4月22日(日)、兵庫県姫路市にてグラッシオバレエスクール第38回発表会を観て参りました。
昨年に引き続き2度目の鑑賞、今年も全て幕物による構成で楽しく中身の濃い舞台でした。
http://www.grazio.jp/news/contents000145.html
第1部はディズニーファンタジー。耳に馴染みのある約10曲からなる作品です。
プログラムを開くとリトルマーメイドやくまのプーさん、バンビなどすぐさまキャラクターが浮かぶ曲も多々あり。
しかし全曲共通して魅力に映ったのは、ディズニーだからといって決してキャラクターなりきり路線にせず
あくまでクラシカルな衣装を着けてのバレエらしい雰囲気があったこと。
例えば煙突掃除を歌う「チムチムチェリー」、煤だらけの服ではなく
女の子はピンク色のふわっとしたエプロン付きワンピースで男の子は王子様風でしたが
片手にハタキを持っているため、劇中に出てくる掃除屋さんであるの明らかです。
リトルマーメイドは下半身に魚をを履かせている状態ではなく
ノースリーブのすっきりとした薄紫系のスカートにティアラ、
しかし横たわって脚を鋏のようにパタパタと開閉するなど人魚であるとすぐさま分かる振付で
海の奥底へと潜り込んで人魚たちが遊ぶ光景を眺めている気分になりました。
シンデレラの魔法使いのおまじないであるビィビィディバビィディブーでも
フード付きの旅芸人風衣装ではなく、クラシック・チュチュ。全員尖端に星が付いた棒を振っていましたから
舞台全体に魔法の星屑が撒かれたような煌めきに包まれます。
プーさんも黄色い着ぐるみではなく淡い黄色系のふわふわしたチュチュ。
ただし必需品の蜂蜜の瓶を手にしていましたからプーさんの世界がほのぼのと広がり
ミニーマウスだけは本物に近い水玉模様ドレスでしたが小さな子供達が着用すると文句なしに可愛らしい。
最も驚いたのはバンビ。鹿さんたちが大勢戯れる奈良公園状態にならず皆水色のチュチュ。
恐らくは使用曲の「四月の雨」から連想して木々から滴る雨雫をイメージしたのでしょう。
雨であってもどこか心地良い潤いで満たされました。
『美女と野獣』では赤と白が入り混じった花模様の衣装と頭飾りで「Be Our Guest」を踊りいたく賑やか。
勿論キャラクターなりきり路線で衣装を揃え、あたかも千葉県浦安市の夢の国擬きが姫路市に現れたら
地域柄USJへ出向く方が多数でしょうしそれはそれで観客も喜ぶかもしれません。
しかし衣装も含めてクラシカルな趣きを徹底した作品を幕開けに披露することにより
昨年の『天空の城ラピュタ』や『魔女の宅急便』の音楽をも使用した『回転木馬』と同様
初めてバレエをご覧になる方にとっても、小さな子供達の出演作品とはいえ
馴染み深い曲に乗せた華やかな舞台に触れてクラシック・バレエの楽しさを肌で感じる効果は
十二分であったと思います。実のところ浦安の夢の国へ行ってもはしゃがぬ私も作品の音楽は好きで、
可愛らしくきらきらとしたバレエと合わさりそれぞれの作品の世界観もきっちりと伝わる
グラッシオ版ディズニーは心底気に入った次第です。
第2部は『オズの魔法使い』。ゲストも加わってのこれまたわくわくと胸躍る物語作品でした。
学芸会や発表会で何度か観ているはずが開演前はあらすじがうろ覚えで、
把握していたのは少し前に大リーグエンジェルスの大谷翔平選手登板予定試合が
季節外れの猛烈な寒波到来により中止になったカンザス州が舞台である点と
少女ドロシーが仲間を増やしながら冒険へと繰り出す話である程度。
しかし明快な筋運びにゲスト、生徒さんともに役に入り込み
且つ衣装がお洒落でコール・ドの見せ場も用意。瞬く間の上演でした。
ドロシー役は前半と後半に分けて2人で担当。前半の生徒さんは闊達で好奇心旺盛で
かかしを始め不安がる仲間を勇気付ける頼もしさもあり、ぐいぐいと引っ張って行くドロシーでした。
後半の生徒さんは王子様との出会いでの初々しさ、しっとりとしたパ・ド・ドゥからも目が離せず。
ゲストダンサーによる入魂のキャラクター達も物語に力を与え、
中でも林高弘さんによるかかしはポワントを履いてカクカクとした動きを体現され、驚愕。
今中雄輔さんのブリキはさりげなくムーンウォーク(確か)、酒井直希さんのライオンは
吠えたかと思えば突如ションボリして情けない性格をくすっと笑いを起こさせながら表現されるなど
どのキャラクターもなかなか濃厚。彼らを取りまとめるドロシーの器量には天晴れです。
演出においても飽きさせずテンポの良い展開。誰かがドロシーの仲間入りをすると
歩み出しのテーマなる威勢の良い曲に乗って横に並びながら大股で闊歩するのがお決まりの振付で、
場面転換が非常に分かりやすく次の行き先に期待を持たせました。
