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Channel: アンデオール バレエ日和
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ベテランの至芸にしみじみ オールスター・バレエ・ガラAプログラム 7月23日(土)

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お盆突入でお休みに入られた方も多く、ここ数日朝からリオ五輪に
釘付けになったている方も多くいらっしゃることと存じます。(私もです)

こちらも大変遅くなりましたが、先月下旬にオールスター・バレエ・ガラAプログラムを観て参りました。
https://www.japanarts.co.jp/concert/concert_detail.php?id=390

来日公演のガラに足を運ぶ機会は少ないのですが
私が生まれる前から既に大スターであったアナニアシヴィリやフェリ、
マリインスキーに君臨するロパートキナ、そして今絶頂期のザハロワが揃って出演するのはこの先ないにではなかろうか
このメンバーならば観たいとの欲求が募り、行って参りました。
世界バレエフェスティバルで味わうような大興奮とは一味異なるしみじみとした感動が生まれる舞台でした。


オープニング 歌劇『エフゲニー・オネーギン』よりポロネーズ
管楽器と弦楽器が呼応し合いながら始まる力強い曲で、ガラに期待を膨らませる効果は絶大。
ガラのオープニングではよく演奏されるのか、映像にもなっているキーロフ(現マリインスキー)バレエ団が
90年代初頭にロンドンでガラ公演を行った際にも同曲が開幕を盛り上げました。
(出演者はルジマトフ、チェンチコワ、マハリナ、レジュニナ他。
開演前のロビー映像には故ダイアナ妃も映っています)


「カルメン」(振付:A.アロンソ) ウリヤーナ・ロパートキナ、アンドレイ・エルマコフ
いきなりロパートキナの登場、このガラの豪華さを示す順序です。
蓮っ葉さや荒々しさとは無縁であろうロパートキナならではの気高く高潔なカルメン、
過剰な表現をせずとも身体のラインで自然と訴えかけるものが見えました。


「ジゼル」(振付:M.プティパ) ニーナ・アナニアシヴィリ、マルセロ・ゴメス
小学生の頃、好きなバレリーナを数名書くと必ず入っていたアナニアシヴィリですが実は今回初見。
登場の瞬間ようやく鑑賞できた喜びと思っていた以上に体型がふくよかになっていた驚きで衝撃が二重に。
しかし精霊でありながらも温もりが伝わり、アルブレヒトに向ける優しさが
じわりじわりと会場一杯に広がっていきました。
アナニアシヴィリのジゼルといえば1990年のボリショイ・バレエ団来日公演で主演していて
プログラムには百合の花を手にアチチュードのポーズを取る大きな写真が掲載され
確か当時の朝日新聞舞踊記事でもクローズアップされていました。
その頃生まれてまもなかった妹が社会人数年目なのですから、月日の流れは早いもの。
体力の衰え、体型の変化が見えてきたとはいえ同じ役を踊れることに敬意を表さずにはいられません。
ゴメスは黒子と化し、大先輩を徹底サポート。


「Tango y Yo」(振付:コルネホ) エルマン・コルネホ
黒の衣裳に身を包み黒い帽子を手にしたコルネホが颯爽と踊るソロ。
昨年新国立劇場バレエ団にゲスト出演したときも感じましたが
黒系衣裳のクラシックでない演目の方が魅力を発揮しやすいのかもしれません。
ジゼルの余韻に浸っていた観客の目を覚ませ、客席をあっと沸かせました。


「トリスタンとイゾルデ」(振付:K.パストール) スヴェトラーナ・ザハーロワ、ミハイル・ロブーヒン
2009年のザハロワガラではザハロワとメルクリエフが、
2013年のバレエ・アステラスではポーランド国立バレエ団の海老原由佳さんペアが披露し話題になった作品です。
特にアステラスでは他の古典王道パ・ド・ドゥ以上に大きな拍手を浴び、
ドラマのある魅せ場や壮大な音楽、身体の美しさを最大限に生かせる振付、と
作品としての力のある構成ではないかと思われます。
シフォン生地のシンプルな衣裳から繰り出すザハロワの腕と脚線の彎曲した美に
いつもは180度以上も脚を上げるのは如何なものかと思っていても感嘆とせずにいられず
このときばかりは空間を自由に泳ぎ回るかのように描き出される身体の線に魅せられるばかりでした。
各々敵対する国家間に属し戦争に翻弄されているトリスタンとイゾルデという関係性からすると
天上で結ばれた2人の設定とも解釈したくなり美し過ぎる感は否めませんが
(2人の間で交わされるドラマの深さ、重たさは海老原さんたちのほうがあった印象)
ザハロワですから良いのです。ロブーヒンの雄々しさも作品に合い、眼福な作品でした。


「レクイエム」(振付:K.マクミラン) アレッサンドラ・フェリ [ソプラノ:安藤赴美子]
フェリのソロ。白い衣裳を身に纏い歌声に乗せて柔らかく舞いながら悲しみを謳い上げていました。


「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(振付:G.バランシン) ジリアン・マーフィー、マチアス・エイマン
健康美に溢れるマーフィーと折り目正しい踊りが目を引くエイマンは
異なるカンパニーに属しながらも面白味のあるペア。
2005年のABT来日公演『ドン・キホーテ』2008年の『海賊』で工事現場のドリルの如く猛スピードフル回転な
キトリ、メドーラにたまげたマーフィーは年齢を重ねたためか品良く抑えめ。
だからこそエイマンとのバランスも取れていたのでしょう。
エイマンはバランシンをあくまで優雅に上品にと唱え続けているかと思うほどきっちり正確。
妙な親近感を覚えるのは母方の従兄弟に似ているせいかもしれません。
(現在大学生。エイマンと錦織圭選手を足して2で割ったような顔立ちですが
バレエもテニスも経験なく小学校から高校卒業まで野球一筋。
強いて言うなら、バレエは妹の発表会を1歳の頃観にきてくれたことがあり
ぐずらず喋らず、最後まで目を見開きながら集中して鑑賞してくれました)

