8月11日(土祝)、世界バレエフェスティバルBプログラムを観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2018/wbf/program.html
※このあと5時間半の長丁場となった15日のガラも行って参りました。
Bプロもですがアレクサンドロワとラントラートフ絶好調、
お2人が主演する18日(土)大阪フェスティバルホールで上演の『ドン・キホーテ』全幕
関西在住の方も遠方にお住まいの方は観光飲食も兼ねて
(残席状況は未確認ですがアクセス良好、食事処にも困りません)是非ご覧ください!
ご覧になった方、ご感想お待ちしております。
※3年に1度開催のせっかくのお祭りなる公演。毎度の「好みは別として」表現は封印し、
全演目平和にそして長所をどうにか絞り出して⁉綴って参りますが、撤回状態になった際には申し訳ございません。
※プログラムはNBSホームページより抜粋
― 第1部 ―
「眠れる森の美女」
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ
大概『ディアナとアクティオン』といった超絶技巧系演目が多いトップバッター、今回は珍しく優雅な幕開け。
客席をじっくりあたためる演目これはこれで良い印象を持ちました。
ノヴィコワは慎ましく端正なオーロラ姫、ホールバーグは久々の鑑賞。
眠りといえば6月に新国立劇場で個性は様々であれど連日生気ある王子たちを目にしていたため
怪我前の全盛期ほどの精度は控えめに思えてしまいましたが
ノヴィコワをおっとり優しく支える姿に復帰できて良かったと安堵。ちなみにファニーガラでは大爆発(笑)。
「ムニェコス(人形)」
振付:アルベルト・メンデス
音楽:レムベルト・エグエス
ヴィエングセイ・ヴァルデス
ダニエル・カマルゴ
ヴァルデスがスカート、ポワント、頭の両脇に付けた2つリボンが赤く、
今夏公開から30年を迎えた『となりのトトロ』メイちゃんを彷彿。
好奇心旺盛そうな表情や動きが面白く、可愛らしい面を初めて観て新鮮。
(日テレの回し者ではないが、8月17日金曜ロードショーにて放映。
そういえばバレエフェス大阪公演全幕ドンキは読売テレビ開局60周年を冠しています)
カマルゴは兵隊さん人形、青と白のすっきり軍服でユーモラスにカクカク。
「ソナチネ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:モーリス・ラヴェル
レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ
お2人を観るのも、振付、音楽も初鑑賞。こなすだけで手一杯な印象は否めませんでしたが、
昨年のバレエ・スプリームにも足を運んでいなかったため未来のオペラ座を担うエトワールを目にできたのは収穫。
ルーヴェはグラビア映えする容姿、これからも雑誌からの撮影依頼は途絶えることなく続く予感がいたします。
書籍からバレエに入る読者もいるでしょうから是非とも上手く取り込んでいただきたいと願います。
「オルフェウス」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー、ハインリヒ・ビーバー、ピーター・プレグヴァド、アンディ・パートリッジ
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ
今年カンパニー公演としては初めて鑑賞したハンブルグの来日公演を思い出し見入ったお2人。
予備知識不足で話の展開はよく分からずであったものの何かを引き摺りながら惑うリアブコに
苦しみを和らげようと応える(違うかも)アッツォーニの2人に生まれる感情に引き込まれていきました。
ローラン・プティの「コッペリア」
振付:ローラン・プティ
音楽:レオ・ドリーブ
アリーナ・コジョカル
セザール・コラレス
スワニルダの登場のワルツ、『戦いの踊り』で知られる曲に乗せて1幕でモテモテぶりを主張する
フランツのヴァリエーション、通常3幕のスワニルダのヴァリエーションとして踊られる曲に乗せた
結婚式のパ・ド・ドゥの構成。
新国立劇場での初演から何度も鑑賞している演目である点を差し引いても、コジョカルの素朴な可愛らしさを考えると
都会の洗練やエスプリが不可欠なプティ版よりも元祖ポーランドの田舎版の方がずっと魅力が出たのではと心底痛感。
長いか短いか中途半端なさらさら頭髪加えて濃い顔で魚市場の兄さんに見えて仕方なかった
コラレスと揃ってかなり違和感はありましたがチャレンジャー精神は讃えたい。
― 第2部 ―
「シンデレラ」
振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ
全幕が上演された2010年の来日公演には足を運ばず、1980年代後半にダンスマガジンで
『シンデレラ』特集が組まれた際のシルヴィ・ギエムとシャルル・ジュドの写真が頭に刻まれている作品で
