賞式。会場が新国立劇場である点にも惹かれて
放送をご覧になっていた方もいらっしゃることと思います。
舞台からの客席の見え方が毎回面白く、公演の際にはダンサーの目にも
観客の表情が入ってきているのだろうかなどあれこれ想像。歌手の皆様そっちのけで楽しんでおりました。
それにしても今回も大賞候補曲はどれも殆んど分からず。いつにも増して時代に置いていかれる管理人でございます。

ところで若い世代の方は恐らく馴染みは薄いと思いますが、
河島英五さんの『酒と泪と男と女』という曲をご存じでしょうか。
河島さんは1952年東大阪市生まれ。1976年に発売された『酒と…』は
京都の清酒メーカーのテレビコマーシャルに起用され大流行。河島さんの代表曲となりました。
2001年、48歳の若さで急逝。当時高校の担任の先生がこの曲がお好きで、
大人の心を見事に表現しているから歌詞だけでも読んでみてほしいと仰っていたことを覚えております。

さて本題。皆様はお酒はお飲みになりますか?お好きであるとしても飲酒量や好みの種類は人それぞれで、
嗜む程度の方もいれば豪快にいくのが気持ち良いとお感じになる方、
ビールは苦手だがワインは好き、或いは弱いためカクテルを中心にお選びになる方もいらっしゃるでしょう。
当ブログについて時々メインはバレエかお酒か分からなくなるとのご指摘を受けておりますが確かにその通り。
記事によっては「アルコールバレエ日和」状態になっております。
強いか弱いかと聞かれば、しばしば東北や九州出身と疑われ
前世はロシア(旧ソ連)の労働者、と思われているようですのでご想像にお任せいたします。

ただお酒というのは気持ち良くなったり心が解放されたりと良い効果が多くある一方、
ついつい饒舌になったり知らず知らずのうちに失言、粗相に繋がってしまう危険性もあり。慎重な付き合いが求められます。
今月中旬とある忘年会に参加したときのこと。美味しい小籠包を目の前にして紹興酒の熱燗をいただいたのですが
深い味わいがあり大変気に入ったものの色合いといいお猪口の大きさといい段々と烏龍茶に見え
空腹状態や話が弾んでいたことも影響してついつい進んでしまい、、、。
ちょうど小籠包を食べ終わった頃になって小皿に盛られていた刻み生姜の存在に皆が気づいて
食べ忘れた、と話題になっていたときのこと。
目上の方がいらっしゃるにも関わらず一言ぽつり、「しょうがない」。
言ったような言っていないような、いや言ってしまった。
『ジゼル』のアルブレヒトと同様後悔しても時として遅く、いくらお酒が狂乱するジゼルの心の如く
ぐるぐると回っていたとはいえ立場や場所を考えねばと猛省。
その場にいらした皆様が優しく寛大なお人柄であることがせめてもの救いでした。どうか忘れてくださっていることを祈ります。
まあ、これといって印象に残る言葉を呟いたわけではありませんから忘れていらっしゃるでしょう。(きっと)

くだらない内容しか思い浮かばぬ私と大違いで、レッスンでお世話になっている先生はご指導中に数々の名言を残され
品格の備わった人間性に毎回手を合わせたい思いでおります。シンプルですが、そうかと唸らせる言葉ばかりです。
レッスンの記録を付けるようにしており、その日のバーとセンターの内容、伴奏してくださった曲、
注意いただいた点及び名言を綴っておりますが、齋藤孝さんも驚くまさに「声に出して読みたい日本語」
(レッスンの場合バレエ用語を始め日本語でない言葉も含まれますが)が散りばめられています。
その割には私の進歩がないのは悪しからず。

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記録帳。バレエショップでもレッスンノートなるものが販売されていますが
乙女度の高いデザインのため購入に至らず。杉並区阿佐ヶ谷のロシア雑貨店で購入したノートを使用しております。
これまでの分を集めれば、毎日は難しくとも今年売り上げがジャニーズを上回った
元テニスプレーヤーで現在は熱き解説者として活躍中の方が手がけたようなカレンダー作成は十分可能そうです。
※ノートの後ろは気に入っているウェア。似合っているか否かは別として
フロッキーチュール生地の植物模様が美しく、着心地も良し。



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このウイスキーの名前のように、そして拝見して来年で12年目に入るかのダンサーの舞台のように
読んでくださった方の心を響かせる記事を目標にこれからも続けて参りたいと思っております。
話が飛び飛びになりましたが、これからお正月や新年会に向けて飲酒量が増える時期がまだまだ続きます。
私が申し上げても説得力に欠けますが、どうか飲み過ぎにはご注意ください。




2015年バレエ総括

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2015年も本日で終わり。昨年に比べると鑑賞回数は減ったものの多くの素晴らしい舞台に出会えました。
問題が来年にも持ち越されたエンブレムや響きは似ていても競技場と異なり順調に公演を続けている
新国立劇場バレエ団を始め、素敵な舞台の数々に感謝。
公演によっては空席が目立ち、そんなときチケットの爆買いをしてくれる人が
出てこないかなとふと頭をよぎったりもいたしました。
動画サイトが普及して生の舞台の醍醐味を味わいにくい時代になり、バレエ公演のシネマによる公開も急増。
ドローン技術を駆使しての映像拡散も、近い将来有り得るかもしれません。

さてラグビー日本代表が史上最大の番狂わせと言わせる活躍が話題になり
小さな子供から大人まで、五郎丸選手のポーズを真似る人が続出しましたが
スポーツと同様常に生の舞台で勝負をしているダンサーの方々の集中力の高さには永久に頭が上がることはないでしょう。
しかも明確な点数がつかない芸術の世界で生きていくことがどんなに過酷であるか
その凄まじさには改めて圧倒される思いです。

数日前にも書きましたが今年はとにかくドンキ祭りな年で全幕では5回鑑賞いたしました。
スペインを舞台にキトリとバジルの笑いあり、美しさあり、情熱溢れる楽しい恋物語ですが
見せ場の1つ、バジルとエスパーダの火花の散らし合いも忘れられません。
5回中3回は今年2度の世界最高得点を更新したフィギュアスケート羽生結弦選手の如くエスパーダの圧勝でしたが。

ところで昨年は松岡修造さんのカレンダーのように「毎日更新」を掲げていた当ブログ、今年は更新頻度がだいぶ落ちて
何人かの方に今後も続けていくのかとご心配の声もいただきました。
でも安心してください。来年も続けますよ!

前置きが長くなりましたので北陸新幹線のように速度を上げて参ります。そんなこんなで今年の鑑賞を総括です。
今年のトリプルスリー、ではなくトップスリーは篠原聖一さん振付の3本でございます。

※時々テレビ番組の観覧へ行くのですが、実はとにかく明るい安村さんをこの目で見ております。
本当にあの姿で登場され、安心してくださいネタも10本くらい披露されました。
当時は全く存じ上げず、まさか流行語大賞候補にまで上り詰めるとは知る由もありませんでした。

※昨年と同じく、大晦日だけは飲みながら書いております。
大急ぎで行ったためまとまりがガタガタですがご了承ください。
また今年は鑑賞地でいただいたアルコール写真も掲載いたします。



新国立劇場バレエ団 Dance to the Future ~Third Steps~ NBJ Choreographic Group
新国立のダンサー自身が振付作品を発表する恒例の面白い舞台。
特に宝満さんの『はなわらう』、髙橋さんの『The Lost Two in Desert』が印象に残りました。
平山素子さんのソロを小野さん、本島さんが踊ったことも収穫。
繊細に壊れて行く小野さん、大胆に鮮やかに表現する本島さん、それぞれ異なる味わいを堪能できました。


AOYAMA BALLET FESTIVAL -LAST SHOW- 1月30日(金)
バレエ、ミュージカルなど数々の公演で愛されてきた青山劇場閉館に伴い開催。
若手から青山バレエフェス初期から出演しているベテランまで錚々たる顔ぶれが集結。
中でも2012年に大阪で観客を大爆笑に誘った矢上恵子先生振付のPDAによる『組曲PQ』は最初こそ大人しかった客席が徐々に熱を帯び、後半は要所要所で笑い炸裂。
大阪公演を鑑賞していた身としては嬉しいと同時に関東と関西の文化の違いを再確認。


YUJI SATO BALLET FESTA4 1月31日(土) 
山本隆之さんによる矢上恵子先生振付『Bourbier』は神々しいまでの美しさ。
カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲はこうにも心を揺り動かす旋律であるのかと
昨年のKチェンバー公演に引き続き鑑賞でき感激を覚えました。


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帰りは会場最寄り駅の都立大学駅近くに佇むワインバーVIOLAにて。
オペラの舞台に因んで南イタリアのグラス赤ワインを。
(ボトルは店長さんが飾ってくださっただけで丸々1本は飲んでおりません。念のため・・・)


東京バレエ団マラーホフ版『眠れる森の美女』 2月8日(日) 川島さん/岸本さん 
友人一押しの岸本秀雄さんが待望の主役デビュー。まだ少しあどけなさがありながらも爽やかで端正な王子を好演。
川島さんの晴れやかなお姉さん風のオーロラもお似合い。
ブルメイステル版の白鳥も行きたいが、新国立のラ・シルフィードと重なってしまっている…。


新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』 2月17日(火)~22日(日)
ファーストキャスト公演では小野さんニキヤVS米沢さんガムザッティの対決が実現。
火花散らし合う壮絶な女の戦いでございました。ムンタさんソロルはやや押され気味。


新国立劇場バレエ団 トリプル・ビル『テーマとヴァリエーション』『ドゥエンデ』『トロイ・ゲーム』
念願の新国立による『テーマ…』鑑賞。めくるめく振付、流麗で煌びやかなチャイコフスキーの音楽、精緻な群舞、とバレエ団のカラーに合った演目であると感じました。
2000年に初台でこの演目をご覧になった方がああ羨ましい。
スター誕生の瞬間に立ち会えたのですから…。
『ドゥエンデ』は2008年ワシントンの観客を大沸騰させたことが思い起こされますが
神秘的で滑らかな音楽に乗って座敷童たちがユニークなポーズを繰り出していき何度観ても心地良い気分になる作品。
トロイゲームはリハーサル写真を見る限り心配だった新国立男子が意外にも逞しさを増していた。


NHKバレエの饗宴2015
前年に比べると出演団体は減ったものの批判が集中した衣裳のセンスも忘れ去るほど
絢爛さと隙のない技術でトリを飾った新国立の『眠れる森の美女』3幕、
下村さん、山本さん、森田さんのベテラン勢が圧巻だった篠原聖一さん振付『カルメン』は強烈な印象。

そして後日のテレビ放送、『カルメン』でホセがスニガに上着を脱がされていく箇所や
カルメンとの寝室場面でのドアップ連続に管理人、失神(笑)。
ちなみに芝居とバレエ両方観ているかのよう、残虐な場面やエロティックな場面も
美しく成り立たせてしまうバレエの奥深さに『カルメン』は職場の先輩にも好評でした。

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帰りはスペイン料理店で乾杯。その名も「ドン・ホセ」。


第14回星のバレエ・カーニバル 4月12日(日) 《京都》

京都版・ひょっとしたら世界バレエフェスティバルより楽しいかもしれない舞台。
毎度豪華な出演者が集いながら入場無料でございます。
お花見とセットで楽しめる京都の旅は格別です。

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新国立劇場バレエ団『こうもり』 4月22日(火)~26日(日)

福岡さんが前代未聞!?公演期間中にヨハンとウルリックを兼任。
ノリノリ且つベラに深い愛情を示して幸せへと導いていたウルリック、
退団する湯川さんのパートナーを務めるに相応しい大人の男性の風格を
匂わせたヨハン、どちらも素晴らしかったのでした。
奥様度がぐっと増した小野さん、初挑戦ながらサザエさん風ホームドラマなお茶目な雰囲気と
後半では色っぽさを醸していた米沢さん、頼れる華やか姉さん女房な本島さん、
そして奇しくも初主演時と同じ演目、役柄で退団することとなった湯川さんの渾身のベラ、
連日濃い舞台が繰り広げられました。
マキシムへ行ったら、店長がマイレンさんでなきゃ嫌だと思った観客も多いはず。

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プログラムを開くと、、、世界屈指のヨハン。木苺のカクテルと一緒に夜景をバックに撮影。


英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団 ビントレー版『シンデレラ』

英国バレエ名物・可愛らしくもタキシードなどを着こなすお洒落な着ぐるみたちがたくさん登場。
ゆるキャラ大国である日本の観客は大いに喜んだはずです。
星の精たちが描き出す八の字のフォーメーションも上階から眺めると引き込まれていきそうでした。


