12月14日(土)、東京バレエ団斎藤友佳理さん改訂版『くるみ割り人形』を鑑賞して参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2019/nuts/index.html
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
台本:マリウス・プティパ (E.T.Aホフマンの童話に基づく)
改訂演出/振付:斎藤友佳理 (レフ・イワーノフ及びワシーリー・ワイノーネンに基づく)
舞台美術:アンドレイ・ボイテンコ
装置・衣裳コンセプト:ニコライ・フョードロフ
装置:セルゲイ・グーセヴ、ナタリア・コズコ
照明デザイン:アレクサンドル・ナウーモフ
衣裳デザイン画制作:オリガ・コロステリョーワ
衣裳技術:ユリヤ・ベルリャーエワ
◆主な配役◆
マーシャ:沖香菜子
くるみ割り人形:秋元康臣
ドロッセルマイヤー:柄本 弾
ピエロ:樋口祐輝
コロンビーヌ:中川美雪
ムーア人:岡崎隼也
【第1幕】
マーシャの父:森川茉央
マーシャの母:奈良春夏
弟のフリッツ:岸本夏未
ねずみの王様:岡﨑 司
【第2幕】
スペイン:秋山 瑛-池本祥真
アラビア:三雲友里加-生方隆之介
中国:涌田美紀-昂師吏功
ロシア:伝田陽美、岡﨑 司-鳥海 創
フランス:金子仁美-足立真里亜、南江祐生
花のワルツ(ソリスト):
政本絵美-森川茉央、加藤くるみ-和田康佑、上田実歩-後藤健太朗、酒井伽純-山下湧吾
指揮:井田勝大
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
協力:東京バレエ学校
※キャストやスタッフはNBSホームページより
沖さんは感性豊かな可愛らしいマーシャ。パの1つ1つから感情が覗き、
軽快な上に心浮き立つ様子を体現されていました。
沖さんと言えば、大きな瞳に力があり真っ先に表情に目が行ってしまいがちでしたが
今回は以前にも増して身体全体から心の動きが見て取れ、
くるみ割り人形を受け取った際の不思議そうに見つめながら徐々に愛おしさを露わにしていく振付も
好奇心をワクワクと募らせる張りのある踊りで魅了。
脚の出し方がいたく丁寧で優しく、心が込められていると映りました。
秋元さんはひたすらノーブルで威厳や品格もある王子。
クラシックの規範を厳守しつつもダイナミックで迫力ある踊りで心情を物語っていて
『海賊』に続き沖さんとのペアで鑑賞できたのは幸運でした。
マーシャとの出会いでお顔をそっと覗かせる際に髪がややもっさりしてしまったのはご愛嬌笑。
沖さん、秋元さんのペアは非常に相性が良いのか大らかな踊り方の波長がよく合い、
素早く高々と持ち上げ静止するリフトも盤石。
腕使いの美しさも目を惹き、パ・ド・ドゥ冒頭での両腕を高く掲げて横並びした姿における
包み込むようなポーズに、グリゴローヴィヂ版始めロシアでの様々なくるみを想起。
初台の何処ぞの版と違って忙しない振付は控えめで観る側にも余裕が生まれるのか
パの1つ1つをじっくり味わせてくれた思いがいたします。
話は重複いたしますが、全体を通してロシア色が濃く
グリゴローヴィヂ版くるみを愛して止まぬ者からすると膝を打つ振付設定の連続。
まずマーシャは最初から団員の女性ダンサーが務め、グラン・パ・ド・ドゥも踊る演出で
最初に触れたくるみがこの設定であったため、刷り込まれているのは一理あるものの
少女の冒険と成長の物語性が強まって好みでございます
1幕のお人形たちが寄り添ってマーシャと冒険を共にする点も流れが途切れずで嬉しく
グリゴローヴィヂ版では2幕でもたっぷり踊る各国のお人形達が活躍していましたが
斎藤さん版は1幕の人形劇に登場したピエロ、コロンビーヌ、ムーア人がそのままクララを補佐。
2幕でもディヴェルティスマンをマーシャ、王子と共に眺める活躍ぶりでした。
時折各国のお人形達を真似たりとマーシャ達と楽しんでいる様子が微笑ましい場面で、舞台端も見逃せず。
中でもコロンビーヌの中川さんが終始カクカクチャーミングなお人形さんでした。
2幕冒頭のマーシャたちの旅ではワイノーネン版にあった、光を浴びながら小舟を漕いでどんぶらこ。
懐かしさが込み上げ、ねずみたちはチーズ製の舟?で後を追う奮闘でした。
花のワルツへと移る際の背景が上がってダンサー達が現れる始まりには
一気に引き込まれ別世界へと飛び込んだ心持ちにさせられます。
恐らくはロシアの伝統でフリッツや男の子たちを女性が演じるのは決して悪くはありませんが
男性ダンサー粒揃いなバレエ団にとっては少し寂しい気も。
ただ岸本さんのやんちゃで軽快な、スパスパと斬り込んでくる姿や
くるみ割り人形を壊してしまいしょんぼりしてしまう表情など悪戯好きな男の子そのもので好演でした。
