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6月9日(土)から17日(日)まで、新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』を計5回観て参りました。皆勤です。
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/sleeping/
※キャストは後日掲載いたします。
※今回こそは短くなるよう努めて参りますが、配役が多く難しいのは目に見えております。
現実には仙女も王子も現れませんので、罰として次回公演こどもバレエ『シンデレラ』で
お義姉さんたちからいじめられぬよう気をつけて過ごします。
米沢さんのオーロラは麗しく煌々とした輝きを纏い、16歳の誕生日を迎えた登場で既に立派な王女様。
安定且つ1つ1つのジャンプも高さがあって活発そうな面も持ち合わせていた点も愉しく映り
色っぽさもあるようで闊達さも備えるなど様々な魅力を放っていました。
グラン・パ・ド・ドゥでは女王然とした威厳に圧倒され、国王亡き後は君主として活躍し国は安泰でしょう。
成長過程を細やかに表現していたのは前回と同様小野さん。1幕では無邪気にはにかむ表情が何とも可愛らしく
本当に16歳の少女に見えたほど。純粋に真っ直ぐ育ったお姫様そのものでした。
幻影での伏し目がちで消え入りそうな儚さにも魅せられ、王子の救出決意にも説得力を与えます。
3幕では風格ある姫君で未来の妃お披露目会とも呼べそうな厳粛たる宴。
ポーズの1つ1つが厳格でちょっとした繋ぎ目においても徹底した優雅さを貫く姿に天晴れでした。
前回とは打って変わり好印象を残したのは池田さん。せっかく親しみ易い可愛らしさを持ちながら
2幕での表情がガチガチに強張り、もはや違う物語を上演していると思えてならなかった昨年とは一変。
踊りも表情の作り方も柔らかく丹念になり、微睡む雰囲気がしっかりと出ていました。
木村さんはおっとり淑やかな姫君。リラの兼任も影響したのか前回は最初から貫禄が
出過ぎてしまっていた感がありましたが、今回の1幕は可憐で愛らしい16歳のお姫様。
幻影での段階を経て結婚式では100年の眠りの中で芽生えた王子を慕う感情と
一国を担う者としての使命感が凝縮したような確固たる強さを思わせました。
2幕では溜まった疲労もあってか所々腕がくねっとしてしまい、抑制にやや苦戦していた様子でしたがごく一部。
恵まれた肢体を生かした、華麗な姿を終始届けてくださいました。
井澤さんの王子はオーロラの幻影を見た瞬間から恋する昂ぶりが前回よりも伝わり好演。
少し内気で物静かそうな佇まいがまさにおとぎの国の王子様風きらきら系華やか容姿と溶け合い
ロマンチックな雰囲気も増した印象です。『不思議の国のアリス』での配役が気になるところであります。
福岡さんはここ最近の演目が三大バレエ始めクラシック系が続いているせいか
一層ノーブルな要素が濃くなり、表現も更に豊か。
オーロラの幻影を目にした際には細田さんリラの精と会話が聞こえてきそうな興奮ぶり。
いかにして近づいたら良いか、教えを乞う姿も印象に刻まれました。
3幕グラン・パ・ド・ドゥでの勢いと優雅さ双方が合致したフィッシュダイブもお手の物で
小野さんとの強固なペアを再確認。
奥村さんは私の中での勝手な「永遠の少年」(失礼)イメージからは脱皮しつつあり
上階席からでも貫禄オーラ放出の王子。前回はやや厳しいかと思った2幕の胸開きワイルド衣装もさまになり
(衣装については後ほどあれこれ綴ります)鉄砲も違和感なく運搬。
当初は首を傾げていた池田さんとのペアも、昨年の妙な振付てんこ盛りな『くるみ割り人形』を
難なくこなしていた姿から実は息が合う2人ではないかと考えを改め、
凍り付いた姫の心を溶かそうと奮闘している『トゥーランドット』な2幕となってしまった前回とは違って
