4月27日(土)から5月5日(日)、新国立劇場バレエ団『シンデレラ』を計5回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/cinderella/
※文字数削減を図って参りましたがその甲斐もなく
後半の写真も多量且つその後の章も含めまことに長くなってしまいました。
現実にはアラジンもジーンも助けに来ません。罰として次回公演『アラジン』のマグリブ人に攫われぬよう気を付けます。
携帯電話でご覧いただいている方は特に読み辛い見辛い記事かと存じますが
10連休明けから約2週間、ようやく落ち着いて来た頃にこんな長い記事を読む気にならぬとお思いの方は
恐れ入ります、次回更新予定の講座関連または中国国立バレエ団『紅いランタン』
或いはDAIFUKU Homeまで今しばらくお待ちください。
※新国立劇場ホームページより抜粋。詳細キャストは後日掲載いたします。
【4/27(土)14:00】
シンデレラ:米沢 唯
王子:渡邊峻郁
姉娘:古川和則
妹娘:小野寺 雄
仙女:木村優里
春の精:柴山紗帆
夏の精:飯野萌子
秋の精:奥田花純
冬の精:寺田亜沙子
道化:福田圭吾
【4/29(月・祝)14:00】
シンデレラ:木村優里
王子:井澤 駿
姉娘:奥村康祐
妹娘:髙橋一輝
仙女:細田千晶
春の精:広瀬 碧
夏の精:渡辺与布
秋の精:池田理沙子
冬の精:寺田亜沙子
道化:木下嘉人
【5/3(金・祝)14:00】
シンデレラ:米沢 唯
王子:渡邊峻郁
姉娘:古川和則
妹娘:小野寺 雄
仙女:木村優里
春の精:柴山紗帆
夏の精:飯野萌子
秋の精:奥田花純
冬の精:細田千晶
道化:福田圭吾
【5/4(土・祝)14:00】
シンデレラ:池田理沙子
王子:奥村康祐
姉娘:古川和則
妹娘:小野寺 雄
仙女:細田千晶
春の精:柴山紗帆
夏の精:飯野萌子
秋の精:奥田花純
冬の精:寺田亜沙子
道化:福田圭吾
【5/5(日・祝)14:00】
シンデレラ:小野絢子
王子:福岡雄大
姉娘:奥村康祐
妹娘:髙橋一輝
仙女:本島美和
春の精:五月女 遥
夏の精:渡辺与布
秋の精:池田理沙子
冬の精:細田千晶
道化:木下嘉人
米沢さんは技術の安定は不変ながら以前よりも乙女度が増し、
見るからにしっかり者らしいヒロインではなく夢見がちな少女像を造形していた印象。
後にも述べるが、この作品では兎にも角にもシンデレラと王子が見つめ合う時間が非常に長いのですが
俯きながらの恥じらいや興味を示したいが躊躇してしまう
くすぐったい感情が過去には見たこともないほどに溢れ、鮮烈さがありました。
2公演目3幕におけるソロの最中のハプニングはアシュトン版を観慣れた人は驚いたかもしれませんが
初めて或いは久々の鑑賞であったなら元々の振付であると思ったであろう自然なまとめ上げはさすが。
バランスを崩してしまったのか突然の尻餅ではあったものの
ドレスではなくボロ服であるために踊れない悔しさや諦めを
両手を広げ両掌を水平に掲げたマイムで表し、むしろ説得力ある流れを即座に作り出していらっしゃいました。
小野さんは快活で可愛らしさ一杯、少々のことでは挫けず
義姉たちにいじめられていても持ち前の明るさで跳ね返していそうなヒロイン。
小野さんも既に何度も披露している役柄ながらポーズの取り方が
一際伸びやかで音楽との一体感気持ち良く、4階席からの鑑賞であっても
これまで以上に舞台姿が大きく見えた印象です。
義姉たちが出かけたあとのソロでは此処ぞとばかりに朗らかさを振り撒き
1分1秒でも早く踊りたくてうずうずしていたと思わせるシンデレラのお茶目な魅力を垣間見た気がいたします。
しっとりと淑やかさを描き出していたのは木村さん。蒔をくべたり雑巾絞りも
良家の生まれらしく所作に品があり、慣れない家事に奮闘する姿がいじらしく映りました。
宮殿の階段を下りる場面での輝きたるや、生まれながらの姫かと思う眩さで
帰宅して目が覚めた場面で箒を手にしていても煌びやかなドレスをまだ纏っていそうな
