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Channel: アンデオール バレエ日和
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クララと王子はソリで旅立つ信州特別版 新国立劇場バレエ団ウェイン・イーグリング版『くるみ割り人形』11月12日(日) 《長野県上田市》

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11月12日(日)、長野県上田市のサントミューゼにて開催された
新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』を観て参りました。我が人生初、長野県でのバレエ鑑賞です。
https://www.santomyuze.com/hallevent/national-ballet-of-japan-nutscracker2017/



※この1週間後に行われたびわ湖公演にも行って参りました。観客の好反応にダンサーも乗りに乗った大変良い公演で
既存の枠にとらわれず面白いと思ったら素直に受け入れる関西の観客の皆様の懐の深さや鑑賞姿勢には
学ぶべきことが多いと感じた次第。主演を務めた奥村康祐さんの
盤石ぶり、隙の無さ、最後の最後まで余裕ある体力、パートナーへの優しい気遣いにも驚かされました。
東京でも貸切ではなく一般客にも観せるべきだったでしょう、感想はまた後日。
ベジャールに間に合うか、もう間に合わんか笑。

※11月10日(土)には日本バレエ協会主催バレエ・クレアシオンも鑑賞。
中村恩恵さんの作品を踊られた山本隆之さんの偉大さにひたすら手を合わせるばかりでした。
順番前後いたしますが、こちらも後日書いて参ります。



話を信州に戻します。キャストは所々変更はあるものの11月4日(土)とほぼ同じ布陣です。
井澤諒さんが中国の踊りで新国立デビューを飾りました。ただ白塗りメイクのためお顔はよく分からず。
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クララの木村さんはより伸び伸びと踊っていて、登場時の怯えや震えは東京公演以上に細やかに表現。
非常に勇気ある少女の設定で戦闘場面でもクララが度々王様に対抗するのですが、
可憐な女性が王様の尻尾を引っ張り回したりと大奮闘。くるみ割り人形も助けたくなるわけです。
木村さんといえば『眠れる森の美女』まではスタイルの良さばかりに目がいきがちでしたが
『ジゼル』での表現力、しらゆき姫でも童話のお姫様らしい愛らしさに驚愕。
クララも期待が高まっておりましたが予想を上回る完成度で、王子と出会って心をときめかせ、
ネズミ王の再奇襲をも乗り越え絢爛な姫君となるまでの過程を丁寧に踊り表現、自然と感情移入できました。

渡邊さんは髪型に関しては東京で見慣れたのか私が盲目状態にあったのか上田では気にならず笑。
お顔立ちが古風で顔付きもきりっとしているためか以前NHKで放送されていた『そのとき歴史は動いた』の
軍部の再現ドラマに登場しても違和感がなさそうであります。12歳のクララは相当な渋好みと解釈、話が合いそうだ。
出会いの場の話は後に述べますが、所々戦闘にも参加するクララと踊る場面において
これまたリフトが多くネズミ王を前にするとクララを盾にしている構図にも見て取れてしまうのですが
きちんとクララを守っていると見えました。
ごく僅かなタイミングも疎かにせず見せ方を工夫しているからこそでしょう。
通気性抜群とは言い難いお面を付けて剣を手に舞台を勇ましく縦横無尽に駆け回りつつ
クララとも踊るのは並々ならぬ消耗のはず。
渡邊さんくるみ割り人形軍団対奥村さんネズミ王の戦いが、上田なだけに真田幸村のいざ出陣ではありませんが
互いに対峙し手下を率い中央に向かって歩みを進める箇所は他日より迫力が増していた印象です。
東京ではひたすらお茶目路線であった奥村さんは趣向を変え、風格や力強さを前面に出していました。

