11月3日(金)、NBAバレエ団アトリエ公演『ドン・キホーテ』夜の部を観て参りました。
http://www.nbaballet.org/performance/2017/atelier_nov/
1幕(ジプシー野営地まで)のキトリ役は岩田雅女さん。
登場時から大ジャンプで駆け出し最初からエネルギー大全開ながらスタミナも切れず、終始客席を沸かせました。
ホールがやや小さめであったため、持ち前の身体能力を考えると
舞台を超えて駅前の西友まで飛んで行きそうな勢いすら感じさせます。
力強い中にもエレガントな魅力もチラリと覗かせ、ポーズ1つ1つが気持ち良いほど美し。
周りを気にかけつつもお生まれの関西の血も騒いでとにかく盛り上げて広場を一気に活気付ける
様々な魅力が凝縮したヒロインでした。
当初予定していたバジル役のダンサーが怪我で降板し途中で変更が生じていたものの
会話が聞こえてきそうなお芝居にも引き込まれ、
しっかり者なキトリとやんちゃで活発なバジル(新井悠汰さん)といったお似合いな熱々カップルです。
3幕(居酒屋から結婚式)までのキトリは井上優紀さん。小柄で可愛らしい雰囲気を持ち
バジルの狂言自殺では一足早く状況を察して皆を安心させ大泣き演技をしたりと
頼もしい統率力も持ち合わせていました。
花が咲いたような笑顔も印象深く、3幕では登場しただけで舞台の明かりが倍増しになったかのような眩しさが零れ
祝福感に満ちた式へ導いていました。
NBAドンキの結婚式はキトリ、バジルともに白地に赤と金が入った爽やかなデザインです。
サンチョ・パンサの河野崇仁さんは幕が開く前から舞台から客席に飛び込み、手品を披露。
観客の心を瞬時に掴み、これから始まる楽しい物語の世界へと連れて行ってくださいました。
食べ物が大好きな性格を舞台のあちこちで露わにしながらも
ご主人である、何処かとぼけた品あるドン・キホーテ(西村康さん)に忠実な姿勢は街の人々にも伝わっているのか、
愛すべきキャラクター性を思わせます。
決して嫌な役にならず楽しませてくださったのは清水勇志レイさんのガマーシュ。
厚化粧の下には美形な貴族の風貌が隠れていると想像させ、
キトリを愛する裕福な貴族と聞くや否や、玉の輿を夢見る街の女性数名がときめきかけていたのも頷けます。
結婚式では全員が和解し、新郎新婦を温かく見守りながら祝福。
演出によっては貴族の館が会場で父親不在な版もありますが、ここは親族もガマーシュも出席して欲しい場面です。
夢の場は淡い色合いの衣裳の数々に彩られ、すらりとした抜群のスタイルの持ち主でピンクと水色の珍しいデザインの衣裳をもしっくりと着こなす廣田真彩さんのドルシネア姫と
エメラルドグリーンが映え穏やかさと慈しむ心が見えてきそうな
森の女王の渡邉牧子さんの大変美しいお2人が場面を牽引。
大谷玲凪さんの闊達で愛くるしいキューピッドは場の空気をがらっと変える存在感があり
戸惑うドン・キホーテに手を差し伸べる心優しい姿も刻まれました。
コール・ドもよく揃い、薄いピンク色のチュチュの連なりが目の保養に。
出演者人数の都合で生じるアトリエ公演ならではの楽しみもあり、
ジプシー野営地での人形劇をキトリやバジル、ガマーシュたちが熱演。
不思議な光景に客席がざわつきましたが、頬に赤丸を塗ってカクカクした動きで惹き付ける
何処かで見たようなお人形さんたちに次第に見入っていきます。
ドン・キホーテとサンチョ・パンサも、広場で会った愛しの姫君と個性豊かな人々であろうかと
見覚えのある様子で、結果としてとても面白く感情移入しやすい演出でした。
舞台美術はポスター写真にも載った、本公演使用の海景色と街並みのコントラストが鮮やかな背景を観たいと
思っておりましたがホールが小さめのため搬入が難しかったもよう。
しかしエッチング画のような黒い線で繊細に描かれた街並みが広がる背景もまた良し。
アトリエ公演は今年6月の『白鳥の湖』に続いて2度目の鑑賞ですが
正団員を目指すひたむきさや情熱に触れ、この度もエネルギッシュな舞台を堪能。
全幕公演開催はモチベーション向上にも繋がると思われ、来年以降も継続して開催していただきたいと願います。
現在本家のバルセロナは独立投票で混乱まっしぐらですが11月上旬の練馬に現れたバルセロナは平和で晴れやか。
降り注ぐ陽光の如き若いエネルギーが溢れる公演でした。
次回は来月のバレエ団公演『くるみ割り人形』を鑑賞、今から楽しみです。
帰りは練馬駅近くのスペイン料理店にてバルセロナビールで乾杯。
1人でもふらりと気軽に入り易く、気分はドンキの居酒屋の客です。