それはそれは優雅なソロ。夢見心地から抜けられずポワンとした表情にも同性ながら頬が緩みました。
3年前にこの役でデビューし3回目となった池田さんは回数を重ねる度に
生来の親しみやすい可愛らしさが役に合っていると感じ
心底幸せそうにキビキビ踊る姿は安心感を持たせて表現がより大きくなってきた点も好印象。
2016年における、他のカンパニーでの主演経験がない中での
入団早々主役デビューには首を傾げ申し訳ないほどに疑問を抱いていたのだが
四季の精たちに挟まれながらの舞踏会場面もオーラを放ち、
何事にもめげずにやり抜く姿勢がシンデレラにも自然と重なって見えたのかもしれません。
渡邊さんは格調高さと包容力で魅了して止まぬ王子。シンデレラの米沢さんを
可愛らしく且つ美の極致で魅せるサポート力によって
パ・ド・ドゥがこれでもかと言わんばかりに勢いと美しさが溶け合った形となり
何度も観ている振付ながら瞬きが惜しいほど目を見張りました。
アテネ五輪の体操ではないが、登場における階段からの高く柔らかな跳躍が描く放物線にも感激。
数ある作品の中でも最たる華々しさを誇るファンファーレに負けぬ存在感と品位を併せ持った
稀な珍しいダンサーであると前回に続き感じ入った次第です。
愛する人を探そうと黒いマントを羽織り、いざ出陣と奮起する姿も眼福。
シンデレラを見つめる眼差しが強く熱く、その状態で手を顔の辺りを優しくかざしながら求愛し
しかもお顔立ちが男性らしい凛とした趣きと迫力があるため
向かい合って立つシンデレラは仰け反ることもなく直立体勢の保持持続が不思議に思えたほど。
王子のお顔をもっと見つめたい意志はシンデレラもあったでしょうが、
恥ずかしくて蕩けそうになったがために俯いてしまうのも無理はないでしょう。
米沢さんがいつにも増して可憐な姫に見えたのでした。
2回目の5月3日は新国立劇場バレエ団において令和最初の公演で
姿勢を正し、階段上から人々をにこやかに見守る姿がそれはそれは気品と大らかさがあり
日本の皇室の儀式を想起させる佇まい。剣と勾玉が見えかけたのは幻ですが
令和最初の舞台に相応しい格調高き王子でした。自然な丸みのある前髪で髪型も問題なし。
福岡さんは大物感ある王子で(褒め言葉)階段上での堂々たる立ち姿は引き寄せるオーラが強く
パ・ド・ドゥでひやりとした箇所も曲の盛り上がりの頂点での出来事ながら
シンデレラを支えて瞬時に立て直していたのは熟練工の如し。
井澤さんはシンデレラの舞踏会登場にて手を取りに行く箇所においてまさかの躓きには
同作品上演史に刻まれるであろうびっくりポンな一大事でしたが滞りなく舞台が運び
むしろ王子のひたむきさが露わになったと前向きに捉えたくなる(とは言え笑ってしまったが)場面でした。
ときめきはしないが(失礼)日本が生んだ、きらきら系男性ダンサーの代表格であると思っておりますので
堂々と主演を張っていただきたいと願います。
同時期に義理の姉も務め、切り替え見事であったのは奥村さん。
記憶が正しければマイレン・トレウバエフさん以来の同時期兼任かと思います。
宮殿にシンデレラが登場してすぐのワルツでも軽やかにシンデレラをリードされ、
爽やかな空気感を出していらしたのは涼やかな奥村さんならではでしょう。
義理の姉妹は両ペア観客を沸かせ、古川さんは豪快で陽気なお義姉さん。
舞台に現れただけで晴れやかさ、そして何か面白いことを
やってくださるだろうと安堵感ももたらしてくださいました。
毎回異なるアプローチで楽しませてくださり、今回はガラスの靴履きに挑んだものの
持ち主がシンデレラと判明すると、王子には決して渡すまいと
履きかけの足を左右にじらして王子を困らせようと応戦。
勿論失敗に終わり王子に奪い取られてしまうわけですが
義姉と王子双方の執念がぶつかり合うもあまりに真剣なためか客席からは笑いが零れ、
ほんわか優しい空気に満たされてそのまま和解と幸せな結末へと物語が運ばれて行った気がいたします。
小野寺さんは周囲へのお茶目な振り撒きが可愛らしく映り、
