Quantcast
Channel: アンデオール バレエ日和
Viewing all articles
Browse latest Browse all 388

ボリショイ・バレエ in シネマ 2018-2019Season『黄金時代』

$
0
0
5月29日(水)、ボリショイシネマ『黄金時代』を観て参りました。
https://liveviewing.jp/contents/bolshoi-cinema2018-19/


音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
振付:ユーリー・グリゴロ―ヴィチ
台本:ユーリー・グリゴロ―ヴィチ、イサーク・グリークマン
出演:ニーナ・カプツォーワ(リタ)ルスラン・スクヴォルツォフ(ボリス)
ミハイル・ロブーヒン(ヤーシュカ)エカテリーナ・クリサノワ(リューシュカ)

カプツォーワのリタは外では癖のない清廉な女性らしくオレンジ色の
シンプルなレオタード風ワンピースもお似合い。危うさは一切感じさせないにも関わらず
勤務先の酒場では一変、毒々しい匂いを漂わせる大胆華麗な踊り子に変身し
ボリスが戸惑いを隠せなかったのも納得。
カプツォーワの主演舞台は来日公演では恐らくは実現しておらず
映像とはいえ念願叶っての鑑賞は喜びを覚え、
端正でエレガントな趣きと情感溢れる表現両方を備えている印象で
また筋肉の付き方も美しく、セクシーな衣装も様になる姿に何度も鳥肌が立ったほどです。
純情さが光るボリスとのパ・ド・ドゥを披露したかと思えば
ヤーシュカとの危うさあるパ・ド・ドゥと踊り分けも見事、2人の間で苦悩する表現がまた胸に刺さりました。
ちなみに収録日は誕生日であったとのこと、幕間に司会進行のカテリーナ・ノヴィコワさんより祝福されていました。

スクヴォルツォフのボリスは闊達な漁師の青年で、
上下白い衣装は一昔前のテニス愛好家にも見えなくはなかったが
混じり気の無い心を持つ純粋な性格がより前面に出ていたのは明らか。

絵に描いたように分かりやすい悪党ぶりを発揮していたのはロブーヒンのヤーシュカ。
企みを含んだ目つきでリタを我が物にしてボリスを威嚇したりやりたい放題。
ただグリロゴーヴィヂが描く男性となれば熱さを迸らせながらの迫力ある跳躍も多々あり
単なる悪者にとどまっていなかったのは振付家の意図をしっかりと把握して体現していたからこそでしょう。

心を鷲掴みにされたのがクリサノワのリューシュカで、
クリサノワのいえばテクニシャンで明るい役柄の印象が強くありましたが
酒場のトップに君臨しているのであろう頭1つ抜けた色っぽさに加え
人生酸いも甘いも経験済みと想像させる気だるさを醸す押し出しの強い役柄をも演じる力に驚き。
また踊りの見せ場は非常に多く、男性顔負けの跳躍やアクロバティックなパ・ド・ドゥもてんこ盛りながら
疲労は微塵もないどころか物語が進むごとに更に魅せに魅せていく止まらぬ魔力も圧巻でした。

作品そのものは1990年のボリショイ来日公演で知り、
中盤のリタとボリスの清らかさ溢れるパ・ド・ドゥは抜粋での上演も人気が高く
来日公演時も披露されていましたが、映像含めてこの作品を観るのは実は今回のシネマが初。
グリゴローヴィヂ振付で音楽がショスタコーヴィチならばプロパガンダ濃厚な作品になると
予想しておりましたが、実際観るとそこまでではない。
確かに、幕開けから賑わう漁村のパワフルな漁師たちが登場し
終盤はヤーシュカが倒され再び漁村へと場面は転換してボリスたちの勝利を謳い上げる中で終幕する流れであったものの
漁村にしろ酒場にしろ変化に富むよう計算して振り付けられた群舞のフォーメーションの壮観さに
ボリショイダンサー1人1人の技量の高さや熱さを放つ表現が噛み合って共産主義万歳バレエにならず
2幕構成であってもまことにスケールの大きな、これぞボリショイ魂と唸らせる作品を目にできた思いがいたします。
酒場では何組もの男女のカップルがタンゴを踊る場面があり
中でもツートップを務めたコバヒーゼの神秘的な色気に引き込まれました。

幕間の名物、ノヴィコワさんの直撃インタビューも健在で
今回特に嬉しく思えたのがシモン・ヴィルサラーゼの舞台美術に迫る話をしてくださったこと。
袖の幕に近づき、何枚もの変わった渋みある色彩の布が重なっている点を挙げていて
客席から観ると妖しさが宿る色合いの広がりに思わず息を呑み
ヴィルサラーゼの色彩感覚もまた作品をより重厚で洗練されたものへと引き上げていると思わせます。
酒場の舞踊場面では男女とも白と黒を組み合わせた衣装を纏い、互いの色を引き立て鮮やかに映るデザインで
同じくヴィルサラーゼが手掛けたグリゴローヴィヂ版『ライモンダ』マズルカを思い出しました。
後方に映っていたある男性ダンサーは防寒着としてピカチュウの仮装ウェアなるものを着用していて
収録当時の2016年はソビエト連邦崩壊から早25年、時代の流れを感じつつ
政治色が濃いめな作品であっても今も尚色褪せぬグリゴローヴィヂ作品の面白さを再確認です。

グリゴローヴィヂの振付はどれも好きではありますが
ボリショイしか上演は不可能であろう『黄金時代』を鑑賞できたのは幸運な機会。
目新しさに欠けると言われるのは重々承知で申し上げると
幕開けから男性群舞とハチャトリアンの音楽がドカンと鳴り響く『スパルタクス』や
歴史絵巻を想起させる『ライモンダ』も観たいと欲が募ります。(ライモンダは次期入っていた気もいたします)


酒場の場面

907f09cd7e8d45b08bd8672029094548
『黄金時代』を鑑賞できましたので新宿ゴールデン街に位置するウォッカバー石の花へ。2度目の訪問です。

81ae698a26f5426e870e12a90ded7a48
モスクワっ子を意味するモスコフスカヤのロックで乾杯。
グリゴローヴィヂ版『石の花』も生で観たい作品の1本です。
映像で観た、セメニャカとセミゾロワのスター共演には震えました。

2c6980e8c7be425695f2511cec6e52a0
TOHOシネマのポイントが貯まりましたのでせっかく無料で鑑賞できるならと
鑑賞作品を選ぼうにも映画事情に疎く、それならボリショイシネマのすぐ近くに表示されていた作品にしようと
視界に飛び込んできたのは『貞子』。しかし管理人、ホラーは大の苦手でございます。
そうなれば、明日から新国立劇場で開幕する作品繋がりでディズニー実写版『アラジン』にするか。
入口のポスターを眺めて思い立ったものの、ランプの精の腹筋が割れていなければいかんだの
側近率いての『ムトゥ 踊るマハラジャ』な場面がなければ物足りぬだのぼやき連発は目に見えているため見合わせ。
引き続き検討していく所存です。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 388

Trending Articles