グラン・パ・ド・ドゥでの煌めきも素敵でしたが、
木村さん渡邊さんお2人のパートナーシップにおいて際立って目を奪われたのは東京に引き続き出会いの場面。
音楽は泣かせる要素大ながらリフトが多過ぎて踊る側も観客も精一杯な状態に陥りそうになる振付にも関わらず
戸惑いから幸福の絶頂まで溢れんばかり感情が音楽振付と美しく溶け合いながら伝わり
リフトされて浮遊する木村さんの全身からは恋に落ちた喜びが振り撒かれているように見えたほど。
千曲川の決壊防止のため感涙には至らず済みましたが胸が熱くならずにはいられず、
今思い出しても心に星々が瞬きそうであります。

さて、移動公演で最も注目が集まっていたのは初台とは違う舞台機構の事情で生じるであろう異なる演出。
まず大きな点としては1幕のパーティーシーンにおける紗幕なし。おかげでダンサー姿も新調した
衣装、舞台装置美術も鮮明に見えて「快適」であるのは言うまでもありません。
紗幕を下ろさなくても場面そのもので現実か夢かは分かるのですから
次回の東京公演でも取り入れていただきたいと切に願います。
プロジェクションマッピングらしき映像演出も省略でしたが、これといって問題なし。

それから1幕の最後、雪の国から旅立つ際の乗り物は気球からソリに変更。
新国立劇場のように吊り下げる装置は完備していないであろうと予想はしており
どうなるか特に気になっていた演出でしたが、雪の国の夢が続いている流れを感じさせとてもロマンティック。
後ろからドロッセルマイヤーが軽く押しつつも魔法で動く仕組み!?で遊園地のアトラクションの如く
滑らかに舞台を走行。客席を見渡すようにしても通過してパレードにも見えました。
何しろオーケストラピットぎりぎりのところをも走るためすぐ目の前をクララと王子が通過。
(安心してください、手は振っておりません)
このときほど何かの拍子でお面が外れて欲しいと願った日はございません。

ソリへの変更に伴い、クララたちを追うネズミたちの振付も全国公演対応版。
東京では飛んでいく気球の下のロープに王様が掴まって一緒に飛んでいき
地上に居残る手下たちに向けてドロッセルマイヤーたちが積み荷を投げ付ける流れでしたが
見栄えはするものの落下が心配である点が気にかかり、また映画『風の谷のナウシカ』終盤で
王蟲の子供が飛行ポットに吊るされた場面を想起させます。(私だけかもしれませんが)
全国公演版ではクララたちを乗せたソリを途中までは王様が数名の手下を連れて追いますが
やがて手下たちはその場に留まり、意気揚々と1人旅立つ王様をお見送り。
ハンカチを持って涙ながらに見送る手下もいて各々工夫している表現も笑いを誘う演出でした。

2幕冒頭ではクララたちにばれぬよう王様は忍び足でソリを追いかけ、(あの風貌で見つからないはずはないのだが)
ときには柱の陰に隠れながら「ネズミ王は見た」なポーズで凝視。奥村さんの楽しさ満載な表現炸裂です。
ビントレーさん振付『アラジン』でプリンセスの入浴をアラジンが覗き見する場面にそっくりで
実は王様はクララに好意を抱くあまりストーカー行為へ走ったのであろうかとも想像が膨らみました。

1幕と終幕に現れるクララの家の外観は舞台面積の都合上階段なし。
しかし家に入っていく人々の姿がよく見え、これはこれで良いでしょう。
貫禄があるためか卒業したてには見えず既に実務経験を積んでいそうなドロッセルマイヤー甥っ子の姿は勿論のこと
小柴さん、小村さん演じる夫婦と2人の子供たちが上流階級の絵になるご一家そのもので
入る前に外でパイプを吸う夫(パイプ愛好者であるイーグリングさん仕込みであるのか実にさまになっていた)
子供たちを先に入るよう促しながら付き添う妻の細かいやりとりもそれはそれは目に焼きつき
パーティーに向かう人々の様々な感情がじわっと伝わる一幕でした。