たった数秒で引っ込んでしまう御者にもちょっかいを出して金銭のやり取り最中に困惑させ
舞台後方で繰り広げられていた御者対義妹の対決もまた見所でした。
奥村さんは上品で美貌なお義姉さん。生来のお顔立ちも生かされ
あら綺麗かと思えば時としてドタバタダンスを披露そのギャップに何度も笑いが止まらず。
高橋さんはピンクの薔薇とフリルなドレスも似合う乙女な義妹で
お2人とも涼しげなお顔の系統が似ているためか外見からして姉妹の説得力があった点も良し。
仙女も三者三様の魅力。木村さんはおっとりと包み込む優しさが更に増した印象で
ゆったりとした旋律も持て余すことなく踊る姿が優雅。
細田さんの音楽を身体で奏で、繊細で叙情に満ちていて一挙手一投足から温かく語りかけてくるよう。
結婚式にてシンデレラと王子を出迎える前における、
細田さんを先頭に星の精たちの手を取りながら走って連なりを描いて行く流れでは
温もりがふわっと広がり、心洗われる場面の1つです。
登場で拍手が沸いた本島さんの麗しさは溜息物で、威厳と華を持ち合わせたその姿に
シンデレラもただただうっとり見惚れるしかなかったでしょう。
仙女も様々な捉え方がありますが包み込む優しさも、他を圧倒する輝きでのシンデレラを導きも
それぞれ魅力が備わっているとお3方の姿を思い浮かべるたび幸せに浸る今日この頃でございます。
四季の精では端正な職人芸が光る春の柴山さん、雪の結晶の如き煌めきと真冬の厳しさや冷気を帯び
ポジション1つ1つをクリアに決める冬の細田さんが印象深く、
渡辺さんのしっとりと気だるさを表現した夏も脳裏に刻まれております。
福田さんの道化はゴム毬級の弾けっぷりに加え、舞台上のキャラクターそして観客とも会話のキャッチボールが鮮やかで
その場の状況に応じてどんな変化球をも受け止める懐も深い。
王子とは仲良しな関係で、シンデレラとの恋を心から応援している様子がマイム1つ1つからも伝わりました。
木下さんは幕が開いた瞬間の、煌々と輝く宮殿と同系色の衣装ながら視線を引き寄せるオーラが強く
軽快にテクニックを駆使して注目を一身に集めていらっしゃいました。
それにしても、道化と友人を兼任とはどれだけ器用なのかと脱帽。
ナポレオン&ウェリントンが義理の姉妹を巻き込んでの風刺漫才なる展開も分かっていながら毎度笑ってしまい
今回のツボは渡部さんによる、こち亀の両さんを彷彿させる眉毛びっしりなナポレオンでした。
舞台袖から飛び込んでの登場で毎回気分を盛り上げる星の精のキリリとした煌めきにも鳥肌。
整然且つ複雑にフォーメーションを替えていきながらも終始指先脚先から輝きを放っていて
身体を思い切り捻ったりと踊りは鋭くもシンデレラに向ける柔和な表情が優しく調和し
会場中が温かく柔らかな光で包まれていたのでした。水色の涼やかな色彩のチュチュと
星が散りばめられた頭飾りも毎回見入ってしまうデザインです。
舞台では描かれていませんが、馬車に乗ったシンデレラには
四季の精と星の精たちが宮殿へと付き添っていたわけでいかにして宮殿に到着し、入口へと向かったか。
そして四季の精たちはいつ何処でクラシックチュチュに変身するのか。
迷子にならぬよう案内されていたであろうシンデレラが大広間に到着する過程にまで
興味を持たせるほど、重要で心惹かれる妖精たちです。
(そういえば、仙女はお留守番か自宅待機か。ふと懐かしさを覚えたのだが
星の杖を振りながら皆を見送る場面は迷子のメイを探すためねこバスに乗ったサツキを見送るとなりのトトロにも重なると勝手に想像)
御用商人たちも快調、キャラクターによっては怪調か。
特に新国立伝統芸なる七三分けの髪を振り乱しつつも商売熱心な宝石屋は宇賀さんは剽軽で宝石箱を手にした跳躍も高し。
隅にいても目が行ってしまうほど怪しさ充満であったのは渡邊(拓)さんで
進んで顧客になりたいかと聞かれたら一瞬躊躇するかもしれませんが笑
確かな目利きによるお墨付きであろう宝石と、他業者とも髪型チェックを怠らず