モスクワ音楽劇場バレエ団『エスメラルダ』 5月21日(水) ソーモワ/スミレフスキー/キリーロフ

バレエ団に関心を抱いてから早20年。念願の鑑賞でした。8月上演の佐々木美智子バレエ団『ノートルダム・ド・パリ』の勉強も兼ねて足を運びましたがダンサーの表現力、身体能力双方が高く瞬く間の3時間。
ステンドグラスが描かれた大幕、堅固で写実的な装置、中世パリ街並みの鳥瞰図など舞台の世界に迷い込まずにはいられません。
十八番として誇りを持って上演を重ね続けていることが伝わりました。
平日3回公演でうち2回が昼公演だったのは未だ謎。



モスクワ音楽劇場バレエ団『白鳥の湖』 5月23日(土)夜 ミキルチチェワ/スミレフスキ

待望の生、そして本家のブルメイステル。緻密に練り上げられた演出は噂に聞いていた以上に面白く、中でも民族舞踊のダンサーたちがロットバルトの手下として全員で王子を追い詰めて行く3幕は鳥肌ものでした。



新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』 6月10日(木)14日(日) 米沢さん&ムンタギロフ/長田さん&奥村さん

新国立の群舞はいつ観ても整然とした美があり、いつでも安心。
ゲネプロ時のムンタさんの髪型が不思議な七三分けでした。

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今回は賛助会員の方よりお声かけいただき、鑑賞することができました。
初めて手にした水色のチケット。アトレ会員抽選招待とは異なり、飲み物のクーポン付き。(羨ましい)



アリオスバレエシアター2015 下村由理恵バレエ・リサイタル『オーケストラのためのポエム』『The Fisherman and his Soul』 6月20日(土)21日(日)《福島県いわき市》 
 

『オーケストラのためのポエム』は古き良きアメリカを思わせる明るくポップな作品。
『The Fisherman...』は滑らかに揺らめき漁夫に興味津々な下村さんの人魚、
人魚への愛と魂どちらをとるか苦悩して悶える山本さんの漁夫には感涙寸前。

原作を読むと、例えば人魚と漁夫の出会いでは
<漁師の手が触れると、人魚は鴎がびっくりしたような叫び声をあげて、目をさまし、
藤色の紫水晶のような目で、おそるおそる漁師を見つめ、
身をもがいて逃げようとしました。けれども漁師は人魚をしっかり抱きしめて、いっかな放そうとしませんでした>

人魚が網に引っ掛かったときの漁夫の姿について
<全力をふりしぼって、荒網をひっぱりましたので、
青銅の花瓶のエナメルの線みたいに、長い血管が両腕に盛り上がってきました>といった
それぞれのキャラクターの描写が下村さんと山本さんにぴたりと当てはまり、行きの常磐線車中で既にニンマリ。
天国のオスカー・ワイルドもさぞ喜んだことでしょう。

それから最前列席は舞台まで1mもなく、冒頭で漁夫が舞台前方向へ向かって大網を投げて漁をする箇所では
私に引っかからないかと要らぬ心配。(掛かって引き上げたとしても、網、破れるねん)

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幻想的な海世界の余韻に浸ったままホテルに戻り、その後一杯飲みに。お店はその名も「漁夫」。
舞台で拝見した、腕力が強そうで巨大な魚をも容易に引き上げそうな漁師さんが水揚げした魚を味わえる、
わけではありませんが地元の方々で賑わい、1人でも気兼ねなく入れる居心地の良いお店でした。

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今回の楽しみの1つ、福島の銘酒を利き酒で堪能。
(記念撮影用にお店の方が持って来てくださっただけで、瓶3本分を飲み干したのではありません)
相当な酒好きであるとお感じになったのか、福島のお酒関連のパンフレットや写真集を見せてくださるなど
素敵な時間を過ごすことができました。



新国立劇場バレエ団こどものためのバレエ劇場『シンデレラ』 7月25日(土) 小野さん/福岡さん

子供向けとはいえポイントとなる箇所は省略せず。本島さんが華麗なる姉、
堀口さんが能天気でお茶目な妹を爆演。新国立のお姉さん方が魅せました!
この日は気温が35度以上あり、青を基調とした背景や星の精たちの白と水色の衣裳は納涼に嬉しい色彩。


MRBバレエスーパーガラ2015 8月2日(日) 《大阪》

3年ぶりのスーパーガラ。野間さんと山本さんの幕物を観ているかのような椿姫、
前田さんと恵谷さんの可愛らしく軽快なゼンツァーノが特に印象深く刻まれました。

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『椿姫』を主たる目的で足を運んだため、グランキューブから1駅の渡辺橋駅近くにあるDUMASにて白ワインで乾杯。
店内にはデュマ(父親のほう)の絵が飾られています。

Mrb
帰りの新幹線にて酒盛り、水代わりの赤ワイン。(健康のためにも皆様は真似なさらずに)


田中千賀子バレエ団『ドン・キホーテ』 8月9日(日) 《福岡市》
8年ぶりの福岡での鑑賞。そして下半期のドンキ祭りの始まりです。
田中さんの女性らしい柔らかさのあるキトリ、佐々木さんの弾けるバジル、
ついに初見・山本さんの色男なエスパーダ&ボレロ、武藤さんの美少年風ガマーシュと見所盛りだくさん。
田中バレエは初めての鑑賞でしたが踊り方がとても優雅で上品。
田中ルリさんや中村祥子さんのインタビューで読んだ千賀子先生の指導がしっかり行き渡っていると見受けました。
このあと我がドンキ前線は徳島、大阪、東京都世田谷区と北上し最後は一気に愛媛へ南下です。

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博多といえば屋台でラーメン!中洲にて、中瓶ビールで乾杯!

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2軒目。(まだ呑むんかい)焼きラーメンと日本酒。極楽極楽。
日曜定休の屋台が多いと聞いていましたが、結構な数が並んでいました。

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夢から、ではなくやや2日酔いな状態から覚めて空港へ行き朝食を。
(朝からビール・・・。この週はお盆休みだから良いのだと言い聞かせ、いただきます)
柚子の効いた冷やし唐揚げとあんぱん、美味しうございました。



世界バレエフェスティバルBプログラム 8月11日(火)
 

9年ぶりのバレエフェス。前回はABプログラム2回ずつに全幕プロ4回とガラ、とほぼ通しての鑑賞でしたが
翌年以降夏場は特に全国各地に出向き始め、遠ざかっておりました。
ところが今年8月に入ってから演目を眺めているうちに行きたい思いが募って
アレクサンドロワのキトリとやロパートキナのライモンダが含まれているBプロを直前に選択。
アイシュヴァルトの椿姫にも魅せられ、大変楽しいお祭りでした。
次々とスターが登場し、目はついていけても心がなかなか追いつかず。



小林紀子バレエシアター ミックスプログラム 『ソワレ・ミュージカル』『グローリア』『RAYMONDA ACTⅢ』8月21日(金)

おもちゃ箱を開けたかのように楽しく陽気に次々とダンサーが踊っていく『ソワレ・ミュージカル』、
戦争によって青春を奪われた男女を描いた『グローリア』、
シックなゴールドに彩られた『RAYMONDA ACTⅢ』、充実の3本でした。


清水洋子バレエスクール『バレエ・コンサート』、『海賊』よりハイライト、『ドン・キホーテ』 8月23日(日) 《徳島》
発表会はバレエコンサートと海賊ハイライト。
ジゼル第2幕のパドドゥでは精霊になってもアルブレヒトへの一途な思いが伝わってくる儚いジゼルと
山本さんは高貴なただずまいといい胸を締め付けるような切なさといい世界一のアルブレヒトです。
夜の公演ドンキ全幕。寺田亜沙子さんと福田圭吾さん主演で幸せオーラ全開な舞台でした。
ご当地のサービスか、キトリとバジルの結婚が決まると大団円は阿波踊り。
ドン・キホーテ爺さん、灯籠を持つようにして右へ左へと踊ります。


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公演も楽しく、瞬く間に終演。
駅前のワインビストロ渡辺精肉店にて『ドン・キホーテ』にちなみ
スペイン産ワインと生ハムで乾杯。


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『ジゼル』にも心から感動いたしましたので
ドイツでのぶどう収穫祭が舞台になっている設定にちなみ、
ドイツワインでも乾杯。



『ΑΝ'ΑΓΚΗ(宿命)』ーノートルダム・ド・パリよりー 8月30日(日) 《大阪府八尾市》

下村さんの艶めかしくも可憐な一面を覗かせるエスメラルダ、佐々木さんの心優しいカジモド、
山本さんの聖職者である身分でありながらもエスメラルダに禁断の恋をし、
嫉妬に駆られてエスメラルダを羽交い締めにまでするなどやがて破滅の道へと陥って行くフロロ、
最強のダンサー兼俳優陣が揃った舞台でした。

プロローグにエスメラルダとカジモドの生い立ちのエピソードを入れ、より悲劇性が際立つ展開に。
そしてもう一人の名演者はフェビウスの青木崇さん。
エスメラルダとベッドを共にしていたときにフロロに背中を刺されたときの仰け反りに拍手。
下手すれば安っぽいサスペンスになってしまいますが、
刺されたときの大袈裟すぎる姿によってドラマが盛り上がったのはいうまでもありません。
何しろ、ナイフを照明に当てるようにしてきらりと光らせて観客に見せ、
迷いなく思い切り刺すというフェビウス刺殺の覚悟を決めたフロロの立ち振る舞いも凄まじいものがあったのですから。

新作の初演とは思えぬ完成度の高さで、全出演者の身体の隅々までに中世パリに息づく人々の
弾圧に屈さぬ覇気が沁み渡った舞台が1回のみ、大阪のみでの上演は実に勿体なく
是非他の地域でも公演を実現していただけたらと願っております。
バフチサライに並ぶ、佐々木バレエの十八番として今後も再演を重ねてほしい演目です。

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帰りの新幹線にて舞台の世界に浸りつつ、フランス産ワインで乾杯。
(公演のキャッチコピーにちなんでお肉に合うワインと書かれたワインを選択。
渋みが強くかなり濃厚でございます)


ケイバレエスタジオ 30th Anniversary Concert『ドン・キホーテ』全幕/『J&H』(ジキルとハイドより) 9月20日(日) 《大阪府吹田市》

クラシックはドン・キホーテ全幕。3幕のキトリを踊られた工藤さんの隙のない格好良さに惚れ惚れ。
ドン・キホーテ爺さん、今回は梶原父さんに介抱されて舞台袖へ笑。
福田紘也さんの観客の笑いを誘った流し目エスパーダは歴史に残るに違いありません。

コンテンポラリーはJ&H。(ジキルとハイド)山本さん扮する博士がジキル(圭吾さん)とハイド(福岡さん)2つの感情に苛まれやがて絶命する過程は凄みがあり、しばらく余韻から抜け出せませんでした。

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友人2人は早めのバスでそれぞれ徳島、新潟へと出発したため発車までしばらく時間がある私は1人梅田のバーへ。
『ジキルとハイド』の作者スティーヴンソンが「王者の風格」と称したとされるウイスキー・タリスカーをロックで乾杯。
女性1人でも入り易いお店です。マスターにプログラムを見せたところ興味深く眺めてくださり
男性の迫力にも注目なさっていました。



Angel R Dance Palace10周年記念発表会『ドン・キホーテ』 9月21日(月) 《東京都世田谷区》

大人の生徒さんが通うスタジオの10周年記念発表会。オーディションで選ばれたキトリ役の生徒さん、
前日に続いてドヤ顔連発でキトリを優しく見守る圭吾さん、素敵なカップルでした。
山本さんのエスパーダは前月の福岡以上に色男オーラ大全開。まさに正統派エスパーダでございます。
射抜くような強い眼力、踊り子に対し紳士的に接する姿など全てに心を撃ち抜かれました。
3幕のワルツにはバレエ鑑賞仲間の友人が出演。仕事と両立しながらレッスンに通い、
全幕の大舞台に臨む姿勢には頭が下がります。

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三軒茶屋で一杯。ワインのラベルがこの日の結婚式を彷彿とさせます。
(注文はグラス1杯です。勢いに乗ればエスパーダさんの如くボトルごと飲み干せたかもしれませんが)

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スペイン産青唐辛子。少しぴりっと辛く、チーズとの相性抜群。ワインが進みます。

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2軒目、(まだ行くんかい)白ワインといわしのマリネ。色が鮮やか。


