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Channel: アンデオール バレエ日和
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ボリショイ・バレエ in シネマ 2018-2019Season『ラ・シルフィード』

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新宿TOHOシネマにて、ボリショイシネマ ヨハン・コボー版『ラ・シルフィード』を観て参りました。
https://liveviewing.jp/contents/bolshoi-cinema2018-19/

シルフィード:アナスタシア・スタシュケヴィチ
ジェイムズ:セミョーン・チュージン
占い師マッジ:アンナ・バルコワ
エフィ:クセニア・ジガンシナ
グエン:アルトゥール・ムクルチャン

スタシュケヴィチのシルフィードは意志をはっきりと示しながらも軽やかさと抜群の浮遊感で魅了する妖精。
一見可憐さよりも凛とした渋い美しさを備えた容姿でキャストを知った際には
シルフィードが似合うか少々不安もありましたが幕が開けば心配無用。
盤石の技術と繊細な指先、ふとした首の傾げ方に至るまで見せ方を心得た踊りで気づけばジェイムズと共に
すっと吸い込まれてしまいそうになる魅惑的な妖精でした。

ボリショイのラ・シルフィードで思い出すのは2003年の世界バレエフェスティバルで
代役出演で当時まだ新鋭であったマリーヤ・アレクサンドロワとセルゲイ・フィーリンが披露したパ・ド・ドゥ。
残念ながら実際に観てはいないのだが、どちらかといえば女性も惚れる姉御肌な雰囲気を持つアレクサンドロワが
シルフィードなんぞ踊っても惹きつけるのは困難ではないかとの声もありながら
雑誌の批評では一点の曇りのない技術でチャーミングに魅せたといった絶賛の記事を読み
どんな役でも自身のものにして心を奪うアレクサンドロワに興味を一層抱くきっかけになったのでした。
今でも海外の女性ダンサーでは真っ先に挙げるほど、かれこれ12年以上のファンでございます。

チュージンのジェイムズは何を考えているのか分かりづらい、風変わりな雰囲気の青年で
例えばシルフィードを見つけても喜びを大露わにするような表現は控えめでありながら
じわりじわりと幸福を噛み締めたり、悲嘆に暮れたりと掴みどころのない性格が表れていて面白く鑑賞。
脚捌きの美しさには目を見張り、目が冴え渡るソロでは大喝采を浴びていました。

バルコワは数あるラ・シルフィードの中でも美魔女っぷりはトップクラスに君臨であろうマッジ。
(対抗できるのは新国立劇場2016年公演でぶったまげる怪演を見せた本島美和さんぐらいか)
皺々な老女とは程遠い艶かしさすら覗く色っぽさまで備えてはいるものの
登場しては不吉な予言をするわけですから、ジェイムズやエフィ側からすればたまったものではありません。
ジガンシナが演じる、誰もが羨む美女であり結婚を間近に控えたエフィが可哀想でなりませんが
結局は幸せを勝ち取る運命であったのは日頃の堅実な行いが呼び寄せたのかもしれません。

改訂はヨハン・コボーで、ブルノンヴィル版との違いが今ひとつ分からず終いでしたが
祝宴の場でのスコットランド舞踊ではボリショイお得意なキャラクターダンスのレベルの高さにこの度も驚かされ
バグパイプ奏者の陽気な演奏っぷりにウイスキーが飲みたくなったのは言うまでもありません。

ボリショイシネマ名物・カテリーナ・ノヴィコワさんによる解説も健在で
最近は演目に合わせた服でご登場なのか、今回は水色と白のキンガムチェック柄のワンピース。
いたく可愛らしいデザインで、即座に浮かんだのは神戸屋レストランの制服でしたが
次回『ラ・バヤデール』ではサリーでもお召しになるのだろうかと今から想像が膨らみます。

もう1つの見所は準備中の舞台でインタビューが行われるためスタッフたちの動きがよく分かること。
以前バヤデールではテーブルに小道具を置く際、スタッフの方々も役になりきって椅子に腰掛け
位置を入念に確認していた光景からバレエ愛が伝わり、思わず頬が緩んだものです。
マッジが使う炎の釜のような装置の搬入担当者は点灯して光具合をじっくり見ていて、
光が顔を強烈に照らしていたため怪談話や肝試し状態であったのはご愛嬌。
電気コードが無い作りである点にも感心し(後日述べるが、新国立バヤデールの聖なる炎?装置は電気コードが丸見え)
物語の世界観を崩さぬ配慮が見て取れました。

次回は今月下旬に『ラ・バヤデール』。太鼓の踊り付きのダイナミックな婚約式も楽しみです。

※ブルノンヴィル版シルフィードといえば、新国立劇場の細田千晶さんによる
透明感のある輝きとまさに何処かへ飛んでいってしまいそうな浮遊感に
儚い雰囲気を持ち合わせた名演が今も忘れられません。もう1度観たいシルフィードです。




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物語の舞台スコットランドに因み、帰りはスコッチウイスキーとハギスで乾杯。


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