救いを求める姫の幻影と追いかける王子がぴたりと嵌り今回は目を見張りました。
※これより長くなります。休憩を挟みお茶でも飲みながらどうぞ。
今回主役陣では唯一初役であったのが渡邊さん。(昨年はムンタさんのアンダーは務めていらした)
眠りは白鳥ほどドラマもなく、ひたすら夢見るおとぎ話であるためビジュアルが舞台を左右すると想像し
先月バーミンガム・ロイヤルの来日舞台での新国立きらきら系先駆けであった厚地さんの好演も記憶に新しく
少女漫画系容姿の井澤さん奥村さんが優位かと脳裏を掠めたときもあったのは事実。
後にも述べますが初日と16日の昼に務められた昨年に続いての韃靼ロシア王子における余りの絵になる姿や
着物を着れば昭和の若旦那、テレビドラマに例えれば刑事警察物に嵌るであろう渋い容姿を考えると
実のところ全幕のデジレ王子に関しては少々心配もありました。
ところが、2幕の登場における鷹揚とした歩き方や一目で周囲より高身分と分かる誇り高さ
気品と強そうな芯両方を持ち合わせた、猟銃を担いでいても違和感皆無な王族なるお姿が
昨夏の『ジゼル』と同様作品に調和していて目も心も一気に持っていかれ骨抜きにされて恐れ入った次第です。
昨年の教訓も踏まえて今回は全日程目を開けて鑑賞に臨んだ幻影の場においては千秋楽が傑出。
観客からしたら既にお腹一杯なプロローグと1幕を終えた後、しかも1幕からは休憩無しで突入する幕でありながら
もやは瞬き不可能なほどに魅せられ(心を満たした潤いが身体中を循環したのか目も乾かず。
熟睡中のオーロラに対し快い目覚めでございます)
憂愁のソロからリラとのやり取りやオーロラの幻影に恋に落ちた瞬間に至るまで
身体全体から感情が伝わり1つ1つ細かく練り上げられた厚みのある且つ
空間を大きく使う表現に度肝を抜かれてなりませんでした。
全ての表現が心に訴えかけ、しっとり静寂さが漂う場面において
こうも夢見心地になって引き込まれ目が冴え渡ったのは滅多になく
新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』では約11年半ぶり。2007年2月の山本隆之さん以来です。
これまで時折変に可愛らしくなってしまい気にかかっていたメイクも
今回は生来の端正な容貌を生かすラインの描き方で安堵。
3幕での将来の国を担う人物であるに相応しい骨太さのある姿や姫を優しく包むサポート、
柔らかで強い跳躍にも目を奪われ3時間半が瞬く間に過ぎて行きました。
さてお待たせいたしました。当ブログ名物、とは言ってはいけないかもしれないお馴染みの髪型考察ですが
今回は即座に丸印カードを掲げた次第であります。
やや斜め分けではあるものの強力接着剤で固めたような分け方ではないため
向田邦子ドラマの純喫茶に腰掛けていそうな昭和のサラリーマン状態にもならず、
昨年のゴールドのような前髪だけ波打った不思議な形状にもならず、ほどほど自然な宝塚男役風スタイル。
そして助けに繋がったのがリボン。どんな髪型でも貴公子らしく見せる装飾なのです。
そう思わせたのは遡ること7年前、バーミンガム・ロイヤル来日公演『眠れる森の美女』で
デジレ王子を務めたツァオ・チーさん。髪型はぴっちり七三分けにも関わらずリボン1つで西洋の王子にきちんと見え驚きを覚えたと記憶。チーさんは端正なお顔立ちでありながらこのときの髪型だけ見ると
芸人のスギちゃんやオードリーの春日さん或いは一昔前のサラリーマンを彷彿とさせるのですが
リボンを装着するだけでがらりと一変。リボンマジック恐るべしと唸った管理人でございました。
今回渡邊さんは先述の通り嘗て時々ご披露の不自然な髪型ではなく、加えて思い起こせば
トゥールーズ時代には『危険な関係』のヴァルモン子爵や(こちらも良し)『三銃士』のポルトスといった
長髪の役柄を何役か務めていらっしゃり、写真や映像を見る限り非常にお似合いだったのです。
