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Channel: アンデオール バレエ日和
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本家に迫る民族舞踊団 東京バレエ団ブルメイステル版『白鳥の湖』7月1日(日)

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2週間前の話に遡りますが、7月1日(日)東京バレエ団ブルメイステル版『白鳥の湖』を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2018/swan/intro.html


オデット/オディール: 沖香菜子

ジークフリート王子 : 宮川新大

ロットバルト : 柄本 弾


【第1幕】

道 化:池本祥真

王 妃:山岸ゆかり

侍従長:永田雄大

パ・ド・カトル:吉川留衣、金子仁美、樋口祐輝、鳥海 創

アダージオ:三雲友里加


【第2幕/第4幕】

四羽の白鳥:金子仁美、秋山 瑛、安西くるみ、足立真里亜

三羽の白鳥:二瓶加奈子、三雲友里加、波多野渚砂


【第3幕】

花嫁候補:三雲友里加、加藤くるみ、榊優美枝、柿崎佑奈

四人の道化:海田一成、後藤健太朗、昂師吏功、山下湧吾

スペイン(ソリスト):奈良春夏

スペイン:安楽 葵、鳥海 創、芹澤 創、南江祐生

ナポリ(ソリスト):秋山 瑛

チャルダッシュ(ソリスト):岸本夏未、中川美雪、岡崎隼也、樋口祐輝

マズルカ(ソリスト):伝田陽美、森川茉央


沖さんはラインが細く長い手脚が美しくコントロールも効いた踊りで
ポーズ1つ1つから守ってあげたいと思わずにいられないオデットの悲しみをくっきり描出。
実はこの日うっかり双眼鏡を忘れてしまい4階席からでもきちんと鑑賞できるか心配を募らせておりましたが
上階にまで伝わる表現に驚き、沖さんに限らず他のダンサー特に3幕の民族舞踊にも通じましたが
顔ではなく踊りそのものに表情が備わっていると実感です。

オディールはほんのり可愛らしい魅力と騙すのが楽しくて仕方ない様子な悪女らしさを混ぜ合わせて王子を翻弄。
非常に華奢な体型ながらポーズの繰り出し方が力強くそして大きな瞳がギラギラと光り
弱々しさを感じさせない迫力がありました。

宮川さんはフレッシュ感がありつつもバネが強く盤石。絵に描いたような王子様とはまた異なる素朴な印象でしたが
オデットに出会い徐々に惹かれていく様子やオディールそして
ロットバルト軍団に操られると自身を見失って戸惑ってしまう過程が分かりやすく伝わりました。
にこやか盛り上げ番長な道化の池本さんも生き生き。一昨年鹿児島の白鳥バレエ団『ジゼル』で観た際に
Kバレエ退団が勿体無く感じる技術の高さに驚きを覚えておりましたが
東京バレエ団での活躍が一層楽しみで、大きな役が付いていくことでしょう。

新調した衣装姿もさまになっていたのは柄本さん。
中でも3幕の重厚な模様作りのデザインは着こなしが難しそうでありますが
濃いお顔と背丈、ややがっちりとした体型にも合い不自然さがありませんでした。
(タイツの王子より似合うのではと思う)
不気味な黒い魅力もあり、若くして魔の帝王になったのであろうかと想像させたキャラクターです。

ブルメイステル版白鳥の見どころといえば3幕における民族舞踊団が
全員ロットバルトの手下たちとして描かれている点。
オディール登場のファンファーレが鳴り響くと、展開を把握していても
いよいよ一味がやってくると胸が高鳴るものです。
例えば1幕は大勢の村人たちが一斉に躍動する新国立劇場の牧さん版に比べると
熱気は抑えめで優雅さが前面に出た鷹揚とした雰囲気、
3幕も花嫁候補たちの場面までは候補者には母親らしき人が付き添っている演出以外はさほど特異な点はありません。
しかし一味の登場によって空気が一変、そしてオディールやロットバルトと一丸となって王子を誘惑し
隙を与えず悪の色で染め上げてしまうこの切り替わりと単なる民族舞踊ぶつ切りお披露目会にならぬ一貫性が
ブルメイステル版の支持に繋がっているといえるのでしょう。
パ・ド・ドゥの間も終始王子を囲んでときには前屈みになりながら圧力をかけ、
民族舞踊の披露の最中にもオディールが時折見え隠れしながら王子の前に姿を現し
仮に王子が賢いとしても騙されても致し方ないと説得力を与えます。
オディールのソロが終わったときにはコーダの先陣を切るナポリ軍団が既に舞台上に立ち
まだまだ騙す気満々な様子も面白く映る演出です。

