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Channel: アンデオール バレエ日和
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オスマン版大河ドラマ トルコ国立オペラバレエ団ートルコ文化年2019特別バレエ公演ー『ピリ・レイス』 9月3日(火) 《東京都中野区》

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9月3日(火)、なかのゼロホールにてトルコ国立オペラバレエ団
ートルコ文化年2019特別バレエ公演ー『ピリ・レイス』を観て参りました。
2008年の香川県を拠点に活動する樋笠バレエ団のガラ鑑賞時には
イスタンブールのバレエ団ダンサーが出演されていましたが、トルコのバレエ団による公演鑑賞は初めてです。
(同じ団体か否かまでは把握できず)

https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/what-we-do/support/program/37622/ https://kyodonewsprwire.jp/release/201907108537/

西洋生まれのバレエでは『海賊』を始め敵側として描かれがちな地域ですが
16世紀のオスマン帝国に実在した偉大な航海士であり地図製作者ピリ・レイスを題材にしていかにバレエ化したか興味津々。
クラシック・バレエのお決まり要素は盛り込まれ、ピリを導いて行く
星の娘たちの群舞もあれば(シンデレラやドラゴン・クエストを想起)
異国エジプトの娘アムネットと恋に落ちるもアムネットの兄の怒りを買い、
殺意を覚えて刃物を掲げ先端をピリに向ける兄の手を家の使用人だったか頭上で押さえるという
バヤデール男女逆転版嫉妬劇なる修羅場まであり。展開はテンポ良く
揃っているとは言い難かったが男性の船乗りたちの群舞も用意され、間延びした印象はなく終演を迎えました。

先に申した通り、バレエが誕生したのはヨーロッパですから
ヨーロッパの視点で描かれた作品中心でまた作品が次々と発表された時代は
まだまだ情報の伝達入手や共有が困難であったため、更にはオリエンタリズムへに憧れが強いが故に
誇張した表現に繋がり、東西の交差を描く際には対比を鮮やかにしたいと敵側として描写されがち。
その代表格が『ライモンダ』『バフチサライの泉』『海賊』でしょう。
トルコはヨーロッパに隣接しEU加盟を以前から希望している、
『バフチサライの泉』は韻文小説とはいえプーシキンが現地にて入念な調査を経て執筆した、
近年は世界情勢を考慮して『ライモンダ』のアブさんにしても割と上品に綺麗に描く傾向があるかと思えば
2013年に発表されたカデル・ベラルビさん版の『海賊』における大胆な解釈と若きスルタンの暴力的な性格及び描写には
近年稀に見る捉え方にびっくらこいたがDVD化された際のキャストで見れば演者が良ければ魅せられると納得、云々
深掘りすればきりがないため細かな追究は割愛。それはさておき話を戻して、
『ライモンダ』『バフチサライの泉』は史実が含まれた作品で『海賊』は小説が基になっているものの
バレエとして成立させ観客を引き寄せる演出の都合上、白黒の色分けを
はっきりさせたいのは致し方なかったと思われます。
しかし今回はトルコのバレエ団による自国の歴史に基づいた作品で
(トルコ国内でも様々な宗教の信者がいますからその辺りは複雑ですが)
初めてバレエにおいてキリスト教側を敵として描いていると思われる場面に遭遇。
あらすじにはアンダルシアにて迫害を受けているイスラム教徒と記され
恐らくは陥落後のグラナダ地域に住むイスラム教徒への改宗強要と推察いたします。

演出で1つ首を傾げたのは映像駆使し過ぎ感。例えば航海場面であたかも観客までもが乗船し
航海している心持ちにさせられるような映像は映画で言う4DXあたりと呼ぶべきか良い効果をもたらしたと思えますが
場面と場面の転換時もとにかく映像多し。旅先の人々と交流や、甲冑に着替えて旅立つ箇所までもが映像による進行で
映画の試写会に来た錯覚にとらわれたのは否めません。
また宮廷にてピリが製作した地図を用いて説明する際には地図にも映像が用いられ
自動で次のページが映し出された様子はまるでパワーポイントによるプレゼンテーション。
いくら文化や技術の先進国であったとはいえ16世紀のオスマン帝国にパワーポイントは存在しなかったでしょう。
せっかくの生の舞台ですから、地図も小道具の重要な1点として作り示して欲しかったと感じたのでした。

多かれ少なかれ突っ込みどころはありましたが、トルコのバレエ団公演鑑賞の機会は滅多になく存分に満喫。
東京都民50組100名招待キャンペーンや国内のトルコ関係団体の招待枠も大きく
最後は大使館関係者であろう方々からピリ役ダンサーへの花束贈呈もあり。
どういった層が観に来ていたか定かではないものの、クラシックバレエのお決まり要素も含み
史実を基にイスラムの地域の視点で作られたバレエを新鮮な思いで鑑賞できました。
もし日本の歴史上の著名な学識者で旅を含んだ題材にするならば、
実地測量のために全国を歩いた伊能忠敬が合うかもしれません。
道中で出会った妖怪、鳥たち、追い剥ぎなど、役はいくらでも作れるか。




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配布されたキャスト表とトルコ観光コーナーに置かれていたパンフレット冊子、写真に見惚れ2冊いただいてきました。
トルコ語が読めず、恐れ入りますがキャストやスタッフ名の解読は各自でお願いいたします。

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帰りは中野駅近くのケバブ屋さんで乾杯。スパイスに漬け込まれたたっぷりのお肉や
豆とトマトのペースストもあり、ヨーグルトソースの酸味がお肉とよく合いました。
アルコールは無かったもののトルコでも愛飲者が多いザクロジュースがさっぱり美味しい。
店内ではトルコのテレビによるバスケットボールW杯中継が流れ、強豪米国との試合は
店長もお客さんも気になる様子。サッカーだけでなくバスケットもトルコでは人気が高いとのこと。


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