何とも怪しいながら不思議と購入意欲を沸かせそうな見た目に何時の間にかお財布を開けたくなってしまいそうです。
宝石屋のみならず全員が3幕でも再登場し、靴の持ち主がシンデレラと判明すると皆で喜びを分かち合う
ただ怪しいだけでない心優しい商人たちである設定も幕切れが更に幸福なものへと繋がる要素の1つと捉えております。
御者はダブルキャストで西さんが意外にも粘る商売人気質で、義妹からの帽子の直撃にも負けず
手を差し出してチップ増量を図りシンデレラ父からがっぽり儲けていた様子。
渡邊(峻)さんは前回ほどの粘っての強請り(褒め言葉)は控えて
泣く泣く?あっさりと代金を受け取り、去って行く背中から漂う哀愁が胸に沁みました。
演出で今更ながら気づいたのは、階段を多用した振付が満載であること。
恐る恐るポワントで降りるシンデレラや王子の飛び降り放物線に限らず
1人1人跳びながら上体を捻って登場して整列し、そうかと思えば駆け上がって並びシンデレラと王子を囲い彩る星の精、
これ以上にないぐらいに姿勢を正して4人同時に登場し、時には四季の精と共に颯爽と駆け下りてくる王子の友人
そしてオレンジを持って行進するマズルカ(確か)、と階段尽くし。
壮観と危険の隣り合わせで複数人数ならば1人でも乱れたならば調和が崩れてしまう、スリルある演出ともいえ
生ものである舞台において連日危うさを見せずひたすら夢世界を作り出していることに頭が下がる思いです。
かなり年季が入っていながらも細かく凝った模様で彩られた眼福なる衣装も毎回双眼鏡で観察せずにいられず。
特に頭飾りからして異なり繊細な色彩が美しい四季の精、シンデレラと王子の光り輝く模様や
赤紫に緻密な模様で描かれたマズルカはつい目を凝らして見てしまいます。
シンデレラが舞踏会に登場する際の優しさを帯びて射し込む照明の色合いや
出迎えの、立て膝付いての優雅な一斉イソギンチャク踊り(勝手な名付けで失礼)の揺らめきも心癒される演出です。
プロコフィエフの流麗摩訶不思議な音楽に惚れ惚れと聴き入るのは毎度ですが
今回は事前に井田勝大さんによるシンデレラの音楽大解剖なる講座にも参加していたため
あちこちに飛び跳ねる旋律や、踊る側と鑑賞する側双方を魅了し続ける
夢見心地でロマンティックな曲に仕上げた経緯を再度考えたりと、より耳を傾けながらの鑑賞となりました。
特に聴き入る箇所の1つがシンデレラが登場してからのワルツにおける
王子と友人たちが跳躍を繰り返しながら交差する場面の流れるような旋律で
内に秘めていた王子の恋心がいよいよ一気に広がりを見せ、
突如現れた姫に迷いなく恋に落ち幸福に浸りながらも舞い降りた運命に戸惑いも少しありそうな
相反する心境を覗かせている気にもさせつつ観る者を高揚させる場面と感じております。
3シーズン連続上演で当初はまたかいなと思ったものの、開幕すると古いおとぎ話の絵本を捲りながら
煌びやかな世界へと吸い込まれる心持ちとなり見飽きたとは全く思わせず。
むしろ再演を重ねているからこその発見が多々あった平成から令和へと跨るシンデレラ公演でした。
カクテル見本、令和もこちらのカウンターへ通います。ガラスの靴の絵が気分を高めます。
初日終演後は翌日の所用に備えて前日入りするためそのまま移動、
滞在地沿線である「地下鉄」中央線深江橋駅近くのこちらのお店へ。
鑑賞した会場が属する地方以外での終演後乾杯はバレエ鑑賞人生史上初。
日本酒好きであると話したところまず店長が選んでくださったのは鳥取の鷹勇。
登場し階段からの跳び方も着地も、鷹の如くしなやかで滞空時間が長く柔らかであったとニンマリ回想。
2杯目は次はメニューで目に留まったスプリング。
日本酒でこういった英字のモダンなラベルはなかなかお目にかかれぬ柄です。
四季の精でもし踊れるならば、(あり得ませんが)
清々しい若芽の息吹を思わせる春の精と冷たくも雪の煌めきを備えた冬の精に憧れます。
お刺身盛り合わせ。金色の板が敷かれていて何かの儀式でいただくような装いです。