そのため韃靼帽子付きのロシアの王子やサッカーJリーグガンバ大阪のマスコット
或いはイワトビペンギン風の頭飾りに覆われた青い鳥、と
4回の頭を覆う被り物の役柄を経てのデジレ王子で当初募っていた髪型心配も千秋楽前には消え失せたのでした。
そして迎えた千秋楽でのご登場。案の定胸を撫で下ろし、無事鑑賞体勢が整ったのであります。
『白鳥の湖』に続き、木村さんとのペアも頗る好相性で
魅せるのが難しい、静寂に包まれたロマンティックな2幕において
幻影と人間の関係を崩さずとも感情を丁寧に重ね合わせながら共に世界を作り上げて
観客を吸い寄せ惹きつける力量を備えたお2人は賞賛に値するでしょう。
賛否両論あるのは目覚めのパ・ド・ドゥ。どのペアもパートナーシップは良好であり
また100年の眠りから目覚めてパンパカパーンとファンファーレに乗せてそのまま婚約、結婚式へと向かうのは
確かに辻褄が合わず、愛を深めるパ・ド・ドゥを挿入したい気持ちはよく分かります。
ただ先月鑑賞したバーミンガムロイヤルでのピーター・ライト版はすっと感情移入できたはずが
やはりイーグリング版では困難でありました。
まず振付が中途半端に官能的で、会って早速『ロミオとジュリエット』までとは言わないが
身体を絡め合う路線も如何かと、幕切れの口づけも必要だろうか思わずにいられず。
そして一番はオーロラ姫が何時の間にかネグリジェに変わっている点に首を傾げてしまいます。
チュチュのまま運ばれてそのまま宮廷はリラの精によって魔法がかけられ100年の眠りについたはずなのです。
侍女が着替えを持って見舞いに来るのも不可能。ではいったい誰が着替えさせたのか。
そうだ、「家政婦はリラ」、でありましょう。
それから目覚める場面で今回初めて気づいたのは、王子がオーロラの寝室を訪れると
姫は頭の上にまで布を掛けているのです。しかも呼吸と乾燥予防のためなのかに誰かさんが布に所々穴を開けて
目や口元の部分は見えていて上階上手側から鑑賞すると顔パック、角度によってはパンダに見えてしまうのです。
公演期間中にシャンシャンが1歳を迎えたばかり、と言いたいところだがそういう問題ではない。
では誰が都合良く穴を開けたのか。「家政婦はリラ」、頻繁に見舞いに来ていたに違いありません。
妄想はほどほどにしてリラの3人もそれぞれ個性ある好演。木村さんはよりエレガントな魅力が備わって
妖精リーダーとしての存在感も強まった印象。
慈愛が全面に出ていたのは細田さん。邪念も何もかもを優しさで包み込み、
マイムも雄弁で指先から花びらが零れ舞い落ちるかのような愛情の深さに陥落です。
寺田さんは姿形で魅せ、少し澄ました表情であっても立ち振る舞いに自然と惹きつけられるリラでした。
カラボスはもはや鉄板級、十八番ともいえる造形で臨む本島さんは圧巻の凄みと異次元の美しさ。
黒い色で染め上げ客席を沸かせました。
初役の渡辺与布さんの表現も光り、身体の底から突き出される冷ややかさに身震い。
元は優しさのある妖精であったが悲しい経験から悪の精に変身してしまったのであろうと想像を掻き立てられます。
どうしても本島さんと比較されてしまい大変なプレッシャーもあったに違いありませんが
渡辺さんのカラボスも讃えられるべき見せ方であったと思います。
お面装着で顔と名前が一致しなかったのは悔やまれますがカラボスの手下たちの男性陣は昨年より動きが機敏になり
お頭登場前から飛び出して宮廷を混乱させ、音楽にぴたりと合わせて
王妃にお尻を出して振りながらからかう姿には思わず笑ってしまったほどです。
フロリナは米沢さんの歌声が聴こえてきそうな喜びに溢れるエネルギーに場内喝采。
柴山さんのきちっとしながらも踊りに表情が益々出てきた点も拍手で池田さんの愛らしい軽やかさもなかなか宜しい。
青い鳥は渡邊さんが出色で昨年と今年原作で読んだ、気高く麗しい王が変えられた姿との記述が見事に嵌って