音楽は「虹の彼方に」など映画での曲のほか、ショスタコーヴィチの曲
(ボリショイの明るい小川でも使用されている鈴が転がるかの如く可愛らしい曲。題名分からず残念)も使用。
ドロシーたちの冒険を盛り立てる曲ばかりでした。
ドロシーたちが訪れる国や都の描き方も衣装含めて品があり、マンチキンの国では
大勢の子供の住人たちがカラフルな衣装姿でお出迎え。
魔女(岩本正治さんが怪演)の手下たちは黒地にピンクの縁取りのフリルなデザインで
かかし、ライオン、ブリキ(頭飾りのバネがまた良い)も子供達も女の子はチュチュで男の子は貴公子風。
動物や個性の強いキャラクターをすぐさま被り物に結び付けず、あくまでバレエらしい衣装姿が次々とお目見えです。
花名を目にするだけで近頃は緊張が走る「けしの花」たちも、
渋みと薄いピンク2色を織り交ぜたようなロマンチックな衣装。(ピンク色のけしも存在すると初めて知った)
腰の部分に丸みある可愛らしい花形チュチュが重なっていて、動く度に開花したように広がりました。
エメラルドでは中学生ぐらいの生徒さん中心で、淡くも煌びやかなエメラルドグリーンが舞台を覆うコール・ド。
某バレエ団6月公演『眠れる森の美女』宝石役ダンサーに着て欲しいと願わずにはいられぬ豪華且つ上品な色彩です。
幼児ぐらいの小さな生徒さんから上級生、そしてゲストダンサーまで
適材適所な配置でテンポ良い筋運びに品ある衣装、全く飽きさせぬ作品でした。原振付は赤松優さんとのこと。
さて、昨年と同じく全幕クラシック作品前にして既に満足度高し。しかし一番のお目当ては『白鳥の湖』全幕です。
オデットとオディールは分担版で、オデットは情緒豊かで柔らかな表現に引き込まれ思わず守りたくなるヒロイン。
悲しみを背負いながらも白鳥たちに優しい眼差しを絶やさず、生徒さんたちに注ぐ愛情にも重なりました。
オディールは力強く、気圧されそうな迫力もあり。
思えば姿形が全然違うはずの女性にまんま騙されてしまうのは不思議ではありますが、
オデットにはない押しの強さや勢いに封じ込められてしまうのはお人好しな王子なら無理もないかと納得。
道化の林さんがスピードスケートのスーツ風の至ってシンプルなチェス柄を纏っていながら
軽やか縦横無尽に跳び回り、常時拍手を攫いました。
そして何と言っても山本隆之さんが白鳥全幕を通してしかもヴァリエーション付きで
ジークフリート王子を踊られたこと、これに尽きます。
表現の幅広さといい佇まいや指先の美しさといい拝むしかない、それはそれはドラマティックな王子でした。
1幕で登場されると瞬時に舞台の格が上がり、目にも麗しい光景が視界に入って感無量。
新国立の牧さん版によく似た、ブルーのベルベット生地に金糸で彩られた衣装のお姿に
早くも喜びも最高潮へと到達したのでした。オディールに骨抜きにされてしまった表情もまた美しや。
初めて山本さんを拝見した作品こそ新国立劇場でのセルゲイエフ版白鳥全幕でしたが
13年前の当時とお姿が殆んどお変わりないのは驚異です。
人生初、ときめき虜になった男性ダンサーであり偉大なる元祖王子、益々魅力を増していらっしゃり嗚呼感激。
終盤の湖畔の場はオデットと王子を残して白鳥たちが背中を正面に見せながら重たい足取りで
悲しみを表しつつ去って行き、悲劇性を訴えかけてくる振付。
オーソドックスな演出であっても舞踏会後の湖畔場面は各団体の個性が如実に出ていて面白いと近年感じております。
座り込み平伏すようにしてオデットに許しを乞う王子に胸が詰まらずにいられず。
どん底に突き落とされた王子がオデットの優しい寄り添いによって
自身の行為を悔やみつつも心に光が差し込む過程を丹念に描写したパ・ド・ドゥもあり、
短いながらも胸に刻まれた場面です。
生徒さんの数が多く、且つ統制がしっかりとしたコール・ドが作られていた点も目を惹き
訓練がきちんとなされていると窺わせました。所謂バレエコンサートがなく
毎年全幕上演を行っているスタジオだけあって、舞台に立つ生徒さん皆が
立役や細かいお芝居もこなれた様子。これからも全幕上演の姿勢を貫き続けていただきたいと願います。
フィナーレでは映画『となりのトトロ』でトトロがサツキとメイに手渡したお土産にそっくりな包みが
客席に次々と投げられ、観客大興奮。男性陣は肩の力が強いのか
或いは前日に甲子園球場で開催された伝統の阪神対巨人戦における阪神敗北への悔しさが
地域柄そのまま表れるのか(笑)遠方への投げっぷりもお手の物です。私も1つ、いただきました。
例年に類を見ない白鳥大当たりである2018年においても心に残る公演の1本になるのは間違いなし。
そして声を大にして申し上げます。山本隆之さんは偉大だ!