スターダンサーズバレエ団創立50周年記念公演『オール・チューダー・プログラム』 9月26日(土)27日(日) ≪神奈川県川崎市≫

『葉は色あせて』で吉田都さんと山本さんが夢の共演。寄り添って歩く姿だけでも愛おしいものが胸に響き、感無量。
『火の柱』で圧巻の女優魂を魅せた本島さんのヘイガー力演も忘れられません。

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初日は小田急線の成城学園前にて乾杯。チューダーの故郷にちなんでイギリスのビールです。
(毎度ですが無理矢理な口実をお許しください) 世田谷再発見の旅が続いております。
ちなみにお店の目の前には、初日に『火の柱』ヘイガー役で大活躍された本島さんが
先月末にワークショップを開催された区のホールがございます。



新国立劇場バレエ団『ホフマン物語』10月30日(金)福岡さん/長田さん/小野さん/米沢さん 31日(土)菅野さん/奥田さん/米沢さん/本島さん 11月3日(火)井澤さん/長田さん/小野さん/米沢さん

13年前に牧バレエで鑑賞したときは舟歌しか印象に残らず、期待度マイナスで足を運びましたが意外や意外、
見せ場てんこ盛りで面白い作品でした。福岡さん、老けメイクはほどほどに。せっかくの端正なお顔が台無しに笑。



野間バレエ団 山本隆之さん版『くるみ割り人形』11月1日(日)

夢の中に両親やフリッツを登場させて家族の繋がりを丁寧に描いた上品であたたかみのある演出、
カーテンコールでの出演者の方々から零れる柔らかな笑顔は
山本さんの優しいお人柄が大きく関係しているに違いありません。

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ビールとお好み焼きで昼下がりから乾杯。店名が「胡桃屋」。

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終演後はレッスン仲間の方とビールとドイツ料理で乾杯。10月のレッスン後に
スタジオ近くの居酒屋で真昼間から一緒に呑んだ方で、話はなかなか尽きず。
翌々日は再び初台に戻り、『ホフマン物語』を鑑賞。


沖田美延バレエスタジオ発表会 11月15日(日)

新国立劇場で活躍されていた沖田さんは相変わらずプロポーションが美しく、煌びやかなオーロラ姫にうっとり。
衣裳の展示も見応えがあり、1着1着じっくりと見入りました。

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渋みと深みのあるフランス産赤ワインを気持ち良くいただきました。



シュツットガルト・バレエ団『オネーギン』レイリー&オサチェンコ

初めて観た2008年、選曲の素晴らしさに作品の虜になりましたが今回も感激。
選曲、ドラマの濃さに胸を打たれ特に音楽はあたかもこの作品のために作られたと思うほど、
華麗で郷愁漂う曲の数々に感動を覚えます。
今や世界各地のバレエ団でレパートリー入りしていますが、本家の舞台を鑑賞でき幸運でした。
原作を数種類の翻訳で理想の日本人キャストを思い浮かべつつ読むと楽しさも倍。



マリインスキー・バレエ『愛の伝説』 11月27日(金)ロパートキナ/スメカロフ/シャプラン

ずっと生で観たかった作品の1つ。東洋風の不思議な調べに包まれる中で踊るロパートキナの孤高な存在感はまさに女王。
グリゴローヴィチらしい勇壮な群舞も迫力でしたが、ボリショイのほうが好みでした。



板東ゆう子ジュニアバレエ創立20周年記念公演『ドン・キホーテ』 11月29日(日)≪愛媛県西条市≫

オープニングはゴットシャルク組曲。板東先生と山本さんの詩人のしっとりとした美しさ、
観る者の心を解きほぐすあたたかさ、大人の味わいある色気はいつまでも見続けていたいほど。
ドン・キホーテ全幕は圭吾さんによるサンチョが大活躍。
板東先生の女性らしい色香のあるキトリ、紙吹雪とともに登場しても、
髪を掻き上げる仕草も山本さんの絵になるエスパーダなど錚々たる方々が愛媛に集結。
2幕ではサプライズで下村さんと2幕に名前のない福岡さんによる泥酔ジプシーも忘れ難い名演。

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朝、道後温泉に浸かった後は坊ちゃんビール。

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帰りはバスを待つまで日本酒で乾杯!



新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』 12月19日(土)小野さん/福岡さん/五月女さん 22日(火)米沢さん/ムンタギロフさん/奥田さん

ノーコメント。(ダンサーの責任ではありません)



松崎すみ子バレエ『幻覚のメリーゴーランド』 12月23日(水)

予想に反してほぼ山本さん1人舞台な作品。山本さん演じる夢見がちな作曲家を志す青年(ベルリオーズ)が
狂気へと突っ走る半生を描き、心が震えっぱなしでした。
虚ろな目で倒れこんでも品を失わないのは流石でございます。

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終演後は会場1階のベルギービールを多数取り揃えたカフェにて「幻覚」ビール。

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メニューに詳しい説明書き。幻覚には溺れませんでしたがその日、『くるみ割り人形』のクララに負けぬ
素敵な夢を見たため満足。(それは違うか)


川上恵子バレエスクール発表会 12月25日(金)《大阪府吹田市》

板東先生と山本さんのガチョーク詩人は何度観ても痺れます。素敵なクリスマスプレゼントとなりました。
深川秀夫さん版オーロラ姫の結婚はお洒落で品位ある舞台。
衣裳のセンスも良く、素晴らしい美的感覚がクリスマスを彩りました。今年の見納めも昨年と同様大阪です。



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大阪港駅近くのたこやき店にて。ラッコは海遊館のお土産屋さんだけに行き、
自身へのクリスマスプレゼントとして購入。また増えてしまった。
教えていただいたネパール料理店に行こうとしたが、残念ながらランチ終了。次回こそは訪問。

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ドイツのグリューワイン(ホットワイン)で乾杯。ノンアルコールもあり、
お酒が飲めなくても雰囲気を味わいたい方に好評だったようです。
夜は急激に冷え込んだために温かな飲み物は嬉しく、ついついお茶感覚で飲み干しそうに。
カップはプラスチック製で持ち帰りも安心。



映画・展覧会
ボリショイ・バレエ in シネマSeason 2014 -2015『ファラオの娘』 

映画『ボリショイ・バビロン』 

ボリショイ・バレエ in シネマSeason 2015 -2016『くるみ割り人形』

カフェ・カトル・ヴァン・ヌフにてかわぐちいつこさんのバレエイラスト展 

熊川哲也とKバレエ展 




来年はどんな年になるか。ロイヤルと新国立、そして大阪の佐々木バレエもロミオとジュリエットを上演し、
もし12月に新国立がシンデレラ上演となればプロコフィエフの当たり年になりそうです。

最後になりましたが、今年もこの地味で読み応えが少ないブログをお読みいただきまことにありがとうございました。
心より感謝申し上げます。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください!


2015.12.31 ギエムを観ながら大急ぎでパソコンに向かっている管理人

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今年の国内カンパニー公演と来日公演を1本ずつ選出するとすればこの2本、
佐々木美智子バレエ団『ノートルダム・ド・パリ』とモスクワ音楽劇場バレエ団『エスメラルダ』。
原作は奇しくも同じ作品でした。
紀尾井町のAUX BACCHANALESにて。



謹賀新年

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新年あけましておめでとうございます。
昨年当ブログにお越しくださった全ての方に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
読んでいますと声をかけてくださった方やブログがご縁でお目にかかれた方、
SNSなどで当ブログを紹介して広めてくださった方もいらっしゃり、大変幸せに感じた次第です。
本年も相変わらずの地味な文体やデザイン及び酒紀行を貫き通す所存でございますが、どうぞ宜しくお願いいたします。

皆様は大晦日と元日はいかがお過ごしでしたでしょうか。
私は大晦日はいつもとは打って変わって空いた都心を散策し、帰宅後は紅白歌合戦を観賞。
昨年流行った曲は分からず終いでしたが嘗て(約18年前)約2年間だけ夢中だったV6が
デビューしてまもない時期の曲の披露に懐かしさが募り、
当時は人生で最も流行の邦楽に敏感であったと妹と振り返っておりました。
ゴールデンボンバーが4年連続同じ曲であることには驚いたのの、カラオケなどでは間違いなく盛り上がる傑作であり
超える曲を書くのは相当困難なのであろうと察します。

年越しは皆様もご覧になったことでしょう、東急ジルベスターコンサートのシルヴィ・ギエム。
15年ほど前に観たボレロでは人を近寄らせないオーラがある印象でしたが現役最後の舞台では
全てから解き放たれたかのような晴れ晴れとした表情でした。
特別ギエムのファンであるわけではありませんが、バレエにおける1つの時代の区切りと思うと
暫くはしんみりとした思いに蜜柑を食しつつ浸ってしまいました。
続いてはバッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲。
バランシン『コンチェルト・バロッコ』の曲であり、研ぎ澄まされた美に目を奪われた新国立の公演が思い起こされました。

それから今夜は元日恒例ウィーンフィルのニューイヤーコンサート。
今回は残念ながら喜歌劇『こうもり』の曲は演奏されなかったようでしたが
プティのバレエ『こうもり』で使用されている曲もあったのは嬉しく、聴き入りました。
マキシムの場面でのカンカンの踊り子が登場したときの場面の曲は『突進ポルカ』、
2幕終盤で何組ものカップルがワルツを踊り、寄りを戻し正装したベラとヨハンが再登場する場面は
『ベネチアの一夜』から。連日実に高質な舞台が繰り広げられていた昨年の新国立の公演は勿論のこと、
欧米のダンサーよりも色気があり伊達男っぷりが板に付いていらした某ダンサーの名演を思い出したのでした。
『皇帝円舞曲』ではウィーン国立バレエのダンサーたちの衣裳のデザインにも魅せられ、
柔らかな色合いのチュチュがふんわりと重なり合った、派手過ぎず、しかし祝祭感のある洗練された美しさでした。

2016年の鑑賞第1弾は新国立劇場バレエ団ニューイヤー・バレエ。
2008年のワシントンDC公演においても緻密で繊細な美しさが絶賛された
バランシンの『セレナーデ』、牧阿佐美さん版『ライモンダ』両方が含まれ、大変楽しみなプログラムです。
ワシントンDC公演は会場のケネディ・センター客席で鑑賞いたしましたが、本当に大喝采。
現地の方々の心に日本のバレエならではの魅力がしっかりと届いたのは明らかで胸が一杯になりました。
1月9日(土)、10日(日)は是非新国立劇場にて新年の幕開けに相応しい珠玉の作品をご堪能ください。

公演詳細
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006129.html



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新年一発目の写真は迷いに迷ってこちら。ワシントン公演時の現地新聞評です。
静謐な美に包まれた『セレナーデ』の大きな写真も掲載され、眺めているだけでもあまりの美しさに手を合わせたくなります。
新国立のバランシンはおすすめです。




定評のある珠玉の作品集で新年の幕開け 新国立劇場バレエ団 ニューイヤー・バレエ 1月9日(土)10日(日)

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元日以降更新が滞りすみません。年末の記事を冷静になって読み返すと火を吹きたくなるほど恥ずかしくなり
さっさと次の記事へと参ります。

2016年のバレエ第一弾、新国立劇場バレエ団ニューイヤーバレエを観て参りました。
静謐なセレナーデや絢爛なライモンダ三幕など見所盛りだくさんな珠玉の作品が揃い、たっぷり堪能いたしました。

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006129.html


セレナーデ

細田千晶 本島美和 寺田亜沙子 菅野英男 中家正博

川口藍 仙頭由貴 玉井るい 中田実里 広瀬碧 若生愛
朝枝尚子 飯野萌子 今村美由起 加藤朋子 小村美沙
柴田知世 関晶帆 成田遥 原田舞子 盆子原美奈 益田裕子 山田歌子(交代出演)

中島駿野 林田翔平 福田紘也 宝満直也

幕が開き、ぼんやりと柔らかな光が差し込む舞台に並んだ女性ダンサーたちが
右手を掲げてただずむ光景は息を呑む美しさ。
流れるようにフォーメーションを次々と描き出しながら展開し
素早い中にも丹念に紡ぎ上げるきめ細やかさがあり、また体型も皆ほっそり。
以前ニューヨークシティバレエ団の来日公演でも鑑賞しておりますが本家よりも遥かに繊細で静謐。
ふわっと舞う淡い青色のチュチュが幻想的な雰囲気を更に高め、天国のバランシンはさぞ喜んでいるに違いありません。
両腕を交互に上下させながら急速に後方へ進んでいく箇所は魚が泳いでいるようでもあり、
いくつかのグループに分かれて縦に並び、各々少しずつ角度を変えながらの腕のポーズは千手観音のよう。
ユーモアに富んだ振付も多く飽きさせません。
ソリスト3名の女性のバランスも良く、長い四肢から艶やかさを振り撒く寺田さん、
登場するだけで場を支配する力を持ち、男性に片脚を回されるアラベスクのポーズでは
翳りと崇高さが宿って見事な絵になっていた本島さん、
恐ろしくハードな振付でありながら終始にこやかな表情で軽やかに駆け抜けて行く細田さん、と
個性が全く異なる3人のダンサーの競演は見応えがありました。