待ち焦がれた配役に感激。ふわっと滞空時間の長い跳躍と繰り出すポーズも雄々しく美しく
DVD映像として残るのが喜ばしい。原作によれば『白鳥の湖』、『シンデレラ』、『白雪姫』、
『ロミオとジュリエット』を足して割ったような互いに恋に落ちてからは試練続き。
密会、策略、裏切り、誤解を乗り越え出会ってから10年以上の時を経て結ばれる壮大な物語であり
(1962年出版のペロー童話集にはフロリーヌ姫とシャルマン王と翻訳)
円広志さんによる1978年の名曲『夢想花』の歌詞の如く単に跳んで跳んで回って回っているだけの
テクニック披露ではなく相当な表現を込めなければ務まらない役柄。
跳躍の多い振付のみならず原作の背景を考えるとこれは渡邊さんにぴったりであると
昨年の上演時には当然抜擢されると想像しておりましたがまさかの落選でびっくり。(所詮勝手な思い込みですが)
主要キャスト発表当日にカレー店青い鳥へ直行してしみじみビールをいただき、
小さな青い鳥の置物を眺めつつカレーに癒してもらい帰宅後は布団に突っ伏して繰り返し青い鳥の曲を聴きながら
来年こそはと信じて参り今回に至ったのであります。
井澤さんは華麗なる鳥、奥村さんは瞬発力と晴れやかさがあり
メイクも皆さんお顔立ちに沿った描き方であった点も良かったでしょう。(衣装については後ほど)
そうは言っても若手からの抜擢もあって良いのではとも思うのが正直な心境。
きっと大原監督は原作を読み込んでいらして主役級に任せるべき役柄と判断なさったと思いたいところです。
プロローグの妖精たちでは凛とした潔さに思わず背筋を伸ばしてしまう柴山さんの勇敢、
コール・ドから抜擢された優美の朝枝さんのにこやかな表情と大らかな存在が目に留まりました。
強さやゴージャスで色っぽい雰囲気も湛えている朝枝さんの妖精からは数年後にはリラも観たい気持ちにさせます。
宝石は特に女性ダンサーは皆煌びやかで中でも細田さん、五月女さん、飯野さんが何処を切り取っても盤石万全。
細田さんの全身から放つ繊細な輝きは手を合わせたくなる高貴さがあり何度でも観たくなります。
猫は益田さん、宇賀さんペアが大胆で面白みのある踊りで客席を盛り上げ
お子さんの観客たちもすっかり虜になっていた様子。
赤ずきんは広瀬さんは軽快、奥田さんはどこか薄幸で守ってあげたくなる女の子、
五月女さんは持ち前のテクニック炸裂で個性様々。以前は狼から襲われそうになるばかりでしたが
今回からなのか赤ずきんも狼を真似て脅かしてしまう頼もしい表現も誕生。時代の流れかもしれません。
親指トムは福田さんがベテランの誇りを見せ、切れ味鋭くもほわっとした愛嬌や純朴さもあって
これが観たかったと心からの拍手を送りました。
リラの精たち、オーロラの友人たちは世界レベルの美の宝庫。
ややヘンテコな衣装に溢れていても最終的には作品を格ある舞台へと導いた立役者と呼んでも過言ではありません。
そして「日によっては」私の中で主役級として捉えていたのは4人の王子。
お国柄が表れた衣装が新国立ダンサーによく合うデザインで、恋に燃える若々しさも引き出され
初演の頃から注目しておりましたが今回も表現、衣装ともに観察が楽しい役柄。
火花を散らし合いつつも団結して姫をサポートし、
前へ出たがる王子もいれば静かに悔しさを噛み締める王子もいて目が離せませんでした。
昨年の再演で全幕の中で最たる衝撃であった渡邊さんのロシアの王子は今回も健在で
東方韃靼系王族の帽子と装いに目元が鋭く力強い瞳の品ある醤油顔がまあ似合う。
弓矢を手に馬に跨り草原を駆けてきたであろうと容易に想像できます。
よくぞアジア寄りのロシアにデザインしてくださったとこの衣装に関しては褒めちぎったもので
今年書店で見つけた、似通った韃靼系王子が姫を抱いて森の中を馬で駆けている絵が載っていた
ロシア民話の挿絵画集をきものsalonと同様にすぐさま購入してしまったのでした。