会場の姫路市立文化センター。外観がガンダムの頭部分に似ている。
姫路駅からは南口より出ているバスが便利。ただ徒歩でも20分程度ですので散歩にもちょうど良し。
今回往路はバス、復路は徒歩。晴天の下、舞台の感想を語り合いながらでしたので駅到着が早く感じました。

帰りは姫路駅前の播州料理店GOTTOへ。昨年も同じ方(当ブログを通して知り合った関西の素敵な人生の先輩)と
来店したお店で、兵庫県産を使った料理が豊富。再度訪れたいと思っておりました。
スパークリングワインでまず乾杯。甘みある玉ねぎサラダ、志方牛のステーキどちらもボリュームございます。

明石鯛の生春巻き、播磨灘のカルパッチョ、海の幸にそして舞台特にジークフリート王子の話に顔も綻びます。
どの料理もじっくり味わい海も山も近い播州の恵みを満喫です。

2杯目は姫路ワインと明石産の弾力あるタコで乾杯。舞台の感想や今後の西日本での鑑賞予定、
また東京のバレエ事情を始め今回も延々続く話に耳を傾けてくださいました。
ゆったり寛げる雰囲気ですので姫路にお越しの際におすすめです。

『白鳥の湖』鑑賞にあたり前日には一度は足を運びたいと思っていたノイシュヴァンシュタイン城(新白鳥城)へ。
雲1つない快晴の空に恵まれ、丘の下のバス停付近にて管理人撮影。
ただしドイツではありません。ほぼ貸切で散策できましたので詳細はゴールデンウィーク半ばに紹介して参ります。

当日の午前中は今年も姫路城へ。天守閣まで上りました。
他にも風変わりな宿泊先や1時間半で世界遺産を10カ国は周遊できる公園など
面白い姫路滞在ができましたので、ノイシュヴァンシュタイン城と合わせて紹介して参る予定です。

会場の文化センターに貼り出され、入口にて開場を待っている際に目に留まった劇団の公演ポスター。
あらすじやイラストはさておき、現在の我が身には突き刺さる題名。
昨年の『白の組曲』に続き、考えさせられる姫路鑑賞でございました。
ご参考までに、昨年の感想はこちらです。昨年の全幕は『ライモンダ』、発表会では珍しい全幕上演でした。