ようやく鑑賞。終盤の荘厳な音楽で踊られるシンデレラと王子のパ・ド・ドゥです。
ヌレエフ版ですが『くるみ割り人形』ほど仰天する振付は無し。
ガニオにリフトされたジルベールが持つヴェールが最後大きく靡き、袖には巨大扇風機が設置されていたと想像。
設定である古き良きハリウッドの華やいだ雰囲気もあり、私の中では永遠の少年枠と位置づけていたガニオが
意外と表現豊かであったのは驚きでした。
「HETのための2つの小品」
振付:ハンス・ファン・マーネン
音楽:エリッキ=スヴェン・トール、アルヴォ・ペルト
タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス
ロホは紺と茶色が混ざったレオタードと透けた素材のスカート、
エルナンデスは紺色系の透け透けレオタードとタイツで驚愕したがロホとは非常に息が合い、踊り出すと気にならず。
「白鳥の湖」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アシュレイ・ボーダー
レオニード・サラファーノフ
2013年のNYCB来日公演で観ているボーダーだが、肉感な体型になっていてびっくり。
私も他人のことをどうこう言う資格がない体型ではあるが、胴回り胸回りの太さには目を疑いました。
よりパワフルになったのは良かったのかどうか。テクニックは盤石です。
サラファーノフは安全無難、ただ15日のガラでは今までのさほど印象に残らぬサラファーノフに対する
意識が180度転換することに。詳細はまた後日。
「椿姫」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
アリシア・アマトリアン
フリーデマン・フォーゲル
ここ最近のフェスの傾向として皆大好き『椿姫』。前回観た際には黒のパ・ド・ドゥにおいて
どう前向きに考えても絵に嵌らぬダンサーで観てしまったため、まず見た目の宜しさには一安心。
アマトリアンの華奢で薄幸そうな姿、背もあり身体付きもしっかりとしていながら
フォーゲルの恋する純粋な青年らしさが作品に嵌っていました。
― 第3部 ―
「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
メリッサ・ハミルトン
ロベルト・ボッレ
随分と大人なロミオとジュリエット。ハミルトンは色っぽさが濃厚、少女は恋に落ちると一気に色めき立つと解釈。
ボッレはもう気持ち恋に恋する少年らしさが出ればと要望。
ベテランの年齢に達していても表現と見せ方の工夫次第で見るからに10代の若者と化すダンサーも存在しますし
巨大な彫刻が右往左往しているように思えてなりませんでした。
昨年東京バレエ団に客演した『アルルの女』のような渋い作品の方が沸かせたかもしれません。
ただガラの演目はファニー含めて見事なまでの役の入り込み。
「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ミリアム・ウルド=ブラーム
マチアス・エイマン
ウルド=ブラームは光り輝くそしてエイマンを従える女王然とした威厳あるダイヤモンド。
しっとり鷹揚とした曲調に溶け込むようなエレガントな踊りはいつまでも観ていたい美しさ、
静謐な中にも確固たる強さを思わせ、パリ・オペラ座の女性エトワールとしてのプライドを感じさせる
気迫のこもり様でした。ダイヤモンドカラーが散りばめられたチュチュが恐ろしいまでにお似合いです。
エイマンはひたすらウルド=ブラームに仕え、踊る箇所は少ないながら隙のないサポートで
煌びやかで厳粛な世界を描出。Bプロでは当初『ドン・キホーテ』を予定していて
エイマンの怪我の回復と体調を考慮して入れ替えたそうですが
結果としてこの2人のよる『ダイヤモンド』を鑑賞でき、むしろ幸運でした。
「マノン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー
熱演でしたがどうにもこうにも物語の世界に入り切れず。まず衣装がボロボロではなく
マノンのスカートは引き裂かれた跡もなく、デ・グリューのシャツは真っ白。
長期に渡る環境劣悪な船旅を経てのパ・ド・ドゥにどうしてみ見えなかったのです。
マノンの走り方が元気が良過ぎる子どもに思えてしまったのは私の鑑賞眼不足であり
最後の力を振り絞る執念のヒロインとコジョカルが解釈したからかもしれません。
コボーが誰かは分からぬがハリウッド俳優のどなたかにそっくり。
「アポロ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
サラ・ラム
フェデリコ・ボネッリ
ボネッリは一時よりややふくよかになった気がいたしましたが誰がどう頑張ってもお腹の筋肉を強調するあの上半身半裸なアポロの衣装を着こなすのは難しいのでしょう。
ラムは異世界から降り立ったと思わせる人間離れした不思議な雰囲気があり、
竪琴を頭上に掲げる姿も決まっていました。突き刺すようでありつつも軽やかなポワントワークにも惚れ惚れ。