フォリア

丸尾孝子 玉井るい 益田裕子 輪島拓也 池田武志 中島駿野

2013年12月のセカンドステップスで発表された貝川さんの作品がオペラパレスにて上演。
落とした照明の中からダンサーがくっきりと浮かび上がる序盤から引き込まれました。
以前上演された小劇場とは広さがだいぶ違いながらも
ダンサーの配置や空間の使い方も違和感のない大劇場用の仕上がりで、貝川さんの今後の作品が益々楽しみに。
女性の長いスカートが翻るさまも音楽に溶け込み、
中でも丸尾さん、玉井さん、池田さんの滑らかさに目を奪われました。



パリの炎

柴山紗帆 八幡顕光(9日)
奥田花純 福田圭吾(10日)

このパ・ド・ドゥイコール発表会の概念を近年最初に覆したのは2007年ボリショイ&マリインスキーガラで
度肝を抜かれたオシポワ&ワシーリエフだった方も多いはず。奇しくも会場は同じ新国立劇場でした。
2010年兵庫県三田市でのクラシックバレエ・ハイライトなる公演では小野さんと八幡さんが踊りましたが
本拠地では初めての上演かと思います。
柴山さんと八幡さんは丁寧に手堅くまとめ、安定感抜群。
奥田さんは可憐でほっこりとする踊りで福田さんは出ました、ガラらしく派手にドヤ顔連発。



海賊

木村優里 井澤 駿(9日)
長田佳世 奥村康祐(10日)

木村さん、井澤さん組は華やかペア。長田さん、奥村さんは正統派ペア。
アリのお2人は概要発表当初は奴隷というキャラクターではない気がしておりましたが意外や意外
女性に礼を尽くす姿が似合い、品もあって好演でした。
メドーラのヴァリエーションがダンサーによって異なり
木村さんは『パキータ』のリュシアン、長田さんは『ラ・バヤデール』ガムザッティ。
長田さんは全身から零れる情感に惚れ惚れ。木村さんは若さと勢いがありました。



タランテラ

米沢 唯 奥村康祐(9日)
小野絢子 福岡雄大(10日)

米沢さんと奥村さんはとにかく可愛らしく元気溌剌。明るさで会場を満たし、頼もしく引っ張る米沢さんと
バンダナ坊や風な格好で弾け、観ているだけでもほのぼのする奥村さんは新鮮で楽しいペア。

小野さんと福岡さんは濃厚で緻密。ちょっとした顔の角度や表情の作りも細やかに練り上げられた小野さんは
フリルの衣裳が似合い、色っぽさも匂わせます。
福岡さんは叫び声が聞こえてきそうなほどエンジン全開、
終盤の屈みながら火おこししているようにタンバリンを叩いて前進していく箇所も
思わず笑いが込み上げてしまうほどパワー炸裂でした。



「ライモンダ」より第3幕
※一部プログラム未掲載の役については目視確認。間違いがありましたらご指摘願います。

ライモンダ:小野絢子(9日)米沢 唯(10日)
ジャン・ド・ブリエンヌ:福岡雄大(9日)井澤 駿(10日)

アンドレイ2世:貝川鐵夫
ドリ伯爵夫人:本島美和
伝令:輪島拓也

チャルダッシュ:堀口 純 マイレン・トレウバエフ

マズルカ:川口藍 中田実里 今村美由起 小村美沙 仙頭由貴 山田歌子

グラン・パ・クラシック:
寺田亜沙子 奥田花純 柴山紗帆 原田舞子 細田千晶 丸尾孝子 若生愛 飯野萌子
江本拓 奥村康祐 中家正博 池田武志 木下嘉人 小柴富久修 清水裕三郎 原健太

ヴァリエーション:寺田亜沙子

パ・ド・カトル:奥村康祐 中家正博 原健太 木下嘉人

パ・ド・トロワ:奥田花純 柴山紗帆 飯野萌子

グラズノフの格調高い曲の数々は聴いているだけでも鳥肌が立ち、胸が高鳴るばかり。
グラン・パ・クラシックの渋みや哀愁を帯びた旋律といいチャルダッシュの地鳴りが沸き起こりそうな迫力といい
書き出したらキリがありません。
重厚な序曲で幕が開き、中世の写本を想起させる天体模様のような背景に巧緻で白を基調とした煌びやかな衣裳、
久々に新国立で鑑賞できる喜びに感極まりそうになりました。
本島さんの威厳のあるドリ伯爵夫人、貝川さんの温厚そうなアンドレイ2世の装いもごく自然。
心を込めて全力で祝宴を盛り上げようとする輪島さんの伝令も忘れられません。

小野さんのライモンダは古風な美貌、漂う貫禄で凛とした姫君。
ステップの1つ1つに迷いのない意志の強さを感じさせました。
米沢さんはメリハリの効いた明朗さのある踊りで魅了。
格式ある舞台でも大らかさが光り、晴れ晴れとした心が伝わりました。

福岡さんは豪快でありながらも気品があり、井澤さんは目を惹く華のある王子様系。
お2人とも十字軍遠征から燦然と帰還し、さらわれそうになっていた苦境の婚約者を
命懸けで救出した騎士に見えたかと聞かれると少々首を傾げたくなりもしましたが
(3幕のみの上演ながら関係ない箇所に対し手厳しくて申し訳ない、、、)
絢爛たる結婚式の主人公に相応しい輝きを備えていたのは確か。

マズルカは長身の女性ダンサー6人が務め、たおやかな中にも芯が通っていて華やか。
6人の中ではマズルカの経験が最も長いと思われるリーダー格の小村さんが全体を一気に引き締めたソロが
大変印象深く刻まれました。(プログラムに名前が未掲載であるのが実に残念)

パ・ド・カトルの男性はよく揃っていて、初期の頃の真っ直ぐ跳躍したはずが
玩具の飛び出す黒ひげの如く斜め方向に発射してしまっていた人が何人もいた時期からすると、
男性陣のレベルは随分底上げされてきたと感慨深し。
そして特筆すべきはグラン・パ・クラシックコーダの最後のポーズ。両日全ペアびしっとリフトが決まり、
客席のあちこちから感嘆の声が漏れていました。
またこれまではグラン・パの男性陣に装着されていた孫悟空風の金色の頭飾りが今回はなし。
※初演時の写真はこちら

フィナーレは全員総登場。演出によってはチャルダッシュとマズルカのみで
グラン・パ・クラシックのダンサーはなしであったり、フィナーレ自体がない版もありますが
新国版では主役からチャルダッシュ、マズルカ、グラン・パまで怒涛の如く登場。
全員並び、前後左右にフォーメーションを変えながら揃って移動する流れはまさに壮観でした。
現代の世界情勢を考えると、アブデラクマンを高貴な男性として描いているとはいえ
中世のキリスト教世界とイスラム教世界が交錯するこの作品の全幕上演は難しいかもしれませんが
まことに上質なプロダクションで、バレエ団のクラシック技術の高さを再確認。観る者を圧倒する力があります。
3幕だけでもトリプル・ビルなりNHKバレエの饗宴なり、上演を続けて欲しいと願います。

オペラと同時上演ではなくバレエのみでのニューイヤー公演は初の開催でしたが両日大入りの盛況。
12月の『くるみ割り人形』から2週間程度しか経っていないながらも観客が集まったのは
以前から定評がある作品を選んだ、バレエ団の魅力を一挙に味わえる良い構成だったからでしょう。
くるみの満員よりもニューイヤーの満員の方がバレエ団を応援して13年目に入るファンとしては喜びもひとしお。
今後も開催を切望いたします。



※余談
9日はお正月にバレエの饗宴の録画を一緒に観ていたときに小野さんの美しさに魅せられ、
また7年前のライモンダやミックスプログラムでセレナーデのコールドに感動した母も参りました。
家族とのバレエ鑑賞はPDA東京公演以来でしたが楽しんでくれたようで一安心。
物語についてあれこれ考えさせられるのは苦手らしく、バランシンや全幕物の結婚式場面などが好みのようで
元々好きなフォリアの曲も含まれている今回のプログラムは最適だったとのこと。大満足で帰途についておりました。

思い起こせば私の初新国立は2004年のザハロワ&ウヴァーロフのライモンダ、
初海外でのバレエ鑑賞はワシントンDC公演での新国立セレナーデ、
母の初新国立は2009年の寺島さん&山本さんのライモンダ、妹は同年のセレナーデ、と何かと思い入れが強く、
これら2演目を同時に鑑賞できたのは大きな喜びでした。
また2日目にはケネディ駐日大使も来場されていたそうで、2008年にケネディセンターで開催された
新国立初の海外公演となったワシントンDC公演を思い出さずにはいられず。
今更感がありますが、ワシントンD.C.公演の振り返りをしたいと感じてしまった次第です。



Image_3
ホワイエには次回公演『ラ・シルフィード』の衣裳も展示。



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残念ながら新春限定カクテルはなかったものの新年最初の公演を祝し、
幕間にはプログラム表紙・本島さんの日本公演における
ライモンダでの婚約者役(優しく気高くそして強い、まさに騎士でした)を思い出しながらスプマンテで乾杯。





ボリショイ・バレエ in シネマ Season2015-2016 ノイマイヤー版『椿姫』

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新宿にてボリショイ・バレエ in シネマ 『椿姫』を観て参りました。
http://bolshoi-cinema.jp/index.html


音楽:フレデリック・ショパン
振付:ジョン・ノイマイヤー

マルグリット・ゴーティエ:スヴェトラーナ・ザハロワ
アルマン・デュバル:エドウィン・レヴァゾフ
ムッシュ・デュバル:アンドレイ・メルクーリエフ
プルーデンス・デュベルノア:クリスティーナ・クレトワ
ナニナ:アンナ・アントロポヴァ
マノン・レスコー:アンナ・チホミロワ
デ・グリュー:セミョーン・チュージン


ザハロワのマルグリットは艶やかでダイヤモンドのような輝きを放ちながらも表現の細やかさが光る、奥行きのある女性。
アルマンに対し、高嶺の花な印象を与えているかと思えば初々しい少女のような甘える表情も見せたり、
包容力のある母親のような顔にも変化。
アルマンの父からの頼みを受けてアルマンとの別れを決意し
胸が引き裂かれそうな思いで他の男性と歩く姿には心が痛むばかりでした。
無駄な動きが全くなく陶器のように滑らか。
静かにポーズをとっているだけでも悲哀さが滲み出て、絵画を眺めているかのようでした。
咳き込んで苦しみ、力を振り絞って手紙を綴る箇所も不自然さがなく
本当に命を落としてしまうのではないかと釘付けに。
まことに失礼ながら、これまではザハロワは何を踊ってもザハロワといったイメージを抱き続けておりましたが
想像を遥かに超える表現の深さにびっくり。この日を境に意識を改める次第であります。

アルマンの回想場面ではソファーにマルグリットの肖像画が置かれていましたが何とモデルはザハロワ。
ひょっとしたらボリショイは財力があるのかオブラスツォーワやスミルノワなど
各マルグリット用が準備されているのか定かではありませんが細部までのこだわり様に驚きました。

レヴァゾフはハンブルク・バレエより客演。ザハロワとの背丈のバランスも良く、身長は2m近くありそうです。
作品を踊り込んでいるだけあって紫、白、黒、それぞれ3つとも滑らかで淀みないパ・ド・ドゥを作り上げ、
ザハロワを可愛らしく見せてくれる稀有なダンサーであると思います。
それから目がとにかく大きく、アップになる度にギョロッとした目力、吸引力に圧倒されました。

主役並みの存在感を示していたのは要所要所に登場していたマノン役のチホミロワ。
紫色の豪奢なドレス姿で殿方を手玉に取り、人生を謳歌する小悪魔な少女が
デ・グリューによって純愛に目覚めるも金銭や宝飾品への興味は失せずやがて沼地で息絶えるまでを熱演。
ただあくまで劇中劇であってこの作品の主役はマルグリットである点を忘れず、
過剰な表現は抑えてマルグリットに寄り添い引き立てるよう努めていたことに好感を持ちました。
立ち姿だけからでも凄まじい色気を匂い立たせ、オーラも絶大。
一昨年12月の来日公演『ラ・バヤデール』ガムザッティの代役で登場した瞬間、
余りのゴージャスな美しさにソロルが即時に陥落しても致し方ないと言わんばかりに
客席中からどよめきの声が聞こえてきたのは今もよく覚えております。