唯一心残りであるのが客入り。せっかくワークショップも開催したのですから、
より宣伝広報を充実させる手立てはあったて思えてなりません。
長野県出身のダンサーが少ないのかもしれませんが(現在の契約ダンサーの中では玉井るいさんぐらいでしょうか)
サントミューゼ自体は館内の施設も豊富にあり、地域の方々に親しまれていると実感。
学習コーナーや音楽スタジオもあり子供達も頻繁に利用しているようで
新国立劇場でも開場記念公演を始め多数の主役を務められた小嶋直也さんのご出身地、ご実家のバレエ教室も上田市内。
バレエ教室含む地域全体への呼びかけはもっとできたに違いありません。
せっかくの綺麗な劇場が3年前に開場したのですから、親交を絶やさず深め
今後も新国立バレエの長野公演を継続して欲しいと願います。

客入りなど思うところはあったものの、人生初の長野でのバレエ鑑賞が叶ったのはいたく幸運。
公演概要が発表された7月中旬、歓喜のあまり出陣を決意し『真田丸』のテーマを脳裏で再生しつつ
会場のサントミューゼすぐ傍を流れる河川であり信濃の旅情を描いた五木ひろしさんの名曲『千曲川』を歌いながら会場への行き方を調べ胸を躍らせていた公演であります。
またチケット発売日の8月5日には時報を聞きながら発売開始後すぐに座席確保。
非常に思い入れのある記念すべき舞台となりました。

翌週はびわ湖公演へ。くるみ総括も兼ねて書いて参ります。





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行きは池袋駅出発のバスを利用、NHK大河ドラマ『真田丸』テーマ曲を脳内再生しながらいざ出陣!
そして見覚えのある方のお姿を休憩中に発見、びっくりだ。

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長野県入りしたあたり、バスの車窓から。
写真を撮り逃したが、ネギで有名な下仁田は本当にネギ店多し、そして紅葉の山々が艶やか。

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信州で『くるみ割り人形』ならば胡桃蕎麦を必ずいただこうと上田城前の葦笛、
ではなく草笛にて。昼から地酒で乾杯。
香ばしいお蕎麦に甘い胡桃だれが合い、胡桃おはぎもほんのり甘く締めにぴったり。

ちなみに上田駅からお城方面へ人通り控え目な道をてくてく歩いていると、道路の反対側から私を呼ぶ声が。
遠征組の友人で、現地での約束はしていなかったため偶然の出来事に驚いたのでした。
もう一人の友人も合流し、一緒に昼食。

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晴天に恵まれ、上田城にて紅葉狩り。上田駅周辺はどこへ行っても真田幸村が見守っています。
高知でいう坂本龍馬のような存在でしょう。



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サントミューゼ外観、隣にはイーグリングさんもびっくりであろう巨大なもみの木。



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ホワイエ、新国立劇場と同じ設計者が手がけているため雰囲気がよく似ています。
ビュッフェはあったがアルコールはなし。



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帰りは時間を優先して新幹線にしようとは考えていたが予約もせず時間帯も考えず。
しかし東海道と異なり便数が少ないと知り、一番近い時間の便に間に合いそうだったのは良いが
駅に到着すると出発時刻まであと僅か。
出発3分前に切符を、2分前にキオスクにて今日晩酌しないでどうする(笑)精神で意地で晩酌用の信州ビールを購入し
店舗すぐ隣のエスカレーターを早足で上るとちょうど列車が到着、
そして思わぬ幸運も巡って感激安堵。ところが初めて乗車する長野新幹線、
自由席車両の場所が分からずしかし時間もないためとにかく近い車両にひとまず乗車。
列車は定刻通りの安全運行ながら1人珍騒動まっしぐら、慌てん坊な管理人でございました。
やっとこさ席に着き、さあ晩酌だ。



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東京公演のプログラムよりも厚みある装丁で主演お2人のインタビューも面白い。余韻に浸りつつビールが進みます。
1週間後は乗り慣れた東海道新幹線でびわ湖へ。くるみ紀行は続きます。




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