どれも厚切りで鮮度も抜群、前世はアザラシと周囲に言われるほどの魚好きには嬉しい。
酒粕入りチーズもお酒が進み、夏の精を想起させる色合いのお皿も良し。
翌日に向け、シンデレラの如く0時を境に頭を切り替えようと思ったのも束の間。
滞在先において切り替え困難な事態となり(詳細はこの件から無理矢理派生させた記事において別途綴る予定でおります)
開き直って諦め、翌日の朝食には2年前の夏にも訪れたこちらのお店へ。
黄色の看板に店名が書かれ、主演と御者以外は今年も友人兼夏のカバリエであろうと想像。
(こちらの地域では土地柄黄色といえば阪神タイガースでしょうが)
そして午後に入ってきた友人からの連絡を読むと案の定予想通り、夏の精を美しくサポートしていたとの記載あり。
翌日以降日によっては王子の友人は渋い雰囲気に引き寄せられつい夏カバリエ中心に観察。
出先で様々な朝食を味わってきたが、値段、組み合わせ、味、どれを取ってもこれまでの1位であろう
厚切りトーストのふわっとした食感が気に入ったモーニングです。さあ、10時になったら今度こそ頭切り替えだ。
ずっこけぶりを露呈してしまったものの無事!?本来の目的を終え、バスで翌朝帰京し
一旦自宅に戻ってから再び初台へ。ブルスケッタとスパークリングワインで乾杯し
2幕ではいよいよ王子の「友人」登場です。
振り返ると、3年前の春の大型連休時も新国立での『ドン・キホーテ』公演期間中に別所へ出向いて
公演のある翌朝にバスで帰京しており似た状況であったのだが、
3年前は帰宅後当日は公演へは行かず自宅でそのまま休息して終了。
ところが今回バス内では実質2時間睡眠だったにも関わらず
疲労のひの字も迷いも一切無く帰宅して小休止すると『シンデレラ』鑑賞のため初台へ。
身体の若返り、ではなく愛と執念の勝利しかないと友人は考察。
きっとその通り、経過年齢には逆らえない。心境の変化とは恐ろしや。
令和元旦、神田明神付近へ行った際に通りかかった日本酒専門店にて
名称は四季、雪の結晶或いは星屑が敷き詰められたような絵柄のお酒を発見。
冬の精と星の精たちを思い浮かべながら乾杯。
公演限定デザート。仙女がかけた魔法、といった名称と記憶。生涯に一度で良いからかかってみたいものだ。
(現実を見よ、身支度は自分でせい)
飲み切れず持ち帰る際にお店で入れてくださったカップが着物模様の日本らしい艶やかなデザイン。
この日は初日と同じく王子、仙女ともに着物モデルを経験されたダンサー。
当ブログレギュラーことカウンセラー友人とカウンセラー2改めアドヴァイザー友人と
オペラシティのだん家にて乾杯。オレンジが含まれているとの解説が目に入り、迷わずヒューガルデン。
甘さと苦味が共存する濃厚なチョコレートビール。物珍しいビールに興味は尽きず、今後も開発して欲しい。
締めはスパークリングワインとオレンジのカクテルミモザ。みかん星人になりそうである。
当ブログを通して知り合った方と3年連続ゴールデンウィークは劇場外のお店へ。
店名はOrange 。管理人、いよいよみかん星人か。
昨日5月3日の王子が建てたオレンジ御殿です、と妄想を口にしつつ(そんなわけはない)
その名の通りオレンジを使ったメニューがいくつも用意されています。六本木の東京ミッドタウン内に位置するお店で
初台駅からは新宿経由での大江戸線乗り継ぎが非常にしやすく、アクセスも良好。
王子の執務室に置かれていそうな古めかしい本棚。
六本木を訪れるのは昨年6月の眠れる森の美女初日終演後に開催された
きもの雑誌イベント参加のため当日朝着付けとヘアメイクに行って以来1年ぶり。
昨年1年間振り返ってみても、年間通してあの日管理人は最も頑張った笑。
少しずつ多種の盛り合わせで堪能できそうと思いコースを予約。
前菜に早速柑橘類が2種、オレンジカプレーゼがいたく爽やか
削ったトリュフをかけたフレンチフライ。トリュフをそのままいただく機会は滅多にないためゆっくり味わいました。
桜海老のピザ。薄生地でサクッとした食感のため食べ易く海老の香りも漂い食欲をそそりました。