実はノイマイヤーの『椿姫』を全幕通して観るのは初めて。
本家の公演も映像も未見で(パ・ド・ドゥのみならあり)一昨年のパリ・オペラ座来日公演も観ておらず
初回にして最近レパートリー入りを実現させたボリショイの映像を観ても良かろうかと多少不安もありましたが
スクリーンで観る限り破綻もなく、良い意味で従来のボリショイらしさは薄くなっていて
簡潔さや静けさによってドラマ性を際立たせるノイマイヤーの演出をよく理解していると感じました。
(昔からのノイマイヤーファンや一昨年のパリ・オペラ座来日公演をご覧になった方からすれば
こんなんノイマイヤーちゃう!と突っ込みたくなる人もいらっしゃるかもしれませんが)

また世界バレエフェスティバルを始めとするガラの演目としてダンサーからの人気上位を占めている
紫、白、黒それぞれのパ・ド・ドゥがどのような流れで入ってくるのか今回ようやく分かったのも収穫。
当たり前ですがガラで観るのとは異なり、パ・ド・ドゥに入る前の状況の把握によって人物の心理がより鮮やかに伝わり
こちらの感情までがぐっと高まる思いがいたしました。

※これまでにガラで観たペアは
ブローニュ&リアブコ、ギエム&ル・リッシュ、デュポン&ルグリ、アイシュヴァルト&リアブコ、ロホ&レンドルフ。
振り返ると、様々なダンサーで鑑賞しています。

幕間には映画名物・関係者へのインタビューがありダンサーはチホミロワが登場。
マノンの役作りやノイマイヤー作品の魅力にすっかり取り憑かれたことを
目を輝かせながら熱弁。役に取り組める喜びを幸せそうに話していました。

また嘗て『椿姫』アルマンを踊り、ボリショイでのリハーサルに立ち会ったケヴィン・ヘイゲンは
ノイマイヤー作品の魅力はシンプルであることと語り、
ハンブルクに来たザハロワの貪欲に作品について学ぶ誠実な人柄を絶賛。
ザハロワがいかにこの作品を踊りたがっていたかが窺えました。

確かに古典やグリゴローヴィヂ作品ばかりではダンサーも飽きてしまうであろうと察しつつ
何もボリショイがノイマイヤー版『椿姫』をレパートリー入りする必要もないのではと思っておりましたが
ザハロワのみならずダンサー全員が上演するからには作品の精神を身体に染み込ませて
最高のものを見せようとの心意気でリハーサルに励み、
踊る機会に恵まれて皆が大きな喜びを感じていたことが伝わる上質な舞台。
ボリショイ元来の高いクラシックの技術にパリの洗練されたエッセンスが加わり
見事なまでの哀しくも美しい愛の物語が描き出されていました。

次回は2月17日(水)、マイヨー版『じゃじゃ馬ならし』。今から楽しみです。




新国立劇場バレエ団2016/2017シーズン演目発表

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世間がセンター試験に関心を寄せている1月中旬の大行事・
全国の新国バレエファンが1年で最も緊張するであろう新国立劇場バレエ団2016/2017シーズン演目が発表されました。
公演日によっては主演キャストも決定しています。

http://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/160115_007945.html



2016/2017シーズン バレエ ラインアップ

ロメオとジュリエット
 
シンデレラ
 
ヴァレンタイン・バレエ
 
コッペリア
 
眠れる森の美女
 
ジゼル


 
2016/2017シーズン ダンス ラインアップ

JAPON dance project 2016
 
新国立劇場バレエ団
DANCE to the Future 2016 Autumn
 
中村恩恵×新国立劇場バレエ団
「ベートーヴェン・ソナタ」
 
小野寺修二 カンパニーデラシネラ
「ふしぎの国のアリス」



バレエは来シーズン「も」古典が中心のラインナップです。
新しい形式としてはヴァレンタイン・バレエ。世間には割引のチョコレートが並び、
百貨店や洋菓子店では翌月のホワイトデーの準備に取り掛かっている2月14日を過ぎた時期に
ヴァレンタインという名称は如何なものかと思いますが演目はなかなか魅力。
バランシン作品の中でもひときわ煌びやかな『テーマとヴァリエーション』、
そして深川秀夫さんの『ソワレ・ドゥ・バレエ』の上演はまことに嬉しい限り。
ソワレ…は5年前に京都で全編を通して鑑賞いたしましたが、満点の星空の下で
色とりどりの衣裳を着けたダンサーが競演する、
星屑が舞い落ちてくるかのように繊細なグラズノフの音楽が散りばめられた
それはそれは美しく洗練されたクラシック作品です。
昨夏の横浜バレエフェスティバルにおいて米沢唯さんと奥村康祐さんが踊られた舞台を
ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
新国立での上演もパ・ド・ドゥのみのようですが、できれば全編の上演を希望いたします。

※5年前に足を運んだ京都の舞台。16枚のうち、後半8枚がソワレ…の写真です。
http://www.mikahara.com/stage/entry_473/

『トロイ・ゲーム』は新国男子が更に強くなっていることを期待。
『タランテラ』はまだ前回の上演から日数が経っていないせいもありますが
同じバランシンでも他の作品を選んでほしかったと思えてなりません。
音楽も親しみやすい溌剌とした『スターズ&ストライプス』や
涼やかな『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』など、まだ上演していない作品にも挑戦してほしいと願います。
『コッペリア』と時期が近いのかたった2回の公演しかも金土であるのは残念。日曜日の上演は不可能なのでしょうか。

それから未定はあるものの主役が固定化されている点も気掛かりです。
例えば『ロメオとジュリエット』は6公演ありながらジュリエットは小野さんと米沢さんのみ。
確かにお2人がトップを張っているのは紛れもない事実ではありますがせっかく層が厚いバレエ団。
公演数が少なく難しいのは承知しておりますがソリストは勿論のこと、
コール・ド・バレエ(アーティスト)やファースト・アーティストからの抜擢といった
新鮮なキャスティングも臨みたいところです。
特に、私個人としては小村さんや中田さんといったファースト・アーティストやコール・ドの古株で
いつも群舞をびしっと引き締めてくださっている凛とした長身ダンサーの方々が好きであるため
大きな役がつくと幸いに思います。

以前にも触れましたが、ロメオ…の再演はたくさんの要望があったであろうと想像。
首を長くして待ち望んでいた久々のマクミラン上演、今から楽しみでなりません。
厚みのある舞台になるか否かを決定づけると言っても過言ではない
ティボルトやキャピュレット夫人にどんなダンサーを配するか、こちらも興味津々です。

偶数年の年末恒例『シンデレラ』にはほっと一安心。昨年と同じ演出のくるみでしたら一揆寸前です。
主役のみならず、仙女や四季の精のキャストが非常に楽しみであります。
公演日数が最多ですから抜擢が相次ぐと嬉しいものです。
職人の域に入りつつある小口さんの宝石屋も一段とパワーアップか。

『コッペリア』は2009年以来久々の上演。プティ版ではフランツが色男な一面を持つ青年である役柄ですので
幕開けの煙草場面はかなり重要。身体には良くないがフランツが手にするとさまになって素敵、と
観客の心にも火を灯し、世間に反して嫌煙者をも惹きつけなければなりません。
余談ですが私も煙草は全く吸わず、決して好きではありませんが代々愛煙家の家系に育ちましたので一概に非難はできず。

2014/2015シーズン開幕作品として新制作された『眠れる森の美女』は一部衣裳の改訂を祈願。
椿屋珈琲風ウェイトレス姿の貴族、そして妖精のソリスト陣が皆同一色であったことや
夢の場面での濃厚なグリーン葉っぱ星人なデザインにはびっくりぽん!でした。
またフロリナ王女はオーロラ姫ではないダンサーにも当ててほしいと思います。

『ジゼル』は2013年2月以来。前回バーミンガムロイヤルバレエ団『アラジン』客演のために
出演できなかった小野さんと福岡さんによるジゼルとアルベルトがようやく鑑賞できます。
アルベルトの恋は遊びだったのか真剣だったのか、セルゲイエフ版においてはその辺りの捉え方は
ダンサーに任されていると思われますので注目です。
2幕序盤の百合の束を抱え、マントを引きずりながら墓参りに向かう姿に
憂えや高貴さを感じさせるかじっくり鑑賞いたします(この場面の審査が厳しい女性客は多いはず。私もですが)
前回は米沢さんとバーミンガムロイヤルに戻った厚地康雄さんのペアがそれはそれは少女漫画のように微笑ましくて熱い、
胸をぎゅっと締め付けられるようなドラマティックな舞台が鮮烈な印象を残しました。

ダンスのラインナップには恒例のバレエ団ダンサーによる振付発表公演や
中村恩恵さんの『ベートーヴェン・ソナタ』もあり、新しい風の吹き込みに関心が高まります。

それから来シーズンもゲストダンサーはムンタさん。ロイヤルでも来日して初台にもご出勤。働き者です。

なんやかんや書き連ねてしまいましたが、来シーズンも初台通いが楽しみである点には昔も今も変わりありません。
皆様はラインナップについて、どうお感じになったでしょうか。
今年に入ってから、過去の公演を振り返りつつ次期に来そうな作品を
赤鉛筆を片手にあれこれ懸命に予想をしていた方も少なからずいらっしゃることでしょう。
ご意見などお聞かせいただけたら嬉しく存じます。




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来シーズンも多くの人々が集う劇場になりますように。




矢上香織先生

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しばらく更新が滞りすみません。

こちらへのブログにも多数アクセスいただきましたが
大阪のケイバレエスタジオを主宰されていた矢上香織先生がお亡くなりになりました。

http://blog.livedoor.jp/ksutaksuta/archives/47577908.html

新国立劇場バレエ団の山本隆之さん、福岡雄大さん、福田圭吾さん、紘也さん、
大阪を拠点にクラシックとコンテンポラリーともに質の高い舞台を見せてくださるKチェンバーカンパニーといった
多くの素晴らしいダンサーを育てられた三人姉妹の長女で、スタジオの運営業務の中心を担っていらっしゃいました。
突然過ぎる別れに、ご親族の方々やスタジオ関係者の方々の心境を察すると胸が痛みます。
亡くなられた日の夜に友人からの電話で知りましたが、まだまだお若く
先日の新国立ニューイヤーのときはいつもの可愛らしいお茶目な笑顔満開でいらしたのに
どうして、と言葉が出ません。
来月の『ラ・シルフィード』公演で新国立劇場にてお目にかかれるのではないかとさえ今でも思ってしまいます。

9年前に初めてケイバレエスタジオに発表会のチケットを申し込んだとき、
それまで大阪の方と電話で話をした経験がなくおどおどしている私に
本当に東京から来てくれるのかと驚きながらも笑いに溢れる痛快な関西弁で緊張を解してくださったことや
クラスの雰囲気にびっくりしたやろ〜大丈夫やったか〜?と
レッスン再開初日に心配のお電話をいただいたことなども忘れられません。

新国立のワシントンDC公演にもお越しになっていて、
ケネディ・センターの入口付近にて久留美先生と繰り広げられた鉄板の浪速姉妹漫才に大笑い。
思えばこのときが初対面でしたが、帰りの飛行機がデトロイトまで一緒になり
空港や機内で目が合うとにっこり微笑んでくださって初めての海外ひとり旅をしていた者としては
大変心強かったと思い出します。

スタジオの舞台のお知らせがホームページに掲載されてすぐにチケット申し込みの電話をすると
お待たせ〜、申込者第1号やで〜、ありがとう!とユーモアに富んだお言葉をいただいたり
忘年会では飲み過ぎたんやてな〜と先日の新国立劇場でも思い切り笑いながら声をかけてくださるなど
お世話になった回数は数知れず。
関西出身でもなければバレエ関係者との繋がりがたくさんあるわけではない私に対し、
劇場でも電話口でも毎回気さくにお話ししてくださる本当に優しくて楽しい、あたたかな先生でした。
縁あって大阪へ行く回数は年々増え、数年前からは年に10回程度訪れるようになった私にとって
大阪人女性ならではのパワフルな魂を最初に示してくださった方であったように感じます。

本日告別式に参列いたしましたが、突然過ぎて未だに信じられないとの声ばかりが聞こえ
花を手に穏やかで可愛らしいお姫様のような表情で安らかに眠られた香織先生のお顔を拝見すると
早過ぎる別れに涙が止まりませんでした。心よりお悔やみ申し上げます。