お盆のせいか身内の話が長くなりましたので先に進みます。


「トッカーレ」(振付:M.ゴメス)
カッサンドラ・トレナリー、マルセロ・ゴメス [ヴァイオリン:小林美恵、ピアノ:中野翔太]
新鋭のトレナリーとゴメスが素肌を目一杯見せるシンプルな衣裳で登場。
作品の意図を理解するまでには至りませんでしたが、アルブレヒトからは一転野性味のあるゴメスと
バービー人形系美女のトレナリーは視覚的にも迫力十分。


「グルックのメロディ」(振付:A.メッセレル) ウリヤーナ・ロパートキナ、アンドレイ・エルマコフ
ふわっとした白い衣裳を靡かせてリフトされるロパートキナはひたすら崇高。
ただ、1曲はクラシック・チュチュの演目、例えば『ジュエルズ』ダイヤモンドなども観たかったと思います。


「海賊」より寝室のパ・ド・ドゥ(振付:K.セルゲーエフ/A.M.ホームズ) ジリアン・マーフィー、マチアス・エイマン
技巧系な2人と思い込んでいたため寝室とはびっくり。
しかしマーフィーが意外なほど大人な情緒、色香もありなかなか好印象。
エイマンはいよいよ従兄弟に見えてしまい笑、親族応援目線になってしまった。
エイマンご本人とファンの皆様、申し訳ございません…。


「ロミオとジュリエット」第3幕より寝室のパ・ド・ドゥ(振付:K.マクミラン)
アレッサンドラ・フェリ、エルマン・コルネホ
フェリのジュリエットは2006年の世界バレエフェスティバルガラで観て以来です。
全幕ではなく、バルコニーのような疾走感があるわけでもないものの
中でもロミオのマントにしがみ付きながら嘆く箇所はジュリエットの意志の強さが心に迫り
引き裂かれるような思いが胸を突き刺さりました。


「瀕死の白鳥」(振付:M.フォーキン) ニーナ・アナニアシヴィリ [チェロ:遠藤真理、ピアノ:中野翔太]
死にゆく運命を受け入れながらも生きようと自らを鼓舞しているかのような強さのある白鳥。
両手を揃えて倒れ込むダンサーが多い中片手だけを伸ばしてぱたりと倒れる姿はリアルな最期とも見て取れました。


「海賊」(振付:M.プティパ) スヴェトラーナ・ザハーロワ、ミハイル・ロブーヒン
ドンキではなく海賊が大トリ。珍しいと思いながらザハロワが登場した瞬間
眩し過ぎる煌めきに圧倒されなかった観客はいないでしょう。
表情、身体、踊り、そして衣裳までとにかく全てがダイヤモンドの如く輝き思わず目を押さえたくなるほどで
映画でいえば『天空の城ラピュタ』最後のムスカ状態です。


フィナーレ
世界で最も豪華な『テーマとヴァリエーション』。終盤のペアになってそぞろ歩く場面も披露され
アナニアシヴィリ、フェリ、ロパートキナ、ザハロワが並んで歩む光景は
20世紀と21世紀を跨ぐ時代のバレエ史の縮図を眺めている気分になりました。


開催とチケット価格決定時は予定通りダンサーが揃うのか、万一の降板の不安など何かと話題になっていましたが
演目変更はあったもののダンサーは予定通り集結。ジャパンアーツも安堵したことでしょう。
ただジャパンアーツ創立40周年を記念する公演でこの先揃っての来日は恐らくはないであろう面々。
何か4人で作り上げる演目、例えば『パ・ド・カトル』などあれば尚記念に相応しく
また歴史に残るガラになったのではと思います。
とはいえダンサーの寿命は短いとされる中で30年以上も第一線を走り続けている
アナニアシヴィリやフェリのベテランの至芸にしみじみとした思いに耽り
ロパートキナの神々しさやザハロワの煌めきを一度に味わえたのはまことに幸運でした。




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会場にはこれまでのジャパンアーツ招聘の公演関連写真を多数展示。


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『アニュータ』。全幕で観たい作品の1つです。
特にパ・ド・ドゥの哀切漂う音楽も魅力で、マクシモワとワシリーエフに共演が観たかった…。


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アナニアシヴィリ。あどけなさが残っていて可愛らしい。


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ボリショイの『ライモンダ』。世相を考えると全幕上演は難しいと思いますが来日公演で観たい作品です。
ミハリチェンコの元祖ボリショイ女性ダンサーらしい渋い美しさにも惹かれます。


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1990年ボリショイ・バレエ団来日公演プログラム。
私も鑑賞予定でしたが発熱で行けず、ついでに母も行けずベスメルトノワのジゼルを見逃しました、、、。
ベテランのベスメルトノワと当時新鋭のアナニアシヴィリ特集が組まれ、
赤の広場で花を手にしての立ち姿が愛らしい。


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ガラプログラムのページより。アナニアシヴィリのキトリ。華やかさはこの上ありません。
『黄金時代』やキャラクターダンスの名手だったマルハシャンツを堪能できる
『ドン・キホーテ』よりジプシーの踊りも入っている点もボリショイらしい。





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