衣装については一部要再考な部分も。スペイン女性がクラシックチュチュである点は問題ないのですが
装飾が余りにシンプルで、朱色に近い赤に金色の刺繍が気持ちあるのみ。
(上階席鑑賞のため見間違いでしたらご容赦ください)
秋山さんが小柄な体躯を全く感じさせぬ、空間を大きく使った力のある踊りで舞台映えしていたのは誠に救いでした。
中国女性はピンクとクリーム色(記憶が曖昧)でお子様感があり。男性は帽子もなく
丸見えな辮髪もやや気にかかり、漫画のキャラクターラーメンマンを彷彿。
花のワルツはボリショイでの衣装に似たくすんだピンクを用いていて私個人としては大変好みでございますが
東洋人が着用すると地味な印象を拭えず。せっかく男女ペアからなる構成であっても
咲き誇る花々を思わせるのは困難であった印象です。
あちこちで話題になっていたムーア人の全身茶色も2019年の新制作と考えると古さを募らせもう一工夫欲しい。
ふと思い出したが、90年代初頭に鑑賞したある国内バレエ団のプログラムでは役名が黒ん坊人形と明記され、
その時代でも如何なものかと思えてならなかったと記憶。
来年2月に上演される日本バレエ協会『海賊』振付演出を手掛けているヴィクトル・ヤレメンコさんが
リュドミラ・スモルガチョワと組んで現役時代に王子を踊られた、会場は人見記念講堂だったと思うが
(バレエ協会のチラシを見る限り若き頃の甘い雰囲気な貴公子の面影が無いのだが、偶然の同姓同名者ではないと思われる)
来日公演映像として嘗てNHKで放送された約30年前の『くるみ割り人形』では
男女の人形ともに顔が真っ黒で、その後現在に至るまでに手が加わったか否かは未確認ですが
話を戻しまして、当時よりも遥かに敏感な風潮となっている現代においては
いくら古典作品とはいえども誇張し過ぎるデザインや表現に繋がらぬよう配慮が必要と捉えております。
要望もいくらか書き連ねてしまいましたが全体を通してはオーソドックスにまとめ上げ
奇を衒った演出もなく古き良きロシアの伝統が息づく作品。早速来年再演が予定されているようです。
(近年はオリジナリティを追求するくるみも相次ぎ成功例もあるが、踏み外すくらいなら王道路線が宜しい)
くるみ見比べ行脚の1本として来年も鑑賞したいと思っております。
https://www.nbs.or.jp/stages/2019/nuts/index.html
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
台本:マリウス・プティパ (E.T.Aホフマンの童話に基づく)
改訂演出/振付:斎藤友佳理 (レフ・イワーノフ及びワシーリー・ワイノーネンに基づく)
舞台美術:アンドレイ・ボイテンコ
装置・衣裳コンセプト:ニコライ・フョードロフ
装置:セルゲイ・グーセヴ、ナタリア・コズコ
照明デザイン:アレクサンドル・ナウーモフ
衣裳デザイン画制作:オリガ・コロステリョーワ
衣裳技術:ユリヤ・ベルリャーエワ
◆主な配役◆
マーシャ:沖香菜子
くるみ割り人形:秋元康臣
ドロッセルマイヤー:柄本 弾
ピエロ:樋口祐輝
コロンビーヌ:中川美雪
ムーア人:岡崎隼也
【第1幕】
マーシャの父:森川茉央
マーシャの母:奈良春夏
弟のフリッツ:岸本夏未
ねずみの王様:岡﨑 司
【第2幕】
スペイン:秋山 瑛-池本祥真
アラビア:三雲友里加-生方隆之介
中国:涌田美紀-昂師吏功
ロシア:伝田陽美、岡﨑 司-鳥海 創
フランス:金子仁美-足立真里亜、南江祐生
花のワルツ(ソリスト):
政本絵美-森川茉央、加藤くるみ-和田康佑、上田実歩-後藤健太朗、酒井伽純-山下湧吾
指揮:井田勝大
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
協力:東京バレエ学校
※キャストやスタッフはNBSホームページより
沖さんは感性豊かな可愛らしいマーシャ。パの1つ1つから感情が覗き、
軽快な上に心浮き立つ様子を体現されていました。
沖さんと言えば、大きな瞳に力があり真っ先に表情に目が行ってしまいがちでしたが
今回は以前にも増して身体全体から心の動きが見て取れ、
くるみ割り人形を受け取った際の不思議そうに見つめながら徐々に愛おしさを露わにしていく振付も
好奇心をワクワクと募らせる張りのある踊りで魅了。
脚の出し方がいたく丁寧で優しく、心が込められていると映りました。
秋元さんはひたすらノーブルで威厳や品格もある王子。
クラシックの規範を厳守しつつもダイナミックで迫力ある踊りで心情を物語っていて
『海賊』に続き沖さんとのペアで鑑賞できたのは幸運でした。
マーシャとの出会いでお顔をそっと覗かせる際に髪がややもっさりしてしまったのはご愛嬌笑。