ケイバレエスタジオにはKチェンバーのダンサーを始め、小さなお子さんから大人まで幅広い世代の生徒さんが通われ
今年も舞台の開催が予定されています。香織先生の意志がしっかりと受け継がれ、
ケイスタのダンサー、生徒さん全員が一致団結して成し遂げられると信じております。
スタジオの活動、そして愛弟子たちの活躍を香織先生はいつまでも見守っていてくださるに違いありません。


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【まもなく開幕】新国立劇場バレエ団『ラ・シルフィード』

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新国立劇場バレエ団『ラ・シルフィード』開幕まで1週間となりました。
酒井はなさんと小嶋直也さん主演のダイジェスト映像や米沢唯さんと奥村康祐さんのリハーサルとインタビュー、
細田さんと井澤さんのリハーサル動画も掲載されています。

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006130.html


米沢さんと奥村さんのほんわかな雰囲気に和みます。シルフィードもジェームズもふわふわとした風情があり
特に婚約者エフィーとの狭間で右往左往するジェームズに奥村さんがぴたりと嵌りそうで楽しみであります。
最も目を惹いたのは細田さんのシルフィード。涼やかで繊細、どこか儚げで
ロマンチック・チュチュを纏いオペラパレス本公演における主役デビューが待ち遠しいばかりです。

東京バレエ団の公演でラコット版は斎藤さんと高岸さん、沖さんと松野さんで2回観ておりますが、
ブルノンヴィル版の全幕通しての鑑賞は今回が初めて。
決して派手な作品ではありませんが、結婚式直前にジェームズ、そして挙げ句の果てには
村全体をも混乱に巻き込むシルフィード騒動によって引き起こる悲劇、
白い空気の精たちが森を浮遊する幻想的な場面、そしてスコットランドの民族舞踊を取り入れた独特の振付が楽しみです。
ブルノンヴィルですから鮮やかな足捌きが多いかと思いますが(特に男性)、
男性陣全体のレベルアップが近年目覚ましいバレエ団でありますのでこちらも期待が高まります。
また物語の要となるマッジが本島美和さんと髙橋一輝さんの男女によるダブルキャストである点にも注目。
恐らくは同じ役を日替わりで男性と女性が演じるのは新国立史上初めてかと思われ、
舞台芸術の世界においても珍しいことと思いますが
ここ数年全体をびしっと引き締めるクセのある役が益々好評を博している本島さん、
まだアーティスト(コール・ド・バレエ)でありながら『シンデレラ』の義理の姉妹や
『パゴダの王子』道化、『ホフマン物語』スパランザーニの召使いなどのソリスト級の役に次々と抜擢され
毎回見事期待に応えている髙橋さん、お2人とも主役並の存在感を示してくださることでしょう。

公演は6日(土)から。是非劇場へ足をお運びください。
同時上演の男性のみで踊られる『Men Y Men』もしなやかで迫力があり、面白そうです。

※ホールが減っているとはいえ、新国立ラ・シルフィード、東京バレエ団のブルメイステル版白鳥、
ルンキナを迎える牧バレエの白鳥、なぜこうも重なるのか。



【速報】【おすすめ】新国立劇場バレエ団『ラ・シルフィード』『Men Y Men』

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新国立劇場バレエ団『ラ・シルフィード』を観て参りました。

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006130.html

13年ぶりの上演でブルノンビル版の全幕鑑賞は初めてです。
昨日は昼夜公演がありどのキャストも個性様々で堪能できましたが、
見事なオペラ劇場本公演主役デビューを飾られた細田千晶さんの浮遊感、透明感のある美しさに一際魅せられました。

福田圭吾さんの、一歩下がった場所から常にエフィーに思いを寄せ、
ジェームズより遥かに賢そうで(笑)表現が細かいグァーンも存在感があり
最後は寺田亜沙子さんのエフィーと幸せな結末を迎える熱々ぶりも良かったです。

華やかなグランドバレエと異なり、
これといって見せ場がなく余り面白くないのではと懸念される方もいらっしゃっるかもしれません。
しかしスコットランドの軽快な民族舞踊を織り交ぜながらの賑やかなパーティー、妖精が舞い踊る森の幻想的な世界、
そして婚約者がいると分かっていながらも誘惑の欲望を止められないシルフィードや
婚約者がいても妖精との恋に走ってしまうジェームズ、
そんなジェームズの理解に苦しむ婚約者エフィーや、密かにエフィーに恋心を抱き
ジェームズの行動を内心喜んでいるのに違いないグァーンといった
誰もの奥底にあるであろう感情がテンポ良く描かれています。
婚約パーティーでは両端にいるバグパイプ奏者が実に深く役に入り込み、
古き良きスコットランドの居酒屋にいそうな親父さん風な(褒め言葉)雰囲気があって自然と目がいってしまいました。
髙橋一輝さん、本島美和さんによるマッジも作品にぐっと厚みを与え、大怪演!
以前テレビで見たがつまらなかったとお思いになった方やあらすじが分かりづらいとお感じになっている方も
是非劇場へ足をお運びください。生で観ると、楽しさは全く違います。公演は本日と11日です。

『Men Y Men』は想像以上にしっとりしなやか。衣裳からして野性味が強いかと思いきや
静けさが寄り添う品があり見た目と振付の対比が面白い作品です。

今回は演目限定カクテルあり。林檎と蜂蜜のカルバドス、ジェームズを誘惑するシルフィードの如く甘うございます。
プログラムの中身は、2003年に会場を轟かせた世にも麗しいジェームズに溢れています。

中劇場への階段近く衣裳ギャラリーには衣裳が展示。裏からも見ることができますのでこちらにも注目を。

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悲願の白鳥一新 東京バレエ団 ブルメイステル版『白鳥の湖』 川島さん&岸本さん 2月7日(日)

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※ホームページのキャスト表より
ブルメイステル版「白鳥の湖」(全4幕)
─ 東京バレエ団初演 ─

◆主な配役◆

オデット/オディール:川島麻実子
ジークフリート:岸本秀雄
ロットバルト:森川茉央

【第1幕】

道化:入戸野伊織
王妃:山岸ゆかり
パ・ド・カトル:河谷まりあ、二瓶加奈子、宮川新大、松野乃知
アダージオ:三雲友里加

【第2幕/第4幕】

四羽の白鳥:金子仁美、中川美雪、上田実歩、髙浦由美子
三羽の白鳥:二瓶加奈子、政本絵美、川淵瞳

【第3幕】

花嫁候補:小川ふみ、三雲友里加、榊優美枝、川淵瞳
四人の道化:海田一成、高橋慈生、中村瑛人、井福俊太郎
スペイン(ソリスト):奈良春夏
スペイン:宮崎大樹、松野乃知、原田祥博、樋口祐輝
ナポリ(ソリスト):沖香菜子
チャルダッシュ(ソリスト):岸本夏未 河合眞里、岡崎隼也、杉山優一
マズルカ(ソリスト):伝田陽美、梅澤紘貴

東京バレエ団初演ブルメイステル版『白鳥の湖』を観て参りました。
http://www.nbs.or.jp/stages/2015/swan/index.html


昨年本家のモスクワ音楽劇場バレエ団来日公演で鑑賞し、噂以上にスリル満点で引き込まれた3幕に圧倒されて
日本のバレエ団がどこまで仕上げてくるか楽しみにしておりましたが
想像を遥かに超えた完成度の高さに驚き感動を覚える舞台でした。

川島さんのオデットは初挑戦ながら細い手脚を存分に生かして淀みない流れを描き出す優雅なヒロイン。
外見からしてオディール向きな色っぽい容貌で現に数年前の新人公演でオディールに抜擢されていますが
淑やかで情緒に溢れ、王子を優しく導いていく頼もしさもあって初役とは思えぬ安定感がありました。

オディールはもう乗りに乗って川島さん祭り。
ロットバルトの手下たちが一斉に登場したところにマントの陰から出てくる場面は鮮やかで妖しさも十分、
舞台は一気に黒色へと染まりました。華奢な身体であっても貫禄があり、
手下たちをぐいぐいと引っ張る統率力に平伏してしまいそうです。
スパスパッと斬れ味鋭い踊りも印象に刻まれ、中でもスペインの最中に突如として現れ
脚を蹴り出しながら王子へと迫ったかと思えば消えていく流れは鳥肌もの。
赤や黒で彩られた頭飾りもお似合いで邪悪さが際立ちました。
グラン・パ・ド・ドゥコーダではロットバルトの陰から現れたときには既にフェッテを開始していて
息つく暇もなく大団円はいよいよ最高潮へ。大喝采でした。
4幕では悲嘆に暮れるオデットをしっとりと演じられ、
人間に戻ったときの晴れ晴れと安堵した表情に思わず頬が緩みます。
演劇性の強い演出に相応しいメリハリのある表現でまとめ、見事白鳥全幕初主演を果たされました。

岸本さんのジークフリート王子は、結婚話やオデットとの出会いといった
次々と引き起こる出来事についていけずに戸惑うお年頃の王子を好演。
鷹揚とした立ち振る舞いも美しく、単なる頼りない王子ではなく
運命に翻弄されていく青年の心情を丁寧に表現され、懸命に生き抜こうとする純粋な魅力が満開でした。
昨年主役デビューのデジレ王子は初々しさが目立っていましたが今回は風格も備わり、今後が益々楽しみなダンサーです。

道化の入戸野(にっとの)さんはエレガントでお茶目。上背があり脚もすらっとしていながら持て余すことなく
大胆な開脚もお手の物で1幕ではひょっとしたら王子以上の存在感。
王子を心配したり、ロットバルトたちの登場に怯える姿はどこか可愛らしく映ります。
品もあるため、王子役も十分にいけるのではなかろうかと想像。
プロフィールには記載がありませんでしたが新国立ご出身です。
パ・ド・カトルでは河谷さんの美貌やオーラが眩しく、姫君のよう。たおやかで上品な美しさが目を惹きました。

3幕の4人の道化たちも楽しく、馬跳びしたり転がってポーズを取ったりと幕開けを盛り上げました。
花嫁候補たちには母親が付き添う設定にはなるほどと納得。
本人よりも母親が熱心であるかもしれないのは時代を問いません。

そしてロットバルトの手下たちとして登場する民族舞踊が大変良く訓練されていて本家にも追いつきそうなレベルでした。
スペインでは主軸を務めた奈良さんのしなやかさ、場を制する力強さに会場が沸き立ち
ナポリでは沖さんの可憐な中に企みを含んだ表情で妖しさを醸しながら踊る姿に身震い。
マズルカやチャルダッシュも常に王子に迫り、ときには囲い込むような振付で油断も隙も与えません。
グラン・パ・ド・ドゥでもオディールと王子を見守っているため恐ろしい手下たちです。
映像を見る限りからっとした明るさが優っていたミラノ・スカラ座に対し、
黒い魅力をより凝縮、発散しながら王子を誘惑していく表現に呑み込まれそうになりました。

それから整然としたコール・ド・バレエも忘れられません。
ピンと糸が張り詰めたような、少しのずれも許されないであろう揃いっぷりに天晴れ。
以前の演出の湖畔場面の冒頭ではなかった、
Sの字を描いて登場するフォーメーションからして粗を探すのが困難なほど。
斎藤監督の徹底した指導が見て取れました。

衣裳はモスクワ音楽劇場バレエからの貸出で、1幕と3幕の花嫁候補たちや貴族はすっきりと繊細な色合い。
ロットバルトや直轄の手下たちは黒色で統一され、場面の切り替わりがより色濃く圧倒されます。

東京バレエ団が上演していた以前の『白鳥の湖』の演出はもはや語るまでもありませんが
白鳥たちがドドドドド!と音を立てながら突き進んでくる湖畔の登場といい
昭和時代のバレエ教室の発表会(この時代でもセンスの良い教室はいくらでもあったはずだが)かと思うような
垢抜けない衣裳のデザインに仰天。極め付けは3幕ロットバルトのアップリケでしょう。
バレエ団の特別なファンでなくても一刻も早く別のプロダクションに変えるべきであると切望したものです。
東バの白鳥が変わるだけでも嬉しさが込み上げましたが、更には演出はブルメイステル版を取り入れるとのニュースには
日本中のバレエファンが喜びの声を上げていたに違いありません。

また、新国立出身者の躍進にも注目。
道化はWキャストでしたが山本達史さん、入戸野さんの2人、ナポリで沖さんのバックを踊った4人のうち
足立さん、森田さん、吉田さん(目視ですが恐らく)は皆さん新国立劇場バレエ研修所で研鑽を積んだダンサー。
新国立の研修所からバレエ団にそのまま入団のストレートコースが難しくなり
(卒業生が誰1人として入団できない年もあった)
研修所の意義が問われている昨今、他のバレエ団での目覚ましい活躍は喜ばしい限り。これからも要注目です。

