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Channel: アンデオール バレエ日和
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愛弟子たち入魂の追悼公演 ケイバレエスタジオ31st Memorial Concert 11月28日(日)《大阪府吹田市》

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白い衣裳でプログラムやチラシを堂々と飾っている福田圭吾さん(一番上の画像)が演出振付に携わった
DAIFUKUを横浜にて鑑賞後夜行バスに乗って大阪入りした11月28日(日)
大阪の吹田メイシアターにてケイバレエスタジオ31st Memorial Concertを観て参りました。
http://www.k-ballet-studio.com/

今年1月に急逝された矢上香織先生の追悼公演。
全出演者から気迫と魂を感じさせ、香織先生も喜んでくださったに違いないパワー溢れる舞台でした。

幕開けは香織先生振付のオープニングパレード。
中高生ぐらいから2、3歳の生徒さんまで大勢が活躍し、
オッフェンバックの『パリの歓び』序曲やスーザのマーチを使用した華やかでお洒落な作品です。
途中、可愛らしいプレ・バレエの生徒さんたちが登場するとあまりの微笑ましさに歓声が沸き、
ジュニアの生徒さんたちが手を取り優しく導いていく姿にほっこり心が和みました。

『白鳥の湖』よりパ・ド・カトルは牧阿佐美バレヱ団が採用しているウェストモーランド版を始め
英国系の演出によく見られる男女4人によるもの。
王子の花嫁候補探しの舞踏会を祝うクラシカルな振付ですが全幕の中で観ると余程の実力者でない限り
早く民族舞踊にならないだろうかとやや間延びな印象を抱きがち。
今回は抜粋である上に、Kチェンバーのジュニアの女性お2人は安定感抜群で技術も盤石。
終始笑みを絶やさない表情にも癒され惹きつけられました。
男性2人は新国立の福田兄弟で(圭吾さんと紘也さん)言うまでもなく颯爽、闊達で気持ち良し。
当然ではありますが並びながら踊っていると息が合い顔立ちが似ています。いたく祝福感に溢れるカトルでした。

『カントリーガーデン』は工藤雅女(まさこ)さんと恵谷彰さん。工藤さんといえばエスメラルダや黒鳥など
格好良い且つ高いテクニックを要する作品でのイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが
ご本人の性格がよく出ているのか乙女らしさにうっとり。
再演となる今回は恥ずかしがってさっと逃げて行くさまが一際可愛らしくほのぼのといたしました。

『ライモンダ』第3幕の主演は石川真理子さんと新国立劇場の福岡雄大さん。
晴れやかさと威厳を備えた石川さん、力強さと気品のバランスが益々取れてきた福岡さんが率いる
古典バレエの魅力を存分にを味わえたグラン・パ・クラシックでした。
グラン・パ抜粋での毎回の楽しみは女性ヴァリエーションで使用されている曲の数々。
1幕夢の場や2幕ライモンダのヴァリエーションといった3幕以外の曲もいくつか取り入れられ、
グラズノフの格調高い音楽を堪能できました。
ライモンダの衣裳は2009年の上演時と同じかと思いますが、白地に金の装飾で彩られた、
ロイヤルのものによく似ている渋く且つゴージャスなデザインで惚れ惚れ。

第2部はケイスタの十八番『ゴットシャルク組曲』で開放感のあるラテン調の雰囲気は
大阪の気質に通じるものがあり、コンテンポラリーで鍛錬されているケイスタの方々が踊ると
滑らかさや切れ味が一層際立つと再確認。
吉田千智さんと山本隆之さんによって踊られたゆったりとしたワルツのパ・ド・ドゥ「詩人の死」は
お2人の温もりが観る者の心を優しく解し、清らかさで満たされました。
観客の多くが作品の魅力を心得ており、世界一の「バナナツリー」であろう福岡さんと圭吾さんが登場すると
待ってましたと会場大笑い。人体漫才な体当たりデュエットをぎりぎりまで引き伸ばしたり
絶妙な間合いでずっこけたりと観客を瞬く間に吸い寄せました。
友人のバレエを習っていない幼い息子さんも、面白い!と大喜びしながら眺めていたとのこと。
初めて足を運んだ2007年のケイスタの舞台で鑑賞したのもこの作品でしたので感慨深し。