さくらといえば、ビントレーさん振付『パゴダの王子』が久しく上演されていないと話題に上り
裸体坊主にアヘン?な中国やヤングマンYMCAアメリカなど
インターネットが普及し情報入手が容易になった時代に製作されたとは思えぬ
東西南北の王たちの衣装がどうしても受け入れ難い、アメリカには王朝の歴史もない、と
作品に対する不満を連発する私のまとまりに欠けた話も毎度辛抱強く聞いてくださるお人柄に深謝。
しかし、王子役は一番似合いそうであると話を主語なしで前向きに転換してくださり
昨年着物雑誌モデルを務められ、きものイベントにゲストでいらしたダンサーを互いに思い浮かべると
着物衣装ではなく本物の着物や袴で登場して欲しい、刀もあれば尚良いなど欲望が募った次第。
(あくまでバレエであって、間違いなく似合うでしょうが時代劇ではない)人間とはかくも単純な生き物である。
エンドウ豆のクリームパスタ。オレンジがかった色味が独特なワイン甲州オランジュ・グリとの相性も良し。
岩中地豚の骨付きロースグリル。それにしても他のお客も店員さんも
立地柄お洒落この上なく、私は場違いだったかもしれぬ。
花火煌めくオレンジケーキ。メッセージは予約時に依頼、
誰かの誕生日ケーキが運ばれてきたかと思ったと友人は驚きつつも喜んでくださいました。
最終日、新国立のびわ湖公演や京都バレエ団の他関西の公演へ出向いた際には
度々お世話になっている大阪在住の方と一緒に乾杯。
今回本拠地初台では初めての新国立バレエ鑑賞で舞台
そして劇場の空間も心から堪能されたご様子で我が事のように嬉しい気分。
どうしてもオレンジ物に目が行き、テキーラカクテル。想像よりも度数強し、でも幸福に浸る味。
帰り、常連組と連絡が取れたため合流。新しいメニューであるのかチーズフォンデュと赤ワインで乾杯。
足を運んだ5回全て、特に27日と3日は蕩けに蕩けた2019年平成から令和に跨っての新国立シンデレラでした。
さて長くなりましたが、今年は新国立劇場での初演から20年を迎えた節目にあたり
アシュトン版『シンデレラ』にまつわる思い出を簡単に
(でもない。疲弊が蓄積していらっしゃる方は読み飛ばし願います)
アシュトンが振り付けた『シンデレラ』が存在すると知ったのはバレエを観始めて間もない頃の1990年ぐらい。
チャイコフスキー三大バレエよりも先に『シンデレラ』の音楽にどっぷり浸かってしまった話については
連休直前に書いた井田勝大さんの講座の記事で述べた通りですが、
更に拍車をかけたのは1990年頃のダンスマガジンで『シンデレラ』特集が組まれ
テレビ放映もされた当時新人であったエレーナ・フィリピエワ主演し話題を呼んだ
キエフバレエのリトヴィノフ版に並び、アシュトン版も紹介されていたのでした。
ただアシュトン版に関しては、シンデレラや王子よりも長袖にきらきらとした細かな装飾が散りばめられ凛としたポーズを取る
1幕の冬の精の印象が真っ先に残り、モノクロ写真でありながら何か心にくるものがあったと記憶しております。
(シンデレラはマリア・アルメイダだったか)
アシュトン版を観に行ってみようと思い立ったのは随分後になってからで2005年の英国ロイヤル・バレエ団来日公演。
ところが、うかうかしているうちに吉田都さん主演日は平日にも関わらず完売。(今思えば当然でしょうが)
キャンセル待ちの仕組みも知らずにいたためアシュトン版はまたどこかの機会で鑑賞しようと考えを改めたのでした。
新国立劇場での上演は新聞の宣伝記事にて把握しており、
酒井はなさんや宮内真理子さんが主役を務めていらっしゃる旨は存じていたもの
人生を運命付けた2005年の1月『白鳥の湖』以降は大きく変わるわけですが
王子役のダンサーの方々についてはさほど意識して目を通さず。
そして初鑑賞となったのは作品を知ってからおよそ17年の歳月が経過した2006年12月の新国立劇場バレエ団公演。
主演ゲストのコジョカルとボネッリはロイヤルの新衣装持ち込みでの出演で、妙に光沢を帯びているシンデレラの衣装が