今回は他日井澤さんがロシアに入っていたのは意外でしたが、ヨーロッパの血が流れていそうな洗練系。
よくよく観るとロシア王子も帽子の縁には真珠が連なり中央には『風の谷のナウシカ』の人物の頭巾のように
大きめの宝石が装着していてベルトにも小さな宝石が埋め込まれた豪華なもの。
昨年も注目していたはずがなぜ気づかなかったか、そうだ、全日程顔ばかり眺めていたのだ。
井澤さんといえば昨年の通称リボンの騎士ことイタリアの王子の白い衣装が絵になる容姿で
きらきらイタリア井澤さんと渋みあるロシア渡邊さんが並んだときの存在感たるや
金閣寺VS銀閣寺の同時隣接建立な対決が忘れられず、今回叶わなかったのは残念でした。
(映像に残して欲しかった)
振付で一部不自然と思えたのは姫が針に刺されて倒れカラボスが再度登場したとき剣を手に王子たちが現れた場面。
求婚した姫を襲った妖精ですから1秒でも早く倒したいのが本音でしょうに
剥き出しの剣をあたかも鞘に入っていると見立てて低い姿勢で走り込みながら登場し、
一斉に抜いてカラボスに攻撃を試みるのです。リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得し
今年のセイコーゴールデングランプリ大阪の男子400mリレーにも出場した
飯塚選手、山縣選手、桐生選手、ケンブリッジ選手が入場時に行った刀を抜くポーズに似ており
型を重視しているようにしか見えずまるで新国時代劇。
王子たちの所作は凛々しく颯爽としていましたし、日によっては実際着物が似合う王子もいましたが
イーグリングさんは新渡戸稲造の書籍を愛読なさっているのか時代劇をご覧になっているのか
真相は定かでないものの不自然さが残る場面でした。
時節柄サッカーW杯開催中ですし、「サムライ」出現でも良いかと無理矢理納得。
倒れた姫を打ち合わせたかのように難なくしかも階段上り付きであっても
運び方がスムーズであったのも不思議といえば不思議ですが担架では味気ない幕切れとなってしまいますし
ひょっとしたら近年の救命救急講習の先駆けとして王子たちは日頃から運搬訓練をも受講していたのかもしれません。
衣装に関しては目が慣れてはきたとはいえ何度観ても突っ込みどころ多数。
プロローグの女性貴族は茶色いメイド服にエプロンを着けた召使いにしか見えず、
頭上は三角形に小花が散らされているものの花の数が多いせいかイタリアンジェラートな形状です。
男性貴族はかなり濃いめの赤や青の装いで、復刻版で目にしたプティパ版初演の頃の色彩感。
今年はプティパ生誕200年にあたる記念年でオマージュと言いたいのかそういう問題ではない。
対する妖精たちは薄めの色合いで渦巻きな模様始め現代感覚が混ざっており
衣装同士も時代がバラバラに感じてなりませんでした。
リラの昭和水泳帽は知人が紫陽花と表現。そうか、薔薇の花咲く季節は日本は梅雨時。
考慮したデザインなのでしょうと言いたいところだがそうではない。
花の数をもう少し減らしティアラに沿って線を描く程度にした方が見栄えは良さそうです。
重厚絢爛な装置に対しカラボスと森の精たち、宝石たちを除いては衣装全般が淡いのも謎であります。
ご意見で多々聞かれたのはプロローグの妖精ソリストたちの同色衣装でしょう。
お願いだから染め直してくれと何度観ても思います。結局未だに妖精名が覚えられない状態で
ティアラと胸元の石の色が違うと言われましても余程の前方席でないと分かりません。
1幕のオーロラもピンクであって欲しかったと、白いエプロンを
チュチュ化したようなデザインを目にするたびに感じます。
もはやイーグリング版衣装の突っ込み代名詞となったのは青い鳥の透け透け鯉のぼり。
予算が足りず生地が買えなかったのかと哀れにすら思えますが
ただ原作で青い鳥は策略によって羽を毟り取られる場面があり、忠実に再現したのかと思いたいところだが