コンテンポラリーダンスは8年前の島根県公演(恐らく)以来に観るGebet。(ドイツ語で祈り)
暗闇に徐々に光が注がれめまぐるしく展開していくスピード感は片時も目が離せず
観ていると心地良くなる不思議な感覚で何かが昇華していくかのよう。
途中にはご病気の関係で近年舞台から遠ざかっていらした恵子先生も加わり拍手が沸き起こりました。
そして最後を締め括った、福岡さんがヴァルナ国際コンクール出場時
カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲に恵子先生が振付けられたBourbierを山本さんが披露。
2年前の大阪や昨年の東京で拝見したとき以上にもがき苦しみ、そして強い光を放っているかのような入魂のソロで
会場が浄化され、香織先生にも届いたに違いありません。

1月にくも膜下出血で急逝された香織先生の訃報は大きな衝撃で
年に数回劇場や電話で会話を交わしていた私ですらショックは計り知れず
長い時間を共に過ごしていらした久留美先生、恵子先生、
そしてケイスタの生徒さんたちの心境を思うと察するのも辛いほどでした。
しかし一時は中止も検討したという7月の出雲公演も無事成し遂げ(鑑賞いたしましたが素晴らしかった!)
11月の追悼公演も大盛況な中で閉幕。
打ち上げ、いや、我慢できず集合写真撮影や片付けを見守りながら一足早くビールを掲げ
喜んでいらしたであろう香織先生の笑顔が思い浮かぶケイスタ魂のこもった追悼公演でした。

※プログラムには久留美先生、恵子先生、ゲスト、ケイスタの皆さんによる手書きのメッセージを掲載。
香織先生の母親のような優しさ、厳しさを知ることができました。
中を捲ると10年や15年といった節目の出演者による挨拶文が毎回掲載されていて
どの方も謙虚で控えめな人間性が伝わりいつも楽しみにしておりますが
今回工藤さんの文章には大変感動を覚え、知性や人柄の良さが出ていて一字一句が心に刻まれました。
加えてきっと文才、見習いたいと心底感じた次第です。



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笑顔の香織先生。ケイスタといえばプロのダンサーを育て、
またコンクール入賞者を多数輩出する関西きっての名門スタジオとして知られていますが
香織先生は大人の基礎クラスにもたっぷりの愛情を注いでいらっしゃるとよく話してくださいました。
「皆面白い人たちでな、私の癒しの時間なんや」と仰っていた姿が忘れられません。

先生との最後の会話は今年の新国立劇場でのニューイヤー・バレエ終演後のこと。
前年の忘年会で私が飲み過ぎた事件が耳に入ったそうで
「もう、しょうがないんやからー。でもそれだけ楽しかったんやね。良かったなあ」と
久留美先生と笑いながら言葉をかけてくださり、まさかそれが最後になるとは知る由もありませんでした。



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帰りは夜行バス乗り場付近にしようと気遣っていただき梅田芸術劇場近くの洋食バルにて4人で乾杯。
関西、北陸、四国、関東、全員在住地域は異なりながら舞台で得た幸福と再会の喜びに浸り喋り始めると止まらず。
まずは樽詰めスパークリングワインで乾杯。


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チーズリゾットと渋味の効いたブルガリア産赤ワイン、相性抜群。
物事の考え方、ダンサー好みなど何かと渋いと小学生の頃から言われております。

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お昼は大阪マルビル地下で串揚げ定食。海老や牡蠣もあり海鮮好きには嬉しい。
近くには2011年のケイスタ公演鑑賞前に入店し
返しができぬ私が散々な出来を披露したたこ焼き店もあり懐かし。
大阪訪問約60回。しかしバレエと同様、くるっと滑らか綺麗な回転は生涯できそうにありません。

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梅田芸術劇場横の光の道なるイルミネーション。さらば大阪、次は年末に参ります!






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