年季が入っていながらも古いおとぎ話の絵本を思わせる美術や他の衣装と調和が取れていない点は気になったものの
四季の精たちの頭飾りやスカート模様の細部に至るまで凝りに凝ったデザインに
指先脚先から零れる光が見えてくると感じる星の精そして燦然と輝く馬車に仰天。1幕を観終えた時点で心から好きなプロダクションと叫びたくなったものです。
2幕前の休憩時間に会った常連の方にアシュトン版初鑑賞の旨を伝えると、1幕の見所の振り返りにおいて
シンデレラでも義理の姉妹でもなく仙女や四季、星の精たちでもなくその方がしきりに仰ったのは宝石屋。
最たる見所だから3幕と明日以降も注目するよう勧められ素直に従ってみると、
なるほど髪の撫でつけが怪しく振り向きざまにも
ささっと髪を整える仕草に遅ればせながら大笑い。昨今語られていますが新国立の伝統芸なる役柄で
当時は井口裕之さんが演じていらっしゃいました。
その前年1月『白鳥の湖』公演で1幕登場の瞬間から心を奪われ以来14年半現在に至っている
山本隆之さんによるシンデレラの王子も2006年が初見。青い襷をなさっていても
駅伝走者にも選挙の立候補者にも大日本帝国憲法発布式状態にもならぬ
絵に描いたような世の女性の理想の結晶とも言うべき煌めく且つ気品ある貴公子に手を合わせ
酒井さん、宮内さんお2方と組まれての2日間はそれまで味わった経験のない至福なクリスマスシーズンとなったのです。
幸運にも年明けすぐの2007年1月には新潟公演も鑑賞。鑑賞人生において天候は最たる荒れ模様に見舞われ
信濃川は氾濫し駐輪場の自転車は次々と倒れるなど強風吹き荒れる1日で
数名いた東京からの遠征組(人のことは言えぬがこの天候でよく来たものだ)も顔を合わせては笑うしかない状況でしたが
新潟出身のさいとう美帆さんの可憐なシンデレラと山本さんの王子ペアは新潟のみでしたので鑑賞は嬉しく、
人件費抑制のためか馬車の引き手担当は2幕では王子の友人たちを務める冨川さんらで
初台に比べれば遥かに狭い県民会館ホールでもぎりぎりのところでカーブに成功。
(福岡公演では一直線だったとのこと)貴重な場面にも立ち会え
中でも2幕での王子と友人たちが交差しながら跳躍を繰り返す場面では
中央に現れた山本さんに手を合わせて高揚する音楽にも一層吸い寄せられ感情も昂ぶり
極寒で強風吹き荒ぶ越後まで来て良かったと心底幸福に浸ったのでした。
アシュトン版上演は2013年にも新潟にてあり、主演は小野さんと福岡さん。
一面銀世界な真冬日でしたが、2幕からは道化の福田圭吾さんが拍手をしかけていた親子連れを見つけたと思われ
恥ずかしがらずもっとして良いよ、と優しく促しながら客席を着実に温めナポレオン場面では観客大沸騰。
主役途中降板や馬車事故などハプニング続出であった2008年12月公演時にはバックステージツアーに当選し、
その数日後の最終日公演で横転するとは知る由も無かった銀色の馬車も間近で見学。
隅々まで装飾に彩られた実物を目にした瞬時から一同感嘆の声を上げ、参加者たちの心が1つになった瞬間です。
四季の精のヴァリエーションが始まる際の照明の切り替えも行ってくださって
繊細に映し出される背景を眺め、紗幕はダンサーの至近距離にあり余計に緊張を強いるとも教えてくださいました。
この時にゲストでいらしていたヨハン・コボーさんのエピソードとして
「ロイヤルの新しい方よりも(新国立が買い取った、古い)こちらの衣装や美術装置のほうが僕は好きです」と
懐かしそうにうっとりしながらスタッフに仰っていたそうです。
そして舞台袖には小道具が盛りだくさん。仮面や道化の相棒、宝石箱など机の上に整然と並べられた小道具の多さに驚き
ラックに掛かっていた3幕にて王子がシンデレラ探しをする際に羽織っていたマントが目に留まると
思わず「く、包まりたい…」とぽつり。
そうです、その日の王子は山本さんでした。幕間では平静を装っていたが
遂に露わにした私の意外な一面に一緒に参加した劇団四季通の元同僚は苦笑していたのは今も覚えております。