「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ
今年2月の来日公演で同じ演目の全幕で鑑賞したお2人。
見かけは豪快そうでも(失礼)表現が細やかで苦しい胸の内を少しずつ曝け出していき
一気に終盤のドレス脱ぎへと突き進むラウデールと受け止めるレヴァツォフの盤石なパートナーリングはやはり良し。
― 第4部 ―
「じゃじゃ馬馴らし」
振付:ジョン・クランコ
音楽:ドメニコ・スカルラッティ
編曲:クルト・ハインツ・シュトルツェ
エリサ・バデネス
ダニエル・カマルゴ
期待を上回る楽しさ全開。バデネスの暴れん坊ぶりはパワフルであっても
カマルゴへの体当たり突っ込みが絶妙な加減で嫌味がなく観ていて爽快。
抜粋であってもシュツットガルト・バレエ団が誇る作品の魅力が十二分に伝わり、全幕で観たくなりました。
「ヌレエフ」より パ・ド・ドゥ
振付:ユーリー・ポソホフ
音楽:イリヤ・デムツキー
マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ
ヌレエフの生涯を描いた、ボリショイ劇場で昨年12月に初演されたばかりの全幕作品からのパ・ド・ドゥでよくぞ持って来てくださったと感激。
正直通して観なければ分かりづらいと思う点はあったものの
衣装からしてアレクサンドロワのフォンティンとラントラートフのヌレエフがリハーサルをしている場面と思われ
ヌレエフの孤高やヌレエフよりもずっと長く舞踊人生を歩んできたフォンティンの哀切が滲み出ていてもっと観ていたかったと思うパ・ド・ドゥでした。
来日公演での上演、難しければボリショイシネマでの上映を切願。
「アダージェット」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:グスタフ・マーラー
マリア・アイシュヴァルト
アレクサンドル・リアブコ
アイシュヴァルトとリアブコといえば前回急遽組んだとは思えぬ
『椿姫』1幕パ・ド・ドゥが忘れられないお2人。
時の巡り合わせなのか(ラドメーカーお大事に)今回も鑑賞。
派手さはなくても互いの心を確かめ合うようにじっくりと丹念に紡ぎ出していく過程、特にアイシュヴァルトの身体全体が物語る情感の豊かさに見入りました。
「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アレッサンドラ・フェリ
マルセロ・ゴメス
フェリの迸る表現は立ち姿から圧巻。1幕の恋する少女時代、悲劇に見舞われた2幕の情景もが見えてくるほど幕開けから全幕を観ている気分に。
劇的な起伏に富んだ音楽にも負けぬ、嘗て愛し拒絶された男性からの求愛を受け入れられぬ辛苦の思いが全身から溢れ
身体も衰えが見当たらず、このパ・ド・ドゥを象徴する柔軟な肢体から繰り出される背中の反らしも健在。
ゴメスは付け髭のせいか一見ココリコ田中さんがNHKのコント番組で演じる記者を彷彿させましたが
オネーギンの後悔が伝わる熱さをぶつける凄まじさがプログラムを盛り上げました。
「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
マリア・コチェトコワ
ダニール・シムキン
コチェトコワは世界バレエフェスティバルの大トリにしては無難路線過ぎた印象ですが
1つ1つをきっちり決めるところは万全。対するシムキンはたくさんの技巧を盛り込んでの派手路線。
嘗ての紅白歌合戦でいえばサブちゃんこと北島三郎さんの『祭り』が披露される順番ですから
やり過ぎなぐらいがちょうど良いでしょう。
指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル(「ソナチネ」「椿姫」)
かなりざっくりとした感想になってしまった点は失礼。若手が少ない、平均年齢が高いと
今年のサッカーW杯日本代表と似た前評判であった今年のフェスですが
蓋を開けてみれば演目の選択に疑問を抱いたプログラムはありながらも
総じてバランスが取れた、踊り手の良さが際立つ作品が揃っていたと思います。
異なるバレエ団同士で組まれたペアも何組かあった点もフェスならではの面白さでしょう。
ガラはより本編そして第5部!?も楽しみ度が増し、5時間半に及ぶ長丁場であっても
最後はお腹が捩れるほど笑った瞬く間の公演でした。詳細は後日書いて参ります。
帰りは上野駅のハードロックカフェにてパンダビールで乾杯。
翌日は朝から四日市へ向かうため、この日は1杯に抑えたのでした。
大阪ドン・キホーテをご覧になる際には道頓堀名物縦型楕円形観覧車もどうぞ。
バレエではないドンキも、大阪はひときわ賑やかです。
※8月17日道頓堀にて撮影。八尾プリズムホールで開催された佐々木美智子バレエ団
創立40周年記念公演『バフチサライの泉』鑑賞のため、ササキガラ鑑賞後夜行バスで新宿を出発。
16日から17日まで大阪におりました。この記事をアップする頃には東京に戻っている予定です。