きっとそうではない。「日によって」はダンサーの腕の筋がくっきり見えて眼福となるわけでもなく
予算が下りずに布買えず、結果は透け透け鯉のぼりな印象がまさってしまいました。
先にも述べた通り、イワトビペンギン或いはガンバボーイ風の羽飾りも風変わりではあるが
サッカーW杯日本代表にガンバ大阪の選手も含まれていますから良しとしましょう。
一部男性の衣装の胸が開き過ぎる点も気がかり。デジレ王子も他の貴族と異なり胸元が大きく開いたデザインです。
きっと貴族たちの集団を離れ、猟銃を担いで1人獅子奮迅の如く森を駆け回っていたために暑くなり
ボタンを外してしまったのでしょう。そんな野性味にも伯爵夫人は惹かれて
怪しい関係へと結び付いたと想像いたします。パンドラの箱と同じで開けてしまったのは仕方なく
時折王子の胸筋観察に勤しみました。(但し千秋楽限定)
貴族や森の精たちのコール・ドはどの日も上出来。中でも森の精たちが
終盤で次々と立ち上がって道を作っていくように導く流れは息を呑む幻想性があり
衣装は残念ではあってもいよいよオーロラ姫と王子が出会う瞬間が刻一刻迫っていると胸を高鳴らせました。
ワルツでペアになった男女がリフトしながら舞台に登場する序盤は
祝福感を盛り上げ、いつ観てもわくわくとする場面の1つです。
船舶免許取得済みであろうリラの舟が無駄に大きい点や、赤ちゃんオーロラが目をぎゅっと瞑り過ぎていて
可愛らしさがない点など挙げればキリがありませんが、この作品を全幕上演できるのは
人数が揃っているのは勿論、バレエ団の層が男女ともいたく厚い証でしょう。
2年連続での再演がありましたからしばらくは上演がないと思われますが、数年後の再演も楽しみになってきました。
プロローグのカヴァリエから目が離せず、ローズアダージオで興奮と集中度が極致に達し
初日と2日目を除いては2、3幕はぐったり気味であった昨年を教訓に鑑賞エネルギー配分に用心。
初日の着物企画に始まり、最終日は4年ぶりにシーズンエンディングパーティー参加と新鮮なイベントにも恵まれ
しばらくは薔薇が咲き誇っていそうな状態です。
昨シーズン最後を飾った、それまでの28年間約650回から700回に及ぶバレエ鑑賞歴で
5年ぶり3回目に涙した『ジゼル』に続き忘れられない2017/2018年シーズン締め括りとなりました。
そして今シーズンもお目にかかれた皆様、本当にありがとうございました。
初日と千秋楽以外は服装がカジュアル過ぎ、落差のある格好で失礼いたしました笑。
こどもシンデレラもありますが、来シーズンもどうぞ宜しくお願い申し上げます。
※時期は未定ですが、小野さん、福岡さん主演日を収録したDVDが発売されます。どうぞご覧ください。
今回は私も購入いたします。
※ご参考までに。昨年の新国立『眠れる森の美女』感想です。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/5513-7b31.html
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透け透け鯉のぼり衣装はいただけませんが、鯉のぼりは中国に由来すると知り
こうなったらこじ付けも兼ねて余韻に浸ろうと青い鳥鑑賞後のカクテルにブルーチャイナ。何度も来ているお店ながら
いつもビールやウイスキーを選びがちであるためカクテルを飲むのは初。甘く爽やかな味でございました。
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公演限定カクテル。オーロラ姫、お布団は頭まで被っていません。
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千秋楽、主演キャストを眺めながらのカクテル。
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薔薇の花付きヨーグルトムース。爽やかな甘さです。