民族舞踊は前回2016年のバレエ団初演時よりも本家モスクワ音楽劇場に迫る張りがあり
どのパートも見応え十分でしたが特出していたのはナポリの秋山さん。
とにかくおどろおどろしく身動きする度に恐怖感を滲ませ背筋が凍り付いたほどです。
からっとした太陽を思わせる音楽とは全く逆向きの役柄ながら磨かれた表現といい魅せ方の上手さといい秀逸でした。
最初に斬り込んで存在感を示した奈良さんのスペインも邪悪なオーラが濃く爽快。

鍛錬の賜物であろうコール・ドも舞台を盛り上げ、ただ揃っているだけでなく
4幕の白鳥たちは容易には王子を許さず背を向けて歩き過ぎ去り
裏切られた悲しみを引き摺っている印象を与えてこの先オデットと王子運命はいかにと展開を一層気にさせました。

数ある白鳥の湖の演出の中でもドラマ性に富んだ描き方で
本家モスクワ音楽劇場の虜になるきっかけになったブルメイステル版ですが
今回の再演での良い仕上がりに、更に上演重ねていけば東京バレエ団のクラシック作品における
得意レパートリーとして定着していくと思っております。
既に再演が待ち遠しく感じており、次回の上演が今から楽しみです。

ところで、先日たまたま2004年5月号のダンスマガジン(表紙はエフゲーニャ・オブラスツォーワ)を読んでいた際に
面白い記事を発見。上野水香さんが東京バレエ団への移籍会見記事の見開きで、隣のページには
ユースアメリカグランプリの日本予選で入賞した宮川さんの写真が掲載されていました。
上野さんは東京バレエ団移籍直後から主役級ダンサーとして既に活躍され現在と全く変わらぬ容姿。
対する宮川さんは当時小学生。それはそれはあどけない宮川少年の写真に驚き
今や同じバレエ団で互いに主役を任されている現状が感慨深いと思えた次第です。

NBSのホームページを眺めていたところ、バレエの祭典のお知らせが発表。
https://www.nbs.or.jp/saiten/
会員ではないが、先々の公演予定が判明するため参考にはなります。
英国ロイヤル、全幕が『ドン・キホーテ』のみであるのは確かか?
私のようにさほどロイヤルを観ないが興味はあるロイヤル素人からすれば
マクミラン作品を持ってきて欲しいと願うのだがひょっとしてもはや時代遅れ?
いや、つい最近もシネマで『マノン』を観たときには
若手からベテランまでが誇りに思いながら踊っていると画面越しにも伝わってきたのだが。
知人のロイヤル博士に尋ねようと思います。

そして朗報と思って良いであろう、パリ・オペラ座が2020年の来日公演の1本が『ライモンダ』全幕。
ヌレエフ版の衣装装置は売り払ったと耳にしたがヌレエフ版を再構築するのか、気になるところですが
我が鑑賞史上初、パリオペラ座に連日通いたいと思わせる演目です。


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ここ数日ほどの猛暑ではないが帰りは暑気払いで白鳥ならぬ白ビール。

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モスクワ音楽劇場からもボリショイ劇場からも地下鉄で向かえるモスクワのルジニキスタジアム。
15日まで開催されていたサッカーW杯ロシア大会で開幕戦や決勝戦他数試合が行われた、
約60年前に建設された歴史あるスタジアムです。(2013年に閉場し、改築工事後2017年に再開場)
https://www.soccer-king.jp/news/world/wc/20171124/661709.html

写真は露天が並ぶ観光名所の雀が丘から眺めた際にユニークな形状が目に留まり、何も分からず管理人が撮影。
開幕戦をテレビで視聴していたときに見覚えのある建造物と脳裏を過ぎり
ブログを遡ったところ撮影した写真を発見、思い出したのでした。
サッカー音痴な管理人、W杯は試合結果よりも国旗のチュチュのような衣装姿の女性用たちによって
出場国を紹介した開幕セレモニーやオペラの序曲を想起させる仰々しく華やかなウルグアイ国歌の鑑賞、
そして各スタジアムの場所紹介で映る街並みや玉ねぎ型屋根の聖堂の美しさ、
はためくマトリョーシカの幟を楽しんでおりました。加えて大会マスコットの狼の名前がいつになっても覚えられず
狼太郎と呼んでいるともう少しセンスの良い名付けはできないのかと周囲に笑われた。
名付けのセンスはリラの精を見習わねば。





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