2010年公演はオペラ『トリスタンとイゾルデ』関係上クリスマス時期をずらし11月下旬から12月上旬にかけて上演。
秋の精もびっくりな大嵐が訪れた時期でもありましたが(小野さん山本さん主演日の2回目だったか
東京も朝は不安定な気候で鞄にビニール袋を被せて移動していたと記憶。
遠方からお越しの方は飛行機が大幅遅延したとのこと)波乱な天候をよそに一足早いクリスマスプレゼントとなりました。
2012年12月公演では山本さんが義理の姉役に初挑戦。面白可笑しいにとどまらぬ
華麗なる美女且つ間の取り方も絶妙で嫌味なく、そして出しゃばり過ぎず
品と麗しさ、楽しさを備えていらして大怪演。観客の大半が学校団体の公演においても
山本さんが2幕で大扇片手に登場なさるとそれまで反応がややおとなしかった生徒さんたちからも
笑い声が聞こえる始めたほど。この役に対する印象が覆り、翌2014年公演でも登場され
舞台が何倍にも面白味と厚みが増していたのは明らかでした。
2016年12月公演では長田佳世さんが新国立劇場バレエ団のダンサーとしては引退。
平日昼公演で観客の大半が学校団体の生徒さんでどうにかチケットを取れないか、
また追加公演切望の声も多く上がりましたが予定通り平日昼1回のみで行われました。
ただ救いだったのは生徒さんたちのマナーが良く、最後の最後までスタンディングオベーションで
長田さんを拍手で讃えていたこと。そして握手会ではまだ涙も止まらずにいらした長田さんを王子役の菅野さんが
舞台上さながらにそれはそれは登場を丁寧に支えていらして、一層温かな空気に包まれた光景は忘れられません。
さて、2010年を区切りに翌2012年と2014年公演の最注目が義理の姉となり
全日程通じて穴が空くほどには王子を凝視せずにいた時期が続きましたが
転機はこのとき突然訪れ、同じく2016年12月公演。2014年末にアトレも退会し、
以降新国立関連のウェブ記事や友人から貰っていたアトレ会報誌も流す程度にしか読んでおりませんでしたが
2016年12月公演に向けてのおけぴリハーサルレポートを偶然開いて走った渡邊さんの衝撃は今も忘れられず。
こんな男前で素敵な男性ダンサー、今の契約にいらしただろうかと実に久々に新国立関連記事に対して胸が高鳴り
当時は周囲にも話さずにはおりましたが来る日も来る日もリハーサル写真を眺め
インタビュー内容も頼もしい印象を受け、期待が高まりクリスマスイブの主演本番。
髪型とメイクに関してはリハーサル写真とは大分違った印象を受けたものの(失礼)
緊張するシンデレラを励まそうとする誠実な姿勢や淀みないサポート、そしてジャンプの柔らかさにも目を奪われ
長田佳世さんの引退公演を除けば毎回遠くから見学していた握手会も初めて近い場所から終始観察し
翌公演のヴァレンタイン・バレエ2日目はZではなく3階席あたりと取ろうと決意。
新国立にて主役の男性ダンサーにしっかり注目したのは何年ぶりだろうかと
気づけば友人から譲り受けていたアトレ会報誌からインタビューページを探し
プロフィールや移籍前の頃の映像、記事を片っ端から検索して年末年始を過ごし
お正月に決定打となる映像を見つけて現在に至っております。
長くなりまして申し訳ございません。アシュトン版『シンデレラ』新国立初上演から20年。
私が鑑賞しているのは2006年12月公演以降ですから初期の頃については把握していない身ではございますが
再演を重ねているからこそ、或いは仙女の魔法が鍵を握るがゆえ演目に何かが取り憑いているためか
上演のたびに当時の出来事を色濃く思い起こされるのか理由は定かでないものの
(例えば、同じく上演回数が多いくるみ割り人形や白鳥の湖を辿っても、シンデレラほどこうも長々文字化はできない)
バレエ鑑賞人生における思い出深い作品であると今回再確認。さすがに4シーズン連続上演は難しいでしょうが
バレエ団の得意なレパートリーとしてこれからも上演を続けて欲しい作品です。