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16日は昼夜2公演、観客も体力気力勝負です。夜公演までは極力動かず体力温存が一番。
劇場内のマエストロで昼公演や初日、2日目の感想を語り合いつつ開演を待ちます。
海老と枝豆もトマトクリームパスタと白ワイン。最後はデザート代わりにキールもいただきました。
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千秋楽終演後はシーズンエンディングパーティーへ。4年ぶりに参加です。
ウエルカムドリンクとして選んだ白ワインを飲みつつ語りつつ、開会を待ちます。
前々回初めて参加した2013年も同じ会場でしたが、パーティーに慣れておらず
またペンギン・カフェを上演したシーズンであったため
トレーに飲み物を乗せて運ぶレストランスタッフの姿が視界に入った瞬間『ペンギン・カフェ』の世界が実在と
言わんばかりに何杯も飲み、開会の頃にはほろ酔いに。
当時を教訓に、そして自身はもう若くはないと言い聞かせ今回は摂取を控えめにしたのは言うまでもありません。
監督やダンサー始め、スピーチ者は黒い台の上に乗って話していたためまるで朝礼状態。
ただどのダンサーも今シーズンを振り返って来シーズンを見据えたスピーチを上手になさっていて
特に本島さんの「役に生かされてきた」との言葉が印象に残りました。
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昨年は着席形式だったそうですが、今年は再び立食形式に。好物が揃ってお皿に載っています。
この日まことに嬉しかったのは、歓談タイムで順番を待っている際
偶然前に並んでいた中高生ぐらいの女性とお母様との会話からして
ひょっとしたら共演された方であろうかと思い話し掛けてみたところ
足を運んだ発表会に出演していた生徒さんだったこと。
驚いていらっしゃいましたが、間近で見たゲストのリハーサルの話をしてくださりしばし会話が弾んだのでした。
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エンディングパーティーのあと、3人で打ち上げ。
カウンセラー友人2名はソフトドリンクを選びオレンジとクランベリー。
私は王道ハイボールで乾杯。今年に入ってから店長さんに顔を覚えられてしまった。
余韻に浸ったままいつもニンマリした顔で注文に行っているためかもしれません。(怪しい客だ)
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公演期間中に今回は嬉々として利用したカレー店青い鳥へ。
ビールを飲んでいると青い鳥がカウンターまで会いに来てくれました、
ではなくここに座った客を迎えてくれる鳥さんです。
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鯖のココナッツカレーと大根の和風カレーの2種盛り。渋めの組み合わせでございます。
複雑に絡むスパイスが心も身体も癒してくれました。
※余談ですが。期間中最もツボに嵌って可笑し?かったこと。
母が着物イベントについて気にかかったようで、共催の京都きもの市場の社長は若い男性で驚いたとの話をした後に
会場やトークショーの写真を見せたときのこと。木村さんは見るからにお姫様が似合う華やかさがあり
すぐにダンサーと分かった様子。そして並んで座っていた渡邊さんを見て一言。
「この人が社長さん?」
どうやら、渡邊さんの素顔私服姿の第一印象はダンサーではなく着物会社の社長だったようです。
まあ実際着物の着こなしは自然でお似合いですし、経済雑誌の経営者インタビュー記事写真に載っていそうな
渋い貫禄もあり聡明そうですから分からなくもないか。