終演後には吉岡美佳さんの退団セレモニーを開催。吉岡さんの心のこもったご挨拶に盛大な拍手が送られ、
飯田さんのさっぱりし過ぎる授与には観客から笑いが。
吉岡さんの軌跡を辿る映像もあり、長きに渡って活躍されたプリンシパルダンサーを讃える場が設けられるのは
ダンサーにとっても観客にとっても嬉しいこと。今後はベジャール・バレエで踊られるそうです。



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【求む!どなたか伝授を】シニヨンを綺麗に作るコツ

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ときには女子らしい話を。(今年も2、3ヶ月に1回の頻度で書いて参ります)

本日は日本が1年で最もカカオの香りに包まれ、国生さゆりさんの代表曲を再度確認する日。
しかし寒くてもチョコレートを溶かすほどのカップルの熱々ぶりなどという例年の謳い文句はどこへやら、
ただ持ち歩いているだけでも蕩けてしまうであろう季節外れに暑い1日でした。

ところでチョコレートの作り方なる資料を読むと溶かしてから形を整えて固めていくもののようですが、
(作った経験がないため詳細は分からず)バレエに関しても似た作業があります。
溶かすのではなく梳かしてぐるっと巻いて形を整えてお団子を潰すようにして固める。そうです、シニヨンです。

そこで質問です。バレエを習っていらっしゃる女性の皆様、レッスン時にはシニヨンにしていらっしゃいますか?
子供の場合は当たり前のようにきっちりと整えているかと思いますが
大人の趣味のバレエであればショートカットでも良いでしょうし、
長ければ邪魔にならない程度に束ねておけば特に問題ないでしょう。
しかし私の場合、周りからすれば呑気にもほどがあると言われても仕方ない
2、3ヶ月に1回の頻度の受講であっても、何を思ってか
レッスン時の髪型はネットで被せてピンでしっかり留めたシニヨン。
更にはこれまた着用義務は全くなく、しかも似合ってもいないにも関わらず
ピンクタイツにレオタード、黒いショートパンツがお決まりの格好となっております。
年間通して鑑賞に比べるとレッスンの回数は格段に少なく、学校でいえば修学旅行や遠足並みの一大行事。
心が浮き立って形から入りたくなってしまうのでしょう。
鏡に映った自身の姿が目に入るたびに、手脚がもっと細く長く、顔は小さくなったなら…と思い描くものの
砂糖を加えれば味が変化するチョコレートとは異なり人生はほろ苦い経験の連続。そう甘くはありません。

そして毎回ですが、シニヨンが納得いく仕上がりになったことが一度もございません。
なかなか高い位置にできない上に、鞄の中に入れて持ち歩いているうちに潰れたお饅頭のような形になってしまうのです。
またポニーテールの時点で下手過ぎるのか、至るところで髪が隆起。
どうにか平にしようとピンで留めてみるものの綺麗には決して仕上がりません。

チャコット新宿店では毎週土曜日に無料シニヨン講座が開かれているようですが
いい年した大人が参加する雰囲気ではないでしょうし、
綺麗に仕上げるコツなどご存じの方がいらっしゃいましたら是非教えていただけますと幸いです。


※上の写真
金粉を散らした、きらりと輝く宝石のように艶やかで美しいチョコレートケーキを発見、即購入。いただきます。
宝石といえば、6月に再演されるビントレー『アラジン』には財宝の洞窟、バランシンの『ジュエルズ』『水晶宮』、
先月の谷桃子バレエ団初演も記憶に新しく、来月には日本バレエ協会が上演する
いずれも演出は違うもののロシアの流れを汲む正統派な『眠れる森の美女』などバレエにも度々登場。

そういえば、新国立には過去に『エメラルド・プロジェクト』があり
本島さんが鮮烈な主役デビューを果たした石井潤さんの『カルメン』や
リハーサル中にあれこれ試しているうちに振付家に見出され、
当初予定ではなかった中村さんと湯川さんが追加で主演に決まった
ドミニク・ウォルシュの『オルフェオとエウリディーチェ』といった
実に面白いオリジナル全幕作品誕生の企画がありました。また実現してほしいものです。



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先週セガフレードザネッティにていただいたクワトロチョコラータ。
かなり甘みが強いかと思いきや、4種のチョコレートが蕩けて品良く濃厚且つ複雑で良い味わいでした。
ただ深みや繊細さは、某ダンサーの表現には到底及びません。以上!





プロコフィエフ作曲『ロミオとジュリエット』に似ている大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線の出発音楽

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今年はシェイクスピア没後400年。『ロミオとジュリエット』公演が相次ぎ
6月には英国ロイヤルバレエ団、10月からは新国立劇場バレエ団がマクミラン版を、
8月には大阪の佐々木美智子バレエ団が篠原聖一さん版を上演します。
また明日はボリショイ・バレエ in シネマにおいて『じゃじゃ馬馴らし』が上映。
最近も英国ロイヤルバレエシネマにおいてマクミラン版『ロミオとジュリエット』が上映され
偶然であるのか何かとシェイクスピアの話題が続きます。
どこかで読みましたが、先日2月9日はマクミラン版の初演からちょうど50年を迎えたとのこと。

そこで無理やり且つローカルな話題。大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線の出発アナウンス音楽が
プロコフィエフの『ロミオとジュリエット』によく似ているのです。
私が聞いたのは心斎橋駅ホームでしたが、第2幕冒頭の賑わう街の広場で流れる曲を想起させ
血が騒いでなりませんでした。
似ているのは動画(プロコフィエフさんの立派な写真ですが)の1分20秒から24秒あたりの部分です。

https://m.youtube.com/watch?v=-sV8assEqOo

電車の到着音楽として今話題になっている駅といえば
記念セレモニーに小野絢子さんと福岡雄大さんも出席された
上り線は『アイーダ』、下り線は『眠れる森の美女』花のワルツが流れる新国立劇場直結の京王新線初台駅ですが
大阪の電車を通勤通学等で利用される方や近郊にお住まいの皆様、どうぞ耳をお澄ましください。
音楽は駅によって異なるかもしれませんが、先月末の時点では心斎橋駅では確かに流れていました。(管理人確認済)
目的地へ着くには早い時間帯だったため、以前から似ていると気になっていた
心斎橋駅のホームへ行って確認した次第でございます。
休日の午前に乗りもしない電車のホームにて直立不動で音楽に聴き入る怪しい人物に映ったかもしれませんが
大阪の長堀鶴見緑地線にも是非ご注目ください。


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レトロな街灯の絵


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心斎橋から1駅、地下道を通っても徒歩で移動できる長堀橋駅地下街クリスタ長堀にあるインディアン・カレー。
5年前に矢上恵子先生の新作『ノートルダム・ド・パリ』を含んだケイバレエスタジオの公演へ足を運んだ際の早朝
心斎橋近くの銭湯・清水湯での風呂上がりに居合わせた女性2人組がおすすめと教えてくださったお店です。
そのときから数年経ってようやく訪れる機会に恵まれ、口に入れた瞬間は甘みを感じるものの
徐々に辛さが交わる何とも面白い味わいが癖になるカレーでした。是非お立ち寄りください。




ボリショイ・バレエ in シネマ Season2015-2016『じゃじゃ馬ならし』

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ボリショイ・バレエ in シネマ ジャン・クリストフ・マイヨー振付『じゃじゃ馬ならし』を観て参りました。
http://bolshoi-cinema.jp/index.html

本公演は全く鑑賞したことがないながら毎回のオープニングで流れる映像の
スタイリッシュな衣装に魅せられ、また2014年のWorld Ballet dayでリハーサル映像が中継されて
クリサノワがそれはそれは生き生きと踊る姿が目に焼きつき、今シーズン最も楽しみにしていた演目です。
良い意味でかなりの衝撃、いや笑撃作でまことに楽しく心躍る演出でした。


オープニングの映像


クリサノワのカタリーナは容赦ない暴れん坊。しかし生来の美貌に加えてどんなに激しい振付でも
裏打ちされた揺るぎないクラシック技術が冴え渡り乱雑な印象は皆無。
脚を垂直に伸ばしたり走りながら駆け込んで行く様に至るまで美しさが宿っていました。
筋肉質でしなやかな脚線美の持ち主でショートパンツ姿も眩しい。
一見アスリートのようであってもふとした表情には可愛らしさもあり、
恋するカタリーナの一途な思いも見てとれてチャーミングなヒロインでした。

ペトルーキオのラントラートフはぶっ飛んだ青年。ひょうきんでパワーに満ち、
バジルが更に弾けてしまったかのような強烈なキャラクターでした。
やや嫌らしい要素がありつつもカタリーナの困難極まる調教にも幸せを見出し
徐々に色気を醸しながらやがて彼女を包み込むまでの過程を底知れぬエネルギーで表現。

もう1人の主役は家政婦のチホミロワ。家政婦とはいっても物陰からそっと一家を覗き見ているのではなく
ショーのような見せ場を作り、ゴージャスで奔放。
1回見ただけでは実のところ役柄の解釈が難しかったものの
開幕前から緞帳の前にピンヒールで登場し、入念にメイクを確認してポワントを履き、
早く開演したがっている指揮者とのやりとりも軽妙洒脱で幕開けを一気に盛り上げました。

ビアンカのスミルノワはおっとりしているかと思いきや、ルーセンシオを引っ張り
求婚にくる殿方の誘いにも澄ましてしまうしたたかな女性。
だからこそチュージンの純情で大人しめなルーセンシオが引き立ちました。

ショスタコーヴィチの音楽も大騒動喜劇にぴたりと嵌り、
音楽だけで聴くと難解そうな曲でもバレエと一緒に聴くと耳に心地良く響きました。
映画音楽も含まれていたようで、最後の曲は恐らく『2人でお茶を』。軽快でお洒落な締め括りで後味の良い最後でした。

そしてもう1つ大きな魅力マイヨーの人間性です。
幕間にマイヨーとフィーリンへのインタビューがありましたが
朗らかで親しみ深く、私は人に恵まれていると強調するなど謙虚な性格。
寛大さが創作に役立つ、といった言葉から、ボリショイのダンサーたちが
マイヨーに導かれながら作り上げる過程がいかに充実して楽しい時間であったかが窺えました。

ボリショイの卓越したクラシック・バレエの技術、豪快な表現と
マイヨーのハイスピードな振付そして洗練された感覚が合致した、瞬きする間もないほど楽しい作品でした。
来日公演で鑑賞したいと思いましたが出演人数が少なく、1日にこれ1本の上演では採算が取れないかもしれません。
何か1幕物のクラシック演目を組み合わせるなどして、是非来日公演に持ってきて欲しいと願います。

2014年のWorld Ballet Dayボリショイ編。3時間6分辺りから『じゃじゃ馬馴らし』のリハーサル映像が始まります。



繊細で奥ゆかしい透明感のある空気の妖精が浮遊 細田さんが見事オペラパレス本公演主役デビューを飾った新国立劇場バレエ団『ラ・シルフィード』『Men Y Men』2月6日(土)、11日(木祝)

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新国立劇場バレエ団『ラ・シルフィード』『Men Y Men』を3公演観て参りました。
終演から約2週間経過してしまいましたが、悪しからず。
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006130.html

キャスト表はこちらから(Men Y Menは一部変更あり)
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/1516_La%20Sylphide.pdf


米沢さんのシルフィードは無邪気で積極的。ジェームズを振り向かせては喜びを露わにして
恋した青年を自身のいる世界に引き込もうと快活な妖精でした。
最も惹かれたのは細田さん。たおやかで繊細、奥ゆかしさがあり
体重も感じさせずまさに空気の妖精。控えめにほんの少し微笑むだけで
ジェームズの心を自然とシルフィード一色にさせてしまう古風な魅力が光っていました。
ジェームズとの恋で初めて自我に目覚めたと思わせ、パ・ド・ドゥの中盤で
小川の水を両手で掬ったり、木の実(恐らくラズベリーのようなもの)を取ってジェームズに差し出すことで
徐々に自身の思いを伝えられるようになったであろう妖精。いつまでも見守っていたくなりました。
コール・ド入団から着実に昇格を続けて約10年、見事なオペラパレス本公演主役デビューです。
小野さんは色っぽさを匂わせくっきりとした輪郭のある踊りで魅了。
意思表示をはっきりと行い、ジェームズをどんどん誘っては戯れる幸福に笑みが零れるリード型の妖精でした。