沖さん、秋元さんのペアは非常に相性が良いのか大らかな踊り方の波長がよく合い、
素早く高々と持ち上げ静止するリフトも盤石。
腕使いの美しさも目を惹き、パ・ド・ドゥ冒頭での両腕を高く掲げて横並びした姿における
包み込むようなポーズに、グリゴローヴィヂ版始めロシアでの様々なくるみを想起。
初台の何処ぞの版と違って忙しない振付は控えめで観る側にも余裕が生まれるのか
パの1つ1つをじっくり味わせてくれた思いがいたします。
話は重複いたしますが、全体を通してロシア色が濃く
グリゴローヴィヂ版くるみを愛して止まぬ者からすると膝を打つ振付設定の連続。
まずマーシャは最初から団員の女性ダンサーが務め、グラン・パ・ド・ドゥも踊る演出で
最初に触れたくるみがこの設定であったため、刷り込まれているのは一理あるものの
少女の冒険と成長の物語性が強まって好みでございます
1幕のお人形たちが寄り添ってマーシャと冒険を共にする点も流れが途切れずで嬉しく
グリゴローヴィヂ版では2幕でもたっぷり踊る各国のお人形達が活躍していましたが
斎藤さん版は1幕の人形劇に登場したピエロ、コロンビーヌ、ムーア人がそのままクララを補佐。
2幕でもディヴェルティスマンをマーシャ、王子と共に眺める活躍ぶりでした。
時折各国のお人形達を真似たりとマーシャ達と楽しんでいる様子が微笑ましい場面で、舞台端も見逃せず。
中でもコロンビーヌの中川さんが終始カクカクチャーミングなお人形さんでした。
2幕冒頭のマーシャたちの旅ではワイノーネン版にあった、光を浴びながら小舟を漕いでどんぶらこ。
懐かしさが込み上げ、ねずみたちはチーズ製の舟?で後を追う奮闘でした。
花のワルツへと移る際の背景が上がってダンサー達が現れる始まりには
一気に引き込まれ別世界へと飛び込んだ心持ちにさせられます。
恐らくはロシアの伝統でフリッツや男の子たちを女性が演じるのは決して悪くはありませんが
男性ダンサー粒揃いなバレエ団にとっては少し寂しい気も。
ただ岸本さんのやんちゃで軽快な、スパスパと斬り込んでくる姿や
くるみ割り人形を壊してしまいしょんぼりしてしまう表情など悪戯好きな男の子そのもので好演でした。
衣装については一部要再考な部分も。スペイン女性がクラシックチュチュである点は問題ないのですが
装飾が余りにシンプルで、朱色に近い赤に金色の刺繍が気持ちあるのみ。
(上階席鑑賞のため見間違いでしたらご容赦ください)
秋山さんが小柄な体躯を全く感じさせぬ、空間を大きく使った力のある踊りで舞台映えしていたのは誠に救いでした。
中国女性はピンクとクリーム色(記憶が曖昧)でお子様感があり。男性は帽子もなく
丸見えな辮髪もやや気にかかり、漫画のキャラクターラーメンマンを彷彿。
花のワルツはボリショイでの衣装に似たくすんだピンクを用いていて私個人としては大変好みでございますが
東洋人が着用すると地味な印象を拭えず。せっかく男女ペアからなる構成であっても
咲き誇る花々を思わせるのは困難であった印象です。
あちこちで話題になっていたムーア人の全身茶色も2019年の新制作と考えると古さを募らせもう一工夫欲しい。
ふと思い出したが、90年代初頭に鑑賞したある国内バレエ団のプログラムでは役名が黒ん坊人形と明記され、
その時代でも如何なものかと思えてならなかったと記憶。
来年2月に上演される日本バレエ協会『海賊』振付演出を手掛けているヴィクトル・ヤレメンコさんが
リュドミラ・スモルガチョワと組んで現役時代に王子を踊られた、会場は人見記念講堂だったと思うが
(バレエ協会のチラシを見る限り若き頃の甘い雰囲気な貴公子の面影が無いのだが、偶然の同姓同名者ではないと思われる)
来日公演映像として嘗てNHKで放送された約30年前の『くるみ割り人形』では
男女の人形ともに顔が真っ黒で、その後現在に至るまでに手が加わったか否かは未確認ですが
話を戻しまして、当時よりも遥かに敏感な風潮となっている現代においては
いくら古典作品とはいえども誇張し過ぎるデザインや表現に繋がらぬよう配慮が必要と捉えております。
要望もいくらか書き連ねてしまいましたが全体を通してはオーソドックスにまとめ上げ
奇を衒った演出もなく古き良きロシアの伝統が息づく作品。早速来年再演が予定されているようです。
(近年はオリジナリティを追求するくるみも相次ぎ成功例もあるが、踏み外すくらいなら王道路線が宜しい)
くるみ見比べ行脚の1本として来年も鑑賞したいと思っております。
くるみ割り人形鑑賞ですから童心に帰るの意を込めて
上野駅前に位置する創業90年のじゅらくにて大人のお子様ランチ。
食したメニューも鑑賞したくるみも、共にノスタルジック。ビールが並んでいる点はあしからず。