奥村さんのジェームズは浮ついた心で積極的なシルフィードとしっかり者のエフィーに挟まれ
半泣き状態でオロオロと右往左往する姿が嵌り過ぎて失礼ながら笑いが止まらず。
井澤さんは恐らくは幼い頃から容姿良し、性格良し、落ち着いているといった優等生タイプだったであろう青年。
しかし突如現れたシルフィードに生活を掻き乱される羽目となり、
ゆかしくもただずまいが美しく、神秘性を備えた妖精の不思議な魅力に惹かれて
順風満帆な人生が一変していく戸惑いを丁寧に表現していました。
福岡さんは現実をしっかり見ていそうなジェームズでシルフィードの魔力に引っかかった後も
エフィーが気になっている様子。
しかし結局はシルフィードを選び、2人の女性の間で引き裂かれるような思いが伝わりました。

寺田さんのエフィーは堅実で何を任せても安心できそうなしっかり者。
ジェームズとの新婚生活、出産計画に至るまで将来像を明確に描いていたことでしょう。
だからこそ、婚約破棄の現実を突きつけられたときには哀れでなりませんでした。
堀口さんは愛らしいお嬢さん。ジェームズ、グァーン双方を気にかけ
マッジの占い結果やグァーンのからかいに怒るジェームズを冷静にさせようと奮闘する姿に
思わず応援したくなります。

福田さんのグァーンはジェームズよりも遥かに賢そうで、一歩引いた場所から思いを寄せるエフィーをじっくり観察。
きっと長い間チャンスを窺っていたのでしょう。
ジェームズがシルフィードに走り、エフィーの婚約相手がいなくなった状況が明らかになる1幕終盤には
いよいよ僕に春が来る!と言わんばかりのドヤ顔が爽快。
いかにしてエフィーを振り向かせるか、この段階から計画の練り上げが始まっていたに違いありません。
最後、エフィーとは熱々のカップルとなってほっこり。
木下さんは勢いに身を委ねて行き当たりばったりなところがあり、シルフィードを見た、
ポーズを取って椅子にいたと目をくりくりギョロギョロさせながら一生懸命説明する姿や
ジェームズとエフィーの婚約破綻により自身に幸運が降りかかっていながらも
混乱して現実がまだ見えていない様子が可笑しくて笑いを誘いました。

髙橋さんのマッジは魔女であってもお茶目な雰囲気があり、動きも軽やか。
しかし一見そこまで恐怖感を示さない中で平然とジェームズを悲劇への階段へと導いているのですから
よくよく考えると怖さ倍増です。
本島さんは邪悪感濃厚で妖艶。見るからに半端ない恐ろしさで迫り、会場を震えさせました。
登場しただけで空気が変わり、一挙手一投足に目を奪われずにいられません。
少女たちを占ってあげるときだけは優しさが滲み、決して恐いだけではない魅力が伝わる一幕でした。

13年ぶりの上演でブルノンヴィル版の全幕鑑賞は初。想像していたよりも面白く、
中でも新国立の持ち味である整ったコール・ドによる1幕のスコットランド民族舞踊は軽快で楽しく、
音楽も耳に残る親しみやすさもあり。
男性も女性もそれぞれ違うデザインの衣裳で帽子を被っていたり、キルトを肩から掛けた人もいて様々。観察が一層楽しくなりました。
バグパイプ演奏者も役に入り込んでいてスコットランドの古き良き居酒屋にいそうな雰囲気満点。
スコッチ・ウイスキーが飲みたくなった方もいらっしゃるでしょう。
シルフィードとジェームズが戯れる現場を目撃したグァーンが大慌てで証言しながらも信じてもらえず
妖精のポーズを取ってみたものの後ろにあったはずの椅子が絶妙なタイミングで移動されて倒れ込んだところで
一斉に祝宴の踊りが始まる流れがテンポ良く、そして宴の最中に
どこからともなくシルフィードが現れては消えて行くわくわくとする展開は毎回の楽しみの1つ。
小さなリフトのような物で降りてきたり、暖炉に入ったかと思えば飛び立っていく仕掛けを用いた振付も
物語の運びに違和感なく溶け込み、細かな演出に目を見張るばかりでした。
2幕の森の場面は妖精たちの幻想的且つ『ジゼル』とは全く異なるからっとした明るさも含まれてうっとり。

コンクールやガラでしばしば踊られるヴァリエーションやパ・ド・ドゥも全幕で観ると印象が大分異なりました。
ジェームズのヴァリエーションは直前に披露される
グァーンのヴァリエーションの流れに乗って続いていくことが分かったり、
2幕のパ・ド・ドゥはコール・ドも絡んだ振付であった点など、全幕で観てみると実に新鮮です。

ただいたく短い作品で見せ場も少なく、『Men Y Men』と合わせても
休憩も含めて上演が2時間弱であったのはやや寂しい印象が否めませんでした。
もう1本、女性ダンサーが活躍するクラシック作品を上演できたら、満足度も変わってきたのではと思います。

何と言っても今回は新国立、東京バレエ団、牧バレエ団、と首都圏の主要バレエ団公演が重なり過ぎ、
日程もまたバレエファンを困らせました。
新国立は久々の作品と新制作、東京バレエ団は人気の高いブルメイステル版白鳥を初演、
牧バレエ団はルンキナを迎えての白鳥、とどれも話題に事欠かない公演が揃い
ある公演を泣く泣く諦めた方も大勢いらっしゃるでしょう。
長田さんのシルフィードも観たかったのですが、ブルメイステル版と
昨年全幕主役デビューを果たされた川島さんペアに惹かれて7日は東京バレエ団へ行きました。
劇場減少問題もありますし、予め話し合うなんてことは難しいのは重々承知しておりますが
バレエ界発展のためにもお互いが結束し合う、状況を察し合う重要性が
いよいよ強まって来ているようにも感じた2016年2月上旬でした。
確か6団体ぐらいのバレエ団が名を連ねた連盟か何かの存在があるはずですが、
きちんと機能しているのかいささか不安になった次第です。

※Men Y Menはまた改めて。



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劇場玄関から見渡せるギャラリー。裏にも回れます。


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前回上演時、2003年のチラシも展示。


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2016年の新国立劇場カレンダー、今月は2003年の『ラ・シルフィード』。
今年は意地でも1年間2月のまま、家族に指摘されるまで捲りません笑。




猫の日

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本日は2月22日、猫の日だそうです。昨日あたりのニュースで
招き猫の本家が世田谷区の豪徳寺か、台東区の今戸神社であるか論争が起きていると報じられていました。
バレエの振付でもパでも、猫は大活躍。『眠れる森の美女』3幕には長靴を履いた猫と白い猫の役柄があり、
怪しさを秘めた音楽に可愛らしくユーモラスな振付でオーロラ姫とデジレ王子の結婚式における見どころ1つとなっています。
また、発表会での小さな子供の生徒さんたちの定番作品に、
ルロイ・アンダーソン作曲『踊る子猫』(ワルツィング・キャット)もあり。
幼い頃に踊った経験のある方もいらっしゃることと思います。
ほどよい曲の長さ、踊りやすいテンポ、可愛らしい猫の衣裳、と
子供向け作品に望ましい要素が詰まっているからかもしれません。
私もその昔小学校低学年の頃に踊り、のちに各地の発表会で目にするたび懐かしさが募る作品です。


バレエのパにはフランス語で猫のステップという意味の「パ・ドゥ・シャ」もあり。(間違っていましたらご指摘お願いいたします)
16歳を迎え幸せ一杯なオーロラ姫の登場や金平糖のヴァリエーションなどでもお馴染みでございます。

猫派か犬派か、しばしば議論がなされるもののどちらも飼ったことがない私はこれといった意見がありませんが、
思えばバレエ作品には犬が登場する機会がなかなかありません。
猫を担ぐ役柄で登場した、一昨年新国立劇場で初演したイーリング版『眠れる森の美女』や
大阪の地主薫バレエ団が3年前に創作上演した『桃太郎』ぐらいでしょうか。
バレエにおいては、犬より猫の出番のほうが今のところは多そうです。


上の写真、立体型の黒猫が街並みを見渡す大阪のパティスリー・シャノワール。通りかかったときにはご挨拶。
中に喫茶室もあります。猫好きな方に焼きドーナッツを贈り、猫が描かれた袋のデザインや
甘さ控えめでしっとりとした生地を気に入ってくださいました。
ケーキ、焼き菓子ともに種類が豊富、どうぞお立ち寄りください。



清泉女子大学ラファエラ・アカデミア「バレエへの招待」2016年度受講者募集中

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清泉女子大学で開講されているラファエラ・アカデミア「バレエへの招待」2016年度の受講者を募集中です。
http://www.seisen-u.ac.jp/rafaela/lecture/index.php


※以下清泉女子大学ホームページより
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開催日 春期 2016年5月14日~2016年7月16日
秋期 2016年9月24日~2016年12月17日
曜日 土
時間 15:10~16:40
回数 春期 5回   秋期 5回
定員 60名
受講料 春期 11,500円   秋期 11,500円
見学 ×
テキスト 必要に応じてプリントを配布
備考 講義形式。映像を使用します。内容にかかわらず、途中からの受講も可能です。

 
お申込みフォームはこちら


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講座内容
 「バレエ鑑賞をはじめたい」「ダンサーや作品についてもっと知りたい」方々はもちろん、さらにご自身の鑑賞眼を深めていきたい方まで、バレエに関心をお持ちの方ならどなたにでも受講いただけます。
 今年はチャイコフスキーの音楽を使ったバレエ作品を軸に進めていきます。バレエ音楽として作曲された三大バレエ―『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『くるみ割り人形』―から、彼が作曲した音楽に振付けられた『セレナーデ』などのバランシン作品、『オネーギン』『スペードの女王』など物語バレエまで多彩な作品をとりあげ、映像資料を使いながら音楽の使われ方、演出や解釈、ダンサーによる表現の違いなど鑑賞に役立ついろいろな要素についてお話していきます。音楽、演出、表現、時代性…様々な方向から鑑賞の楽しみを深めていただく講座です。

春期
回 開催日 講座内容
1 5/14 三大バレエ1 「白鳥の湖」
2 5/28 三大バレエ2 「白鳥の湖」
3 6/4 三大バレエ3 「白鳥の湖」
4 7/2 三大バレエ4 「眠れる森の美女」
5 7/16 三大バレエ5 「くるみ割り人形」


秋期

回 開催日 講座内容
1 9/24 物語バレエ1 「スペードの女王」
2 10/1 物語バレエ2 「オネーギン」
3 11/5 物語バレエ3 「三人姉妹」ほか
4 12/10 抽象バレエ1 「セレナーデ」 「テーマとヴァリエーション」
5 12/17 抽象バレエ2 「ジュエルズ」ほか

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講師専門分野・業績
『魅惑のドガ』(世界文化社) 「バレエDVD コレクション」(デアゴスティーニ・ジャパン)

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講師は清泉の卒業生でいらっしゃり、バレエ評論家としてご活躍中の守山実花先生です。
バレエ初心者に分かりやすく、博学者を飽きさせない和やか且つ濃い講義で
鑑賞のポイントやダンサー、振付家の面白い逸話などをたくさん教えてくださいます。

チャイコフスキーと言えば三大バレエは勿論のこと、多くの振付家そして観客の心を掴み
バレエとは切っても切り離せない作曲家です。
何度観てもドラマの濃さや選曲の素晴らしさに胸を打たれ、あたかもこの作品のために作られたと思うほど
登場人物の感情の機微がそのまま台詞になっているかのようなクランコ版「オネーギン」や
来年2月の新国立劇場バレエ団ヴァレンタイン・バレエでの再演も決定している煌びやかで絢爛な「テーマとヴァリエーション」、
10年前のマリインスキー・バレエ来日公演における「ロパートキナのすべて」での名演が今もなお記憶に刻まれている
流麗で哀愁を帯びた幕開け、壮大で重厚感のある曲で彩られ終幕を迎える
「ジュエルズ」よりダイヤモンドについて学べるのは大きな喜びです。「スペードの女王」は未見ですが興味津々。

三大バレエの音楽も、改めて勉強することで完成度の高さを再確認できるに違いありません。
女子大での開催ですが、男性の受講者も大歓迎です。近年受講者増加中で、昨年は一回り大きな教室での開講でした。

まず私の永久!?の課題・三大バレエをもっと好きになる良い機会であると期待。今から楽しみであります。


※話は変わりますが、ラファエラ関連の記事がきっかけで昨日素敵な出会いがございました。